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「私、欲しいものができた」1

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 何とか誤解を解いて、一緒に湯船に浸かる。


「だはぁぁぁぁぁ〜って言って。息を吐き出すの。プハァ〜〜って。それが湯船に浸かった時の正しい作法」


 リコは子供達に入浴の所作を教える。


「「だはぁぁぁぁ〜」」


 アマルとレトは正しくそれに倣う。


 女湯は3人の貸切だ。今日は女性の冒険者が来なかったらしい。

 もっと女性にも利用してもらいたいなぁ。

 リュコス曰く、真っ当な仕事につけない街の大人の女性の食い扶持は、娼婦になるか冒険者になるかの2択しか無いらしい。

 つまり、冒険者は娼婦と同じ仕事なわけだ。



「こんな大きなお風呂に入るのは初めてです」


 レトが言い、アマルが激しく頷く。


「ンフフ、大きいお風呂って良いよね〜」


 リコは「触るよ」とアマルの小さな足に触れながら「どう? わかる?」アマルの足をゆっくりと揉みほぐす。


「不思議な感じがする。でも、わかる。不思議」

「レト、アマルが早く歩けるように、さっき言った“マッサージ”ってのを覚えて欲しいんだけどお願いできる?」

「やります。覚える。私も早くアマルと一緒に歩きたい!」

「レトありがとう!」


 アマルとレトが、嬉しそうに笑い合う。


「2人ともカワイイなぁ〜」


 バシャっと水音をたてて2人を抱きしめる。

 リコはアマルを膝にのせ、左手にレトがよりかかり、両手に華状態。いつにも増してご満悦でお湯を堪能した。



 風呂から上がり、2人の体を拭いてバスローブを着せると、ふと気づく。


「あれ、レトは、尻尾が無いのに回収屋になるの?」


 マジマジと見たわけじゃないけど、どうも尻尾がないようだ。狼種なら、どこから見ても立派な尻尾があるはずだろう?

 リコが聞くと、レトはうつむいて手をぎゅっと握りしめた。


「パハン先輩にも、無理して回収屋になる事ないって言われた。でも私は、回収屋のみんなに拾われて育てて貰ったから、回収屋として働きたい。ってお願いした」

「そっか」


 アマルが続ける。


「神殿はなぜか狼種の子供が捨てられていると、わざわざ拐って尻尾を切ってまた捨てるの」

「はぁ? 何それ、何でそんなことするの?」

「わかんない。狼は穢れているからって言われてる。殺されないだけましだろうって」


 そうポツリと答えてくれたレトが目を伏せる。


「え、まって、なんで? わかんない。全然理解できない」


 リコは、何かと色々理由を考えようとするが、合理的な理由が全く思いつかない。


「ゴミ地区で隠れて生きていたのに、6才の時に下町に出たら捕まって、何の説明もなく切られた。凄く怖くて、痛かったっ」


 レトの告白に、フロア中のマナがギン! と音をたてて揺れた。


「リコ様!!!」


 リュコスが慌てて脱衣所に入ってきた。


「「キャー!」」


 バスローブ姿の子供2人が叫ぶ。


「わぁ少女漫画みたい」


 リコはその様子を見て、何とか凹んだ気持ちを持てなおす。可愛いなぁ。


 リュコスを笑って追い出し、2人にジェラピケを着せ「今日は泊まって」と言う。

 休憩所で、ナカツと合流して、いちご牛乳を渡し「冷たい飲み物を急いで飲むとお腹が痛くなるかもしれないからゆっくり飲みなね?」とキッズ達に注意して、パハン先輩にも「話があるから」とコーヒー牛乳を渡し、頭をくしゃくしゃと撫で、リュコスにパシッと手を掴まれる。


「ちょっと子供達をみてて? 準備ができたら呼ぶから」


 そう言って、リコたちはセーフルームに戻って行った。


 パハンは、子供達の隣に座ると「ぷはぁぁぁ」と大きく息を吐いた。



 今日の夕飯を買っていた冒険者達に挨拶をして、休憩所に行った隙を見て、リュコスに〈威嚇〉を発動してもらい、お店の斜向かいの壁をくり抜き、19階のセーフルーム同様、宿泊できる部屋を作る事にした。

 天蓋付きのダブルサイズベットを壁際に5つ、等間隔に並べ、ベット下に引き出し式の収納箱をつける。

 出入り口には、人型ゴーレムではなく、魔眼付きの重い扉を設る。

 結界の魔道具を作動させて、女性や子供が安心して熟睡できるよう、落ち着いた可愛らしい壁紙と調度品で設えた処置室を作る。

 まぁ、子供は回収屋ぐらいしか利用しないのだろうけど。


 銭湯ができてからと言うもの、夜明かしする際の冒険者達は、すのこベットのある休憩所の方を利用する者が多くなった。

 店に用事のある者や、飲食の時ぐらいしかセーフルームにはいつかなくなっていた。

 気を遣わせているのか?とも考えたが、じっと受付ゴーレムに見られているのが落ち着かないだけなのかもしれないと思うと、少々申し訳ない。

 いっそ、通路にカプセルホテルみたいなのを作ろうか?


 あれこれ考えながら、部屋を作っていくが、まぁ、セーフルームと同等のセキュリティだし、すのこベットがある休憩所の方が居心地良いか。と、子供達を待たせている。深く考え込むのはやめた。



「さぁ良いよ。みんなおいで」


 普段セーフルームを雑多に使っておいて、ベットがあると男女一緒はダメなんて言わないよね? 色々急拵えでパハン先輩にはツッコミどころ満載かも知れないけど、そこはスルーしてもらえると良いなぁ。と、真新しい部屋に招き入れる。


 子供達は、各々ベットに「わぁ!」と飛び込んだが、案の定、パハンは「あわあわ」と口をパクパクさせてリコをみる。


「魔女様が、いま、作ったのですか!?」


 さすが。

 成人も2年も過ぎると、そう簡単に誤魔化されてはくれないし、かといって、大人のようにスルーしてもくれないらしい。


「えーと・・・」


 リュコスをみる。リュコスは眉をひそめて首を振った。


「前からあった。そう。私はみつけて色々設えただけ」


 ついでに扉をつけただけ。この扉はゴーレム。みんなを認識します。と説明する。


「どう?」


 リュコスをみる。リュコスはいつものように能面だ。仕方がない。


「・・・これも、内緒にしてくれる?」


 リコのお願いするような視線に、パハンは、ベットで喜ぶアマル達を見て、リュコスに視線を移す。

 リュコスは〈威圧〉を出してパハンを見返した。


「わかり、ました」


 パハンは、色々飲み込んで、息を吐いた。

 


「夕飯の準備してくるね。あそうそう、私の事はリコって呼んで? こっちはリュコス。それ以外で呼んでも返事しないからね?」

「え、あ?」

「リコって呼んで?」

「あ、はい。わかりました。リコ。リュコス」

「良いね!」


 リュコスに「扉の開け閉めと、水場の使い方を教えて」とお願いしてリコは部屋を出て行った。

 リュコスは、腕時計をチラリと見て、そっとアマルを抱きあげると「こちらがトイレです」と皆を誘導した。

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