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「私を食べるの!?」1

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「改めましてこんにちは。雑貨屋ぼったくり店主のリコと、その護衛のリュコスです」


 セーフルームに戻ってきた目の前の2人は、そう自己紹介すると、喉をクルルと鳴らしたナカツがリコにすり寄る。

 リコは、ナカツの耳をモフモフと撫でさすった。


 災害級怪物兵器に古の魔女


 パハンは ゴクリッ と生唾を飲んだ。


「まずは取り急ぎこれを」


 パハンは、そう言うと1枚の書類を差し出す。

 冒険者ギルドの納品書で、簡単に「48人分の冒険者タグ回収 大銀貨48枚」と明記されていた。


「もし、これ、に、ご納得いただけるのなら、約束、通り、次回この金額の2倍の金を持ってくる」

「まさか、たったこれだけのはず」リュコスが何か言いかけたが、パハンはそれに被せるように説明を続けた。


「貴族、からの、回収依頼が、一切、一切無かった。ので、通常の回収代金しか、ギルドは、出さない。と」

「アマルのはあったの?」

「え?」

「妹さんのタグはあった?」


 文句を言われるだろうと覚悟していたパハンは、金額について咎められるよりも先に、妹の事を心配されたことに驚いた。


「いや、アマルのタグは無かった。アマルはとっくににダンジョンを出ていて、ギルドに戻って普通に、いつも通りの生活をしていた」

「元気なの?」

「え、あ、元気、だ」

「あぁ〜なんだ〜良かったじゃんナカツぅ〜」


 リコは、ナカツの耳をグリグリと撫で、ナカツがゴロゴロと喉を鳴らしている。

(さっき注意された事をもう忘れているのかこの魔女は?)

 パハンはその様子をじっと見ていた。


「2倍じゃ無くていいよ。正規の値段で良い。その代わり、色々教えて欲しいんだけど時間大丈夫ですか?」

「え、そんな、だってそれじゃぁ約束が」

「私達のこと、ちゃんと黙っていてくれたのでしょう?」


 リコは、先ほど『大喰らい』達が特査員の告白をしてくれた時、タグを回収した本人が目の前にいる事に、全く気付いていない様子に、回収屋の誠実さを見た。


「ナカツだって、叩かれなかったでしょ?」


 ちゃんと叱られた? リコが聞くと、ナカツはゴロゴロと喉を鳴らしながらウンウンと頷く。

 朝が早かったせいか眠そうだ。寝てしまえ。とリコはナカツを撫でさする。


「約束を守ってくれて、ありがとうございます」


 リコはペコリと頭を下げ「これはここにサインすれば良いの?」そしてそれ以上、何も追求することもなく、リュコスに話しかけている。


「タグの回収に辺り、所有者死亡に関して、回収者との不審な点はなにもなく、支払いになんの問題もない。そうです。ただ、今回の事は箝口令がしかれ、本来ならこの後ご遺族にタグを渡した際発生する、お礼や謝礼は期待できない。と、思ってください」


 すみません。パハンは、顔を伏せ、言葉に詰まりながらそう告げた。


「箝口令は貴族からの回収依頼が無い事に由縁しているのですか?」


 リコの質問に、パハンは「いや」と口篭った。


「ウインスター伯爵家の領主か領主代行が同行していたはずだが捜索依頼も出ていないのか?」


 続けられたリュコスの問いに、パハンは悔しげに答えた。


「貴族どころか、神殿からも、タグから死亡が確認された48名の関係者の誰からも、誰1人として捜索依頼が出ていなかった。街頭パレードまでしてあんな大々的に送り出したのに、外では、討伐隊は遺体も残らず全滅。と、それだけ広報されて、まるで何も無かった事みたいな取り扱いになっています。なぜ、なぜ皆平気なのか、誰も何も言わないのか、俺にはわからないのです」


 それを聞いたリュコスは、パハンの様子など気にする風もなく、一瞬あからさまにほっとした顔をして、すぐ興味を失ったように、いつもの能面に戻る。

 リコはそれを見て、少し眉を下げると、膝の上で眠るナカツの耳を撫でるついでに塞ぎつつ小さく聞いた。


「亡くなった方がどうゆう亡くなり方をしたのかわかりますか?」

「全員オークに、首をくびり切られて。と記録してあった。そうで、す」


 リコに合わせて、少しトーンを落とした声でパハンが答える。


「オークは、人間を殺す時必ずそうゆう殺し方をするの?」


 リコはリュコスをみる。


「それはさまざまです。オークは怪力だが武器も使う。あるいは腹を刺されて、手足を切られて、と言うこともありますし」

「遺体が残らないように、オークがわざわざ首を落とす。なんて事はある事? 無い事?」


 リコの質問の意味を理解したパハンは「無い事とは、言い難いが、あの数全て残らず。と言うのは聞いたことがないです」と率直に答えた。


「たまたまかなぁ、ご遺体、全く無かったんだよ? 後から戻ってきて、いちいち全部首切ったとしてもさぁ、目的も無くわざわざそんなことするかなぁ。知能が高いオークがいた可能性とか無い?」

「わかりません」


 リュコスのそっけない答えに「ねぇどう思う?」リコはパハンに話しかける。


「戦利品を持ち帰り、保有を確実にするために、より確実に証拠の隠滅を計ったと言う事でしょうか?」

「オークって普通そんな事するの?」

「よくあることではありませんが、そうする群れがいても不思議ではありません。知能が高いオークは脅威ですが、オークの目的はもとより人の食用ではありませんし、欲しいものがあったらそれなりのことはすると思います。何より冒険者タグからも不備は無かったそうです」


