「獲物がかかるのを待つ」3
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「要は、作り出した黄金の出所がロンダリングができればイイわけだ」
昼食後の後片付けを終えると、ダイニングでお茶を飲みながら、大人組でMP消費と資金繰りについての会議を始めていた。
子供組は、子供部屋で、それぞれ読書やクラフトに夢中になっている。
「ロンダリング?」
「あーえーっと、生み出した魔金の出所を曖昧にするって意味で、悪事では、ないから。多分」
単なるこれまで無かった新事業と思って聞いて? リコはそう前置きして、説明を続ける。
「まずは、魔法付与した装飾品を魔金で作り、そうね、初期装備に重宝するような、ちょっとした便利な魔道具[防御力up指輪 防御力+10〜50]とかかな。これをダンジョンのドロップ品だとして、一定数売るの」
「+10で十分です」
リュコスの言葉に、口を尖らせて「じゃぁそれで」とリコはおざなりに答える。
「これは、パハン先輩に協力してもらう事になるけど、大丈夫かな?」
「大量にでなければ通常行為だ。問題ない」
「で、ある程度売っぱらったら、今度は、この指輪を、大量にダンジョンの宝箱に入る様に、吸収もさせて、アリバイ作りもする。それを見つけた冒険者達もやがて、ダブつきが出てくるじゃない? 重ねがけはできないようにしておくから、2個持っても仕方がない。そうなったら冒険者はどうする?」
「売ると思います」
「だよね。そこで、それをなるべくこちらで回収するために」
「他店より、高値で買うのですか?」
パハン先輩の言葉に、リコはニヤリと笑って
「ちっちっち! ポイント制度ってこっちにある?」
「ポイント?」
「指輪10個持ってきてくれたら、ポーションと交換。とか」
で、回収した指輪は、またダンジョンの外でパハン先輩に売ってもらう。と、リコは説明した。
「なる、ほど、ギルドを通さないクエストを、通貨以外の報酬で交換するのですね?」
ヤツノが会議に参加する。
それならばギルドからのクレームもないだろう。
物々交換は、街の市場でも皆普通にやっている行為だ。
「そ。これで外で指輪を売る大義名分ができるでしょ? 指輪をできるだけこちらで回収して、ぼったくり店で回収してるって口コミが広がれば、作ったものをまとめて換金してもドロップ品として認知されるでしょ。これは、宝箱探しの冒険者も増えて、その人達の生存率をあげる仕様だから、とりあえずこれを定着させたいの」
「それは、喜ばしい事ですが、こちらの儲けはどうなるのですか?」
「ンフフ。で、定着し出した頃合いを見て、売り物の方には[防御力up指輪]のドロップ品のほかに、物凄く性能の良い指輪を混ぜるの」
そうだな、重ねがけ有効な[麻痺無効指輪]とかの状態異常無効とか、[防御力×Level][素早さ×Level]とかね。ずっと使えるような、売るより手元に残しておいた方が得だな。って思わせるアイテム。
「そして、そうゆうのには『ブランド名』をつけておくのよ」
「ブランド名?」
「冒険者の中で、一般的に普及している装備品の中で、一際性能がよいアイテムがあったら、みんなそちらを欲しがるでしょう?」
「それは、そうですが」
「商品の価値は需要と供給のバランスで決まるじゃない? そこに『このアイテムならこの商品だな』って思わせる売り方をするのよ。みんながその名前のついた商品が欲しくなるでしょう? そうすると、自然と値段も高くなる。と、思わない?」
で、ブランディングが確立してきた頃、ぼったくり価格で売り出す訳だ。
「名前をつける事で周知認知させるのですね?」
さすがヤツノ。話が早い。リコはうなずきヤツノの頭を撫でながら
「ブランドの名前が広がれば、後は勝手にその名前がついた商品は売れるようになるわ。勿論それなりの付加価値は維持するけど」
「付加価値?」
「性能が良いのは勿論だけど、1番は、この商品を買って良かったな。ってお客さんが思ってくれるのが、恒久的な収入を得るために不可欠なことだと思うのよね」
さらにゆくゆくは名前だけ貸してお金が入ってくるようになる。
「目指せ不労所得。ファイヤー生活」
その為にはまず、資金が必要だ。
「コツコツ貯めても良いんだけど、資金になる大金を手っ取り早くなんとかしたいんだよねぇ」
まぁこれはこの魔金ロンダリングが上手くいけばなんとかなるとリコは笑っていたが、リュコスにはリコの言っていることの意味がいまいちわからなかった。
それでもなんとか話についていく。
「それでは、最初の大金を得るためには何をどうするんですか?」
「釣りだよ。餌をぶら下げて、獲物がかかるのを待つ」
「釣り、ですか?」
「なるべく条件のいい投資先、この場合外で活動してくれる商人だね。それを探して釣り上げ、矢面に立ってくれるように育てる」
まあそれは後だ。
まずは、金を生成して、MPを減らしつつ、良い魔道を作って、ダンジョンに還元しよう。
「ヤツノ協力してくれる?」リコの救援要請に「勿論です」ヤツノはニッコリ笑って答えた。




