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「これはマカロニ」1

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 朝、リュコスが目覚めると、リコはすでに起きていて、いつものように夢中で作業台で何かを作っている。

 身支度もせず、パジャマのまま起きがけに作業に入ったようで、寝癖のついたままの頭に、リュコスは、フ、と笑って、自分の身支度を整える。

 皆はまだ寝ているようで、各部屋に気配はあるが昨日は色々ありすぎた。

 流石に疲れているのだろう。と【気配遮断】で物音を立てず、用意を済ます。

 部屋から、パジャマ姿のニコニコ顔のリコが出てきて、手招きされて一緒に外に出る。


 リコは、家の脇に小さな小屋を建てると、扉を開け、その小屋の中央に派手なピンク色の異質なドアを設えた。

 リュコスが「これは?」と聞くと「開けてみて」と言うのでドアを開ける。

 向こう側の壁が見えるだけだ。


 そうして2人で部屋に戻ると、奥の部屋にある魔法陣を使って19階の[雑貨屋ぼったくり]に戻る。

 いつものように魔石に魔力を補充して、ゴーレムとミミック達にハグをした後、処置室に連れ立って中に入り、奥の壁に先ほどと同じピンクのドアを設え、リコの「開けてみて」と言う言葉のままにリュコスがドアを開けると、当然そのまま壁が現れた。


「?」


 リュコスが、一連のリコの行動に怪訝を向けると、リコは鍵束を取り出す。

 その内の一つをドアの鍵穴に差し込むと、ガチャリと、大きな音が鳴った。


 リコは、ニヤリとリュコスをみて、そのままドアを開けると、あるはずの向こうの壁は消え、見覚えがある別の扉が現れた。

 リュコスは、促されるままにその扉をくぐり抜ける。


「これ、は、!?」


 隣には、未だナカツ達が眠っているであろう家がある。

 つい今朝、今し方作って見せられた小屋の中から出たのがわかった。


「♪ど〜こ〜でも〜、、、いや、ナシナシ。[ドアtoドア]〜!」


 リコが、聞き覚えがある独特の言い回しで魔道具の紹介をする。

 リュコスは全てを察して眉間を押さえた。


「大成功! どう!? これ!?」

「どうもこうも」


 リュコスは項垂れ、しかし仕方がないな、と言うような顔で「リコ様は凄い。本当に凄い。もう、隣にいるのが恐ろしくなるほど優秀です。このような魔道具は見たことがありません」ため息混じりにそう言った。


「元いた国では超有名な魔道具です」


 リコはフンス! と鼻息を荒げて胸をはる。


「リコ様の国にはこのような道具があるのですね。なるほど、科学というのはすざましいですね」

「あ、ちょっと違う。科学だけど空想上の、スコシ・フシギの方の科学で、ゴリゴリの魔法です」

 リコの答えに、リュコスは眉を顰める。


「リコ様の国には魔法は無いと言っていましたが?」

「魔法は無いけど、こうゆう魔道具がたくさん出てくる本があるの」


 そう説明するが、深く考えなくて良いと、リコは言った。


「[街灯]と同じで、これなら魔道具だから、良いんじゃ無いかと思って。魔道具ならこっちの人も、そうゆうもんかと思って深く追及しないでしょ?」


 原理は移動の魔法陣を応用した。後は[ガマ口]と同じで、【収納】の亜空間使い、新たな入り口と出口で繋げる魔法陣をドアのこっち側とあっち側に描いただけなのだ。と、リコは説明した。


「ドアを設置した場所にしか行けないけど、行き先はこの[鍵]で決めるの。[鍵]と[鍵穴]に場所を示す座標をつなげる魔法陣が【付与】してあって、鍵がなければ、見た目はただのドアだから、他の人にはドアとしてしか認識できないだろうし、移転魔法陣使ってるのバレたらマズイ問題はこれで解決。いやァ凄いね! 魔法超便利!」

「凄いのはリコ様です」


 リュコスは呆れたようにそう言った。


「で、どうするのです?」

「子供達を金で買う」


 リコは、口に手を当てて ンフっ と笑うと、胸を張ってそう答えた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 匂いに釣られて皆が起き出すまで、4つのフライパンを駆使して、リュコスと並んで大量のホットケーキを焼き、感動の中はちみつ滴る朝食を済ますと、子供達をジャージに着替えさせて、みんなで浜辺に移動する。

