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「改めて聞くね」1

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「え〜と、おはようございます。ズンダダンジョンで、冒険者相手に生活雑貨を売っている[雑貨屋ぼったくり]店主のリコです。リコ。と呼んでください。今日の朝ごはんは、かき玉うどん。お腹に優しいおうどんです。みんな食べた事ある? うどん」


 リコは、そう言って、なるべくにこやかに微笑みながら、そっと席についた。


 リコの問いかけに答えは無く、食卓はシーンと静まり返っている。

 イナバはまだベットの中だが、他は勢揃いしているのに、何故か、皆一様に硬直し動かない。

 添えられたスプーンとフォークに誰も手をつけないでいる。

 出汁の香る柔らかいうどんからは、ホカホカと湯気が上がっていた。


 昨日のことは、みんなにとって怒涛のような1日だったし、風呂に入って身体がポカポカに温まっていたし、お腹も空いていたし、リュコスは今と同じく壁と同じだったし、気が動転していたのか、目の前のご馳走を夢中になって食べて、腹一杯になって、いつの間にか寝てしまった。

 その後、リュコスとパハン先輩で、子供達をベットに運んだ。


 と、言うことを、子供達はさっきパハンから聞いた。

 目が覚めて冷静になると、身の上に起こったことが信じられず、今になって動揺しているらしい。


 と、言うことを、リコは先ほどリュコスから聞いた。

 なので、それはわかった。

 それはわかったけど、ナカツとレトとアマルは、なんで一緒になって固まっているの?