 パハンは聞かれたことを言われたまま素直に答えた。


「そっかぁじゃぁまぁそうゆう事もあるのかなぁ」


 リコはグムムと考え込んだ。


「チェーンが、全て、切れていたのは、その、よほど痛ましい攻撃を受けたのだろう。と、ギルドの職員が、恐れているほどでした」


 何が納得いかないのか、パハンには分からなかったが、ギルドの職員が話していた事を捕捉して伝える。


「ん? 拾ったタグにチェーンが無いのってやっぱり不自然?」

「? いいえ? 遺体が、残らないと言うことは、そうゆう攻撃を受けた。と言う事で珍しいと言う事もありません。むしろ、1度に、こんなにまとめて回収されるなんて、余程の幸運ですので」


 そりゃ今回に至っては1度に亡くなった数が数だろうし。とリコは考えた。


「もしかして、冒険者タグ自体、あまり回収されない物なのですか?」


 これから先も、街の人たちと違い、ダンジョン専門で素材採取をしてる私達なら、見つけることがあるだろう。


「実は、さっきの人達との同行中にも5人分のタグを見つけたのです。面倒ごとに巻き込まれるようなら、次からは無視したほうが無難だと思う?」

「いえ、いいえ。それは、そうです。多くの冒険者はタグを進んで探す事は・・・今回の様に依頼がない場合、命をかけるほどの金にもなりませんし、何かのついでに偶然見つかる場合が多いのが現実です」


 そう言ってパハンは先ほどの書類に手を添え考える。

 なるほど、厄介ごとに関わり合いになりたくなくて問いているのか。とパハンは理解した。


「でも、できるだけ亡くなった方の遺品は、家族に届けたいので、今後も回収屋に、、、俺に渡していただけたら、お二人の秘密は守ります」


 そう言って、パハンは下唇を噛みながら頭を下げる。

 リコは、その正義感ではさぞかし生き辛いだろうと、不憫になった。


「パハン先輩だってまだ子供なのに。偉いなぁ」


 リコは、そんなパハンの頭をフワリと撫でた。

 バシっとリュコスに手を掴まれ、ガバッと上げたパハンの顔は赤面している。


「ぼん、、、パハン先輩は成人しています」


 リュコスが眉をひそめてリコに言う。


「え、そうなの? いくつ?」

「じゅ、17です」


 口元にぎゅうっと握った手を押しつけて答える。

 リコは、中学生かと思った。という言葉を飲み込んで代わりに言う。


「パハン先輩2個下じゃん。良くない?」

「ダメです」

「・・・そっか、触っちゃって、ごめんね」

「いえ、その、すみません」


 目を、ウルウルさせて、顔を真っ赤にして照れている。


「ウソでしょ、壮絶に可愛いんだけど」


 リュコスはさらに眉をひそめてリコをみる。



「ねえリコ、次来る時はアマルも連れてきて良い?」


 ナカツが、空気も読まずゴロゴロと膝の上で甘えながらリコを見る。

 あら? 起きてた? この子、こんなに甘えただったかしら? リコはそう思いながらも「今からでも良いよ? どうせ見ての通りお客さん誰もいないし、どうする? アマル連れて遊びに来る?」と提案する。


「いいの!?」

「私は良いよ? パハン先輩は?」

「は!? え!?」

「妹連れておいでよ。私もアマルに会いたい。パハン先輩の妹なら絶対可愛いでしょ。今日忙しい?」

「いや、廃坑フィールドに行く依頼が、無くなったので、しばらくは、予定が開きましたが」

「じゃぁ良いじゃん。連れておいで。待ってる」

「あ、はぁ」

「ナカツは待ってる? 一緒に呼びに行く?」

「待ってる」

「そっか。良いよ。別れてから何してたか教えて?」


 そう言って、ナカツとリコは店の方に歩きだしてしまった。


 ポツリ取り残されるパハン先輩とリュコス。


 ペコリ。


 リュコスも頭を下げて、食器を片付けて店に戻っていった。


「????」


 パハンは、首を捻りながらも、とりあえず1人で移転魔法陣に向かった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 イビルちゃんやゴーレム達とミミック達を紹介したり、こんなふうにお店やってるんだよ〜と、お店のカウンターを挟んで、ナカツとあれこれを話していると、しばらくして、パハンがアマルを連れて現れた。


「ふわぁぁぁ予想通りの可愛さ〜さすがパハン先輩の妹! かぁんわいぃぃぃ!!」


 黒い巻き毛がサラフワと揺れ、大きく見開かれた黒目の多い瞳は、庇護欲を十分に満たすに至る潤いと光を放っていた。

 皮膚の薄そうな真っ白い肌はピンクがかっていて、リコは拝むように手を組んでビリリと震えてみせた。


「いろんな服を着せたい!!!」


 リュコスはそれを眉をひそめて見ている。


「ナカツを助けてくれてありがとう」


 黒いフワフワは、パハンに抱かれたまま ペコリ と頭を下げた。


「ほわぁぁこんにちはぁ。私は雑貨屋ぼったくり店主のリコです。こっちは護衛のリュコスとゴーレムのイビルちゃん。みんなナカツの友達です。よろしくお願いしまあれ? なんか、あれ? 小さすぎない? いくつ?」

「?? 初めまして回収屋見習いのアマルです。7才です」

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