 子供の大きさに合わせて、アスレチックのような遊具を瞬く間に作り出すと、その一角にアマルの歩行練習用の柵を設え、リハビリ施設を整える。


 パハンは、ここでも開いた口が塞がらない。

 でもこんな事は、エルフのヒナ様がもっと凄い事をやっていた事なので、リュコスも何も言わなかった。

 イビルちゃんと子供達が、キャイキャイと遊具で遊んでいる間に、大人組は昨晩途中だった「回収屋にならない5人の子供達」の詳細を聞く。

 パハンが、気を取り直して話し始める。


「引き取ったギルド長の話では、5人全員が、子供のうちに神殿に持ち込まれ、借金奴隷制約を既に結ばされて数年経っている」


『ミャギ王国初代王 ロウエス・キングス・トールキン王』のおかげで、それまで雑多に使役されていた奴隷の制度が規制される事になった。それでもやっと建前上、奴隷として使役できるのは15才からなので、通常子供の奴隷は、生活の面倒を見る代わりに、訓練や見習いを名目に仕事を手伝だわされる。

 あくまで就労方法としての『奴隷』と言う事になっている。言い換えれば強制的な『終身雇用』の形にすぎず、辞める自由がない以外は、回収屋ギルドや商人ギルドなど、他のギルドや様々な職場で働く子供と同じだ。

 しかし、獣人は神職につけない。

 そのため、神殿で獣人の孤児を育てることはできないが、見捨てたくなければ、成人するまで獣人居住区で育てれば? と、ズンダの街では獣人の溜まり場になっている回収屋ギルドに連れて来られる慣習になっている。


 パハンの説明にリコが苦い顔をしなが質問する。


「借金奴隷ね。いくらぐらい借金があるの?」

「・・・皆、金貨1枚だ。それぞれの契約からの年数分の利子が加算されている」

「揃って金貨1枚? 子供なのに? 収入も無いのに利子までつくなんておかしいじゃん」

「親や親戚に、、、売られたのだ。成人したら、それぞれの借金を立て替えた神殿から、奴隷商(仮主人)預かりになり、主人を割り振られ、それぞれの仕事に就く」


 リコの鼻の頭にシワがよる。


「それって、この国は子供の人身売買が認められてるの!?」

「いや、人身売買は禁じられている。盗賊と同じく、衛兵や官憲の討伐対象だ。ロウエス王が禁じられて以来、ただ、あくまで雇用の一環として奴隷制度は認められていて、親としても、育てられない子供を、森や、街の南地区にただ捨てるよりは、という苦肉の、、、いや、、、俺も、俺もおかしいと思う。その金は、銀貨1枚だって子供達が手にすることはないのだ。おかしいと、思う」


 そう言ってパハンは唇を噛み締めた。


「利子って決まった金額?」

「え?」

「借金奴隷契約をさせられた子供達の利子っていくらかわかる?」

「契約内容にもよりますが、成人するまで他者が育てる場合の子供の利子は、借金が1年で1.2倍ほど増えると、ギルド長からききました」


 リコは鼻の頭にシワを寄せながら、スマホで何やら操作して毒づく。


「子供のうちに借金を負わせてしまえば、使役が始まった時にはもう返せない金額になってるって事か。なるほど、金貨一枚で死ぬまで奴隷の出来上がりってわけね。上手くできてんな」