 リコは、パハンに目線を送るが、パハンはあからさまに目を逸らした。


「魔女様は、僕達を太らせてから食べるのですか?」


 ヤツノが口を開いた。


「なんで!? 食べないし魔女じゃないよ!?」


 リコがそう叫ぶと、ナカツとレトとアマルが「「「ブフーッ」」」と吹き出して、「「「アハハ」」」と、声を出して笑った。


「すみません。リコ様。朝起きた時、ナカツにそう聞けと言われたのです」


 ヤツノが少しホッとしたようにリコに謝った。


「ナァカァツゥゥ!?」


 リコがナカツを見ると、ナカツは「ヒヒーッ」と声を引き攣らせて笑っていて、ナカツの頭の上でイビルちゃんが、タシ! タシ! と足を踏み鳴らしている。


「朝起きた時、みんながそう言ったんだ。だから俺は自分で聞いてみろって答えたんだよ」


 ナカツはイビルちゃんを手のひらに載せて「ゴメンゴメン」と謝った。


「私は違うって言ったんだけど」

「みんな、あんな事は魔女様じゃないとできないって」


 レトとアマルが言い訳を付け足す。


 リコは、鼻の頭にシワを寄せると「うどんが伸びるのでとりあえず食べます。いただきます!」そう言って手を合わせると、うどんを、ズルルーーっ! とすすり上げた。

 リュコスも「いただきます」と言ってうどんをすする。


 ズルルー

 ズゾゾーーーー


「美味しいです」

「やったぜ。このあと小さく切ったうどんイナバにもって行くから、みんなも食べ終えたら、冷蔵庫のプリン出してあげて。あ、一緒に食べられるかイナバに聞いてみるね」


 2人が、うまいうまい。と言いながら、派手にうどんをすすり、その後の予定を話している。

 いつもの朝ごはんの風景だ。

 ナカツ達も、同じようにうどんを食べ始めた。


「はぁ旨い」

「美味しい!」

「もちもちしてる。マカロニに似てるけど、ちょっと違うね?」

「リコ! それどうやってるの? ずず〜って俺もやりたい! どうやるの? 教えて!」

「麺をすするのはねぇ練習が、匠の技が必要なのよ〜箸が上手に使えるようになったら教えてあげるわ」


 他の子供達も、どんぶりに口をつけ、フォークでうどんを手繰り寄せて口に入れる。


「美味しい」


 途端に皆夢中になってうどんを食べ始めた。

 ハフハフ、ムチャムチャと、咀嚼音が部屋に響く。


「ゆっくりよ! よく噛んで食べて。喉に詰まるよ!!」


 みんな背筋を伸ばしてモグモグと口を動かした。

 リコはそう言って、水を一口飲んで、ふぅと息を吐くと、食べかけのうどんをトレイに乗せて移動する。


 扉は開いていて、ベットの天蓋も開いていた。


「おはようリコ」


 未だ布団の中だが、身を起こして微笑みイナバが挨拶をした。


「おはようイナバ。シロも起きてる?」

「おはようリコ」


 イナバから半身を出して、シロも挨拶を返す。


「カーテン少し開けるね?」


 そう言って、出窓の遮光カーテンを少しだけ開けると、朝の日差しが部屋に入ってきた。


「イナバ、眩しくない? シロは大丈夫そう?」


 リコが聞くと、イナバとシロは「大丈夫ありがとう「平気よ」」と答えた。


「一緒に朝ごはん食べようと思って。食べられそう?」


 リコは、ベット側に角度を変えたサイドテーブルの上に、スプーンで食べられるよう小さく切ってよそったうどんをトレイごと出した。


「良い匂い。お腹すいた」


 イナバの耳がぴこぴこと揺れ、鼻をクンクンさせて笑った。

 リコは、にへら。と、鼻の下を伸ばすと、いそいそと準備して、反対側に自分のうどんも乗せる。


「ゆっくりよく噛んで食べてね?」


 リコが言うと、イナバはうなずいてそっとスプーンを口に運んだ。


「美味しい。優しい味がする」

「朝ごはんにはこれぐらいが良いよね」


 リコはさっきとは打って変わって、静かにちゅるんとうどんを吸い込んだ。

 イナバがニコリと笑顔を向ける。

 リコは、そのあまりの可愛らしさに、ほう。と息を吐いた。


 すっかり食べ終え、食後にプリンがあるのだけど、あっちでみんなんと食べる? と、提案してみる。

 イナバがうなずいたので、食器を【収納】して、立てるか聞くと、「もう普通に過ごせる。いつもより調子がずっといい」と言うので、「さすが回復薬様様」とほっとして一緒に洗面台に向かい、もう一度設備の使い方を教えて、簡単に身支度を済ませて、一緒にキッチンに戻ると、みんなプリンに手をつけず、待っていてくれたみたいでイビルちゃんが、クルクルとテーブルの上を回っている。

 リコは、イビルちゃんを手にとめ「伝えてくれたんだね? ありがとうぅ」と頬擦りすると、【収納】から、自分の分とイナバの分のプリンの皿を出す。


「いただきます」


 と手をあわせ、プリンにスプーンを入れる。

 トゥルン! とひと匙すくって口に入れる。


「んん〜濃厚! 大成功!! 売り物になるぐらい上手く作れた。みてこれ、全く“す”が入ってないし、まるで工場生産品だわ? 魔法マジで便利」

「卵が、このような甘い料理になるなんて素晴らしいです。これは、これは、アップルパイとアイスクリームに匹敵する美味しさです。王族でも食べたことがないのでは? この、黒いソースも甘いだけではなくて素晴らしい美味しさです」


 普段、壁のリュコスがプリンを絶賛しだした。これはかなりの気に入りようだ。


 カラメルの甘い香りに、皆たまらん! とばかりにプリンを口に放り込む。


「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」


 みんなのリアクションを見て、「そうだろうそうだろう」と渾身のドヤ顔をを決めるリコに、リュコスは満足げに口の端を上げる。


「ゆっくり! 少しずつ! よく噛んで!」


 皆が何か言い出す前に、リコが先制する。


「だってこれ、口の中に入れるととろんとなくなるんだ」

「どうやって噛むの?」


 ナカツとレトが抗議する。


「それでもモグモグしてくださ〜い」


 リコは、異論は認めぬ。と、抗議を跳ね返す。


「それで今日のことなんだけど」


 みんながプリンの夢中ななか、リコは一応の今日の予定を提案する。


「やっぱり昨日の今日だし、今日はマルマルお休みってことにしてお家にいようか? アマルはもう少し家の中でできることしない? マッサージとか座ったまま足動かす練習とかさ」


 アマルは「全然大丈夫」と答える。


「パハン先輩はなにか提案ある?」

「いや、俺は、期間中はリコ達の指示に従う」

「あ、そう言うかんじ? 〈結界〉の外に出るんじゃなければ、パハン先輩にも自由にしてもらって構わないんだけど、まあ、私達が店に行く時とか、子供達見てて欲しいけど1人になったら大変だよね? ちょっと準備させて? 色々作ってみるから。今日はとりあえずヤツノの目を治して、イナバどうする? 寝てるの退屈じゃない? みんなと一緒に遊ぶ?」


「え?」


 ヤツノが顔を上げた。


「あ、ごめん勝手に、ヤツノ、プリン食べたらちょっといい?」

「あ、はい」


 イナバが、リコの服をツンツンと引っ張っている。


「私も、みんなと同じ部屋に、戻ってイイデスカ?」


 ヒソリ、とそうゆうイナバに、リコは身悶えしてとうとう


「もちろん良いです。そしてお願いがあります。耳を、耳を撫でても良いですか!?」


 とお願いした。

 リュコスが眉間にシワを寄せる。


「リコはなぜかみんなの耳を触りたいのよ。痛くないから、嫌じゃなければ触らせてあげて? すごく喜ぶわ?」


 とレトがいった。


「やだ! レト! そんな言い方!! パハン先輩っ私そんなんじゃないから。ちょっとふわふわしてるな? って。どんな触りごごちなのかな? って。触ったらどんなふうに動くのかな? って思ってるだけだから! 別にそんな、変な意味なんかないから!」

「わ、わかっている。子供の、子供に対する親の、愛情表現のような? 父親が酔っ払って小さな子供を無理やりなでさする時の感情に似た?」


 パハンが首を捻りながらリコをフォローしようとするが、そういえばここにいる子供達には親がいなかった。と、説明に苦慮しているようだ。


「リコ、良いわ、大丈夫よ。もっと早く言ってくれればよかったのに」


 気づくと頭上ばかり見ているので、自分の気付かぬうちにシロが頭から漏れ出ているのか? と心配になった。と言ってイナバは耳をリコに差し出した。

 リコは両手を差し出し、ふわっ とイナバの耳を撫でる。


「ふわふわっツルツルっ」

「フフ、リコくすぐったい」


 リコは両手で自分の顔をおおって「ありがとうございます!! ありがとうございます!!」と連呼した。


「やっぱりちょっとおかしいと思う」


 レトが、リュコスのように眉間にシワを寄せた。

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