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「5人で1つのベットは無理よ!」1

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「リコ、隠していてもしょうがないから正直にいうね」


 フエがカウンターの前で神妙な面持ちで告白する。

 後ろには『乙女』達が並んでいる。


「私達、、、[フルポーション]を買いに来たの」


 なぜそんな緊張しているのかわからないけど、リコは席を立って[完全治療薬]を棚から下ろすと「大金貨10枚で〜す」とカウンターに置き「おいくつ必要ですか?」と聞いた。


「「「え!?」」」


 ポーション瓶を見つめていた皆が一斉に顔を上げる。


「いくつ、あるんですか?」


 ハヤシが聞く。


「? 今すぐご用意できるのは、そうですね」


 リコは席を立って下の棚をあけ、箱の数を数える。


「5ダースくらいですかね」


 瓶詰めの作業があるけど、10ℓ分の原液が3樽あるからまぁ、その数十倍はあるけど。


「やっぱり。リコは特定のドロップ場所を見つけたのね?」


 マツリがゴクリと息をのんで質問する。

 ダンジョンの宝箱やドロップ品にはある一定の法則があるという説、全くのランダムだ説と二分する以前からの冒険者達の噂である。

 実際、内容物や場所は、ミミックの趣味嗜好が反映されるので当たらずとも遠からずなのだが。


「あー、、、えぇ、まぁ入手方法は企業秘密って事で」


 ポーションもドロップ品って事にしてしまった方が諸々納得されやすいかもと言葉を濁す。


「ミミックをテイムするなんて盲点だったわ。ミミックならきっと宝箱にも詳しいはずだもの。さすが研究者は目の付け所が違う」


 フエとヒナが何やら話して納得するなか、ハヤシが意を決したように話し出す。


「それで、こんなこと言うのは本当に心苦しいのだけど、そのフルポーション、数があるならを試させて欲しいの。もちろんお金は払うわ。ギルドからの依頼なのだけど、多分元はもっと上からの依頼なのよ。ギルドに属さない小売の商店での商品ともなると、さすがにそのままっ持って行くこともできないから。その、リコを疑っているわけではないんだけど」


 しどろもどろとバツが悪そうに歯切れの悪くなるハヤシに、あぁ、そうゆうことか。と理解したリコは、「いいえ! そう言われてみれば当然のご意見です。気づきませんでした。ありがとうございます」と、お礼を述べて「でも、証明の方法は」どうしようかな? と思っていると、やおらハヤシが上半身の装備を解き服を脱ぎ出した。


「これなんだけど、いけるかな?」


 露わになったハヤシの体は、左乳が無く引き攣り、肩から腕にかけては義手だった。リコの驚いた表情に「無理なら、こっちでも」とフエが髪をかきあげると、以前見たヒナと同様耳がすっぱり切り落とされていた。


 ガン!!


 リコはカウンターに突っ伏して頭突きをする。

 リュコスが作業場からこちらにこようとするが、それを手で制して、カウンターを飛び越えて移動すると、「少々お待ちください」そう告げて、右手側の壁に手を当て「【錬金錬成】」と囁き、ガガガっと大きな音を立てて壁の中をくり抜いた。


「実は、こちら側にも隠し部屋があるのを見つけたのです」


 ちょっと準備しますね。と壁の石材に向かって、扉を開ける様な仕草をして、開口部から中にスッと入る。

『乙女』たちが驚いているのがちらりと見えたが、気にせず作業を押し進め、向かいの壁沿いに天蓋付きのベットを5台用意する。

 セーフルームに ゴン! ガガン! と、音が響く。


 右側の壁に引き戸をつけて、奥に洗面台とトイレ、金の猫足をつけた真っ白な琺瑯の浴槽を置いたお風呂場も作る。どちらも1人用だが15階の銭湯と大体同じ仕組みだ。

 入り口近くに作業台と椅子を二つ。天井にカーテンレールで囲いをつける。

 病院の診察室のていだ。

 二つの入り口のある壁側に長椅子を設る。

 開口部に扉をつけ開けると驚いている『乙女』達を招き入れ「ちょっと『処置室』の中で待っててください」と、自分は店に戻った。


 言われるがまま、部屋の中に入った『乙女』達は、「「「わぁ」」」と声を上げた。

 シンプルながら白を基調とした上品な調度品に囲まれ、入り口から向かってベットヘッド側の一面だけ腰上から淡いピンク色の壁紙に可愛らしい小さな花の柄が散りばめられている。

 タイコが3人は寝られそうな大きなベットが五つも並び、全てに柔らかで真っ白な寝具と薄い天蓋がついていて、枕やクッションがこれでもかと乗せられている。


「ダンジョン内で、これは、ないわ」


 フエが布に触って呟く。


「何この部屋、夢みたい」


 タイコの言葉に口を開けたままマツリが頷く。

 ハヤシとヒナが所在なさげにウロウロと壁を触って歩く。


「お待たせしましたっ」


 リコがガチャガチャと箱を持って現れ「そこに座ってください」と、カーテンで仕切られた腰高の長椅子にハヤシを座らせる。

 カーテンを閉めようとして、「あ、みんなで見なくちゃいけないの」とフエに制される。

 リコがハヤシを見ると、ハヤシは首を傾げてうんうんと頷く。


「えっと」


 リコは説明を始めた。


「ここに名前を書いてください」


 取り出したガラス瓶の蓋に、封をするように貼ってる札に、自分の名前を書くようにとペンを渡される。

 ハヤシは不思議に思いながらも言われた通りに封に名前をかく。


「で、その、この義手は、取り外すことができますか?」

「? え、えぇ、もちろん。外せるわ」


 ハヤシは器用に前後のベルトの金具を弾いて外すと、ゴト、と腕が落ちたので、リコは「おぉっと」と受け取り「私が触っても良いですか!? 大丈夫ですか?」と確認するように慌てて聞く。


「ありがとう、大丈夫よ」とハヤシは笑って答えた。


 リコは丁寧に慎重に義手を作業台の上に置くと、椅子に戻って、「ではその封を切って蓋をあけ、一息にその中身を飲み干してください」と伝える。ハヤシは器用に片手で蓋をあけ、一瞬の間をおいて中身を煽った。


 眩い光の粒がハヤシを包みポワッと全身が発光する。


 徐々に皮膚の引き攣りは消え、つるりと綺麗な肌が戻ってくる。

 右の乳房と同じように美しい乳房が左胸に再生され、光の粒は肩に集まり、ゆっくりと移動するようになかった腕を再生していく。


「ウソみたい・・・」

「スゴイ・・・」

「信じられない・・・」


 光の粒の一つが左手の中指からぷつんと離れると、ハヤシは気絶するように倒れ込み、待っていたリコが受け止めるとそのまま寝てしまった。


「【鑑定解析】」状態:健康 熟睡


 リコはホッとして、長椅子に寝かし、下半身の装備も外すと、「〈身体強化〉」で支え、器用に柔らかい浴衣を着せ、ハヤシをお姫様抱っこしてベットに移動させ、フゥと息を吐いた。


「ヨシ」


 再生した左手をさすり羽毛布団の中にしまう。


「再生箇所が多かったので、体力が尽きて寝てしまったようです」


 リコは呆けているみんなに向き直って「次はどなたが試しますか?」と声をかけた。

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