 契約者の内訳は


 借金奴隷

 ピオニ 獅子人(希少種) 男子 6歳 使役奴隷 1年

 テト  猫人  男子 10歳 使役奴隷 1年

 サラ  蜥蜴人(希少種) 女子 11歳 素材奴隷 2年

 ヤツノ 蛇人(希少種)  男子 14歳 素材奴隷 2年

 イナバ 兎人  女子 14歳 愛玩奴隷 10年


 皆、15歳になったら、それぞれの主人の元に行くことになっていて、主人は、その時に知らされる。

 奴隷契約は15歳からなので、主人もその時に契約する。と言う建前なのだろう。


「愛玩奴隷契約ってキモ。あっぶね後1年じゃん。素材奴隷ってなあに?」


 リコの問いに、パハンは気まずそうに答えた。


「奴隷の間、身体の一部を、素材として提供し続けます」


 ぐらり


 マナが揺れる。


 ヤツノは、蛇人で、獣人には珍しい鱗を残した希少種だったため、親に売られたのだろう。

 蛇の鱗が装飾品として貴族に人気があり、定期的に剥がれる事になる。


 サラは【再生】のスキルがある蜥蜴人で、強いスキルを顕現させたことが元で売られたのだろう。

 こちらも定期的に体の一部を提供する契約をさせられている。


 パハンが、アワワと目線をそらせて説明を続けると、フツフツと体を包む空気が沸き立つように身の毛がよだち、ガガガガガガッと、空間が鳴ると、ミミック達が、地面から続々と集まりいでて「ギチギチ」「ギチギチ」「ギチギチ」と威嚇音を鳴らし、リコを背にして囲みだした。

 ミミックに背負われた子供達が、大人組に合流する。


「リコ様、落ち着いてください」


 リュコスの声に我に返ったリコが叫ぶ。


「頭がおかしいんじゃないの!?」


 フー! と、怒りも露わに息を吐いて、リコは、手元に残っていた大金貨を全てパハンに渡す。


「今すぐその子達の契約解約してきて」

「あ? え?」


 パハンは、手の上にある大金貨とリコの顔をなん度も見返す。


「借金奴隷は金さえ払えば解約でしょ? 主人も居ないんだし? 神殿に金払えば人身売買にならないんでしょ? あくまで借金の返済なのだから? 文句のつけようも無いでしょうよ。っハっ! ザマァ! 吹っ掛けられた時のためにも多めに持っていって。いくらでもいいからその子達の借金一括で耳揃えて叩き返して、奴隷契約解約して連れてきて。今すぐ! ナウ! A.S.A.P!」


 そう言って、ミミックの魔法陣を展開すると、ダンジョン要塞石材にガラスをはった、手のひらサイズのただの板に見える[モバイルゴーレム Modイビル]を渡たして言った。

 


「いい? 良く聞いて」


 リコは、リュコスと同じフード付きのポンチョを出すと、[認識阻害]を付与しつつパハンに無理やり被せ着せ、[状態異常無効]を新たに眼鏡に付与しながら、手順を確認する。


 ギルドの人達と相談して、神殿には必ず偉い人と一緒に行く事。

 ギルド長が1番良さそうだけど、そこはわかんないから適任が他にいるなら任せる。


 わたした大金貨のうち1枚を金貨100に両替してから行くと良い。

 ざっと計算したら金貨30枚あれば足りるはずだけど、吹っ掛けられたらいくらでも良いから払って。

 いい? 渡した大金貨は全部使い切っても良いから、神殿との契約は一切真っ新にしてきてね。

 神前できちんと領収書? 証明書? を必ずもらうの忘れないで。


 引き取りが完了したら、その足でその子達の冒険者タグ速攻で作って。

 タグにかかるお金はそこから出して良いんだからね。


 子供用の同性能ポンチョを5枚出し手渡すと[認識阻害]を付与しつつ[マジックバッグ]に入れるように促す。


 その全てが終わって、その子達を連れて来れるようになったら連絡して。

 それについてる[鈴]を指で3回ノックしたらこっちと連絡が取れるから。


 リコが、[モバイルゴーレム Modイビル]にぶら下がっている[鈴]を手のひらに乗せ、親指でコンコンコンと、3回ノックすると、[モバイルゴーレム Modイビル]の目がギョロリと開く。

 同時に、リコの頭上にいたイビルちゃんが「イー!」と鳴いて、頭のモシャモシャした毛で丸いリングを作ると、[モバイルゴーレム Modイビル]の眼球が見ている映像を、そのリングに中に映し出す。


 リコは少し離れて言った。


『そしたら、レトの時と同じように、1階に即迎えに行くから全員まとめて速攻でココに来よう』


 小さな魔眼がちょろりと瞬きする[モバイルゴーレム Modイビル]に、リコの顔が映し出され、リコの声が響く。

 リュコスとパハンが口を開けて驚いた。


「神殿の奴らは、マジでろくでもないから、対策を練られる前に成功させてしまおう」


 リコは、パハンに「ギルド長の説得頑張って!」と背中を叩くと、美味しいご飯たくさん作って待ってるからね。と、移転魔法陣をはめ込んだミミックに口を開いてもらい、[出口魔法陣]へ送り出した。

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