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「そんな機能つけてない」




 いつもの時間にアラームが鳴って、目覚めたリコはいつものように、そのままの姿勢で手をあげ伸びをした。


「あれ、自分のベットじゃん。森の拠点に泊まっちゃった?」


 あらやだ朝チュン。

 背中にリュコスの気配を感じながら、子供達のことを気にするが[お鈴]や[ゴーレム]達もいるし、パハン先輩には[モバイルゴーレム Modイビル]もあるし。


 連絡がなかったと言うことは大丈夫だったって事だろう。


 ともあれ、


「ウヘァすげぇ寝たぁ・・・」


 そう言って向きを変え、隣を見ると、リュコスの目がガッツリ開いている。


「あれ? おはようリュコス。え〜と、ちゃんと寝た?」

「寝られるわけがないでしょう? 昨日の夜のことを覚えていないのですか?」

「あ〜、、、あんまり?」


 リコの目が泳ぐ。

 リュコスは目を細めてリコを見た。


「ごっごめんなさい」


 リコは、迂闊な行動で心配をかけた事を素直に謝った。

 リュコスは起き上がり、ベットに腰掛けると、ため息をついた。


「ステータス異常は戻りましたか?」


 リコは、正座で座り直し、慌てて自分のステータスを開く。


 [表示ステータス]

 リコ 19才 称号[精霊殺し]

 種族:人間

 パッシブスキル【状態異常無効】【翻訳】【魔術操作】【魔法創造】

 アクティブスキル【鑑定解析】【収納】【魔法付与】【錬金錬成】【隠密隠蔽】【買付】

 魔法: 〈光属性〉〈闇属性〉〈火属性〉〈水属性〉〈風属性〉〈無属性〉〈土属性〉

 加護:精霊魅了 互助魔眼 異世界人

 職業:雑貨屋ぼったくり店主兼職人

 状態:健康


「あ、はい、無事みたいです」

「そうですか」


 リュコスはそう答えて再びため息をつく。


「ついでに魔石を拾ってきます」


 そう言ってそのまま立ち去ったリュコスが、着替えてもいなかった事に気がついた。


『人間、叱ってもらっているうちが華だぞ』


 リコは、何かの本で読んだ言葉を思い出し、ぎゅっと口を真一文字に結ぶ。


「軽率でした。本当にごめんなさい。反省しています」


 トイレに行って顔だけ洗って、慌ててリュコスの後を追い、心からの反省の態度を示す。

 リュコスは「わかりました」と声を返すが、落穂拾いの絵画のように、落ちている魔石を拾いながらこちらを一瞥もしない。

 リコは、トボトボと畑の方に歩みを進めると、体育座りをして畑を眺める。

 心配した土ゴーレムの一体が、横にリコと同じように座った。


 麗らかな朝、小鳥の鳴き声が響くが、いつも通りその小鳥の姿は見えない。


 畑では、イビルちゃんが農作業をしているゴーレムの上を飛んで、その様子を見ている。

 隣にいた土ゴーレムが、腕に咲いていた小さな花を差し出してきた。

 リコは、それを受け取って「ありがとう」と小さく言うと、花をいじりながら、土ゴーレムにもたれかかった。

 土ゴーレムは、ウネウネと波打つように土を動かすと、隣からリコの背中側に回り込み、抱き抱えるように座り直す。


「なんで私、ヒトの気持ちがわからないんだろう」


 いっそ相手の考えを読める魔道具でも作ってしまおうか。


 ・・・いや、そんなことをしたら、ますます軽蔑されてしまうだろうよ。

 ・・・いやいや、でもそれで他者に迷惑をかけないなら。

 ・・・いやいやいや、望んでもいないのに他者に心に中を勝手に見られるなんて言語道断だろう。

 それは勝手に鑑定してしまうぐらい失礼なことじゃないか?


 いや、いやいやいやいや。


 そんなことを考えてるうちに、そのひんやりとした感触から、自分の身体が半分ほど土ゴーレムに埋まっている事に気づく。


『このまま押し潰して、俺の身体の中にリコ様を入れてしまいたいのです』


 リコは、その時のことを思い出して、ふっとゴーレムに身を預ける。


 ズブり。


 身体が土に埋まるそのままの感触が全身に広がる。


 土ゴーレムとの一体感が強烈な快感になって身体を刺激する。


「あ、これ、何か、大きな物とリンクしてる感じがする」


 リコは、さらに深いところを目指せそうだと、意識を手放すべく目を瞑った。




 急激に何かに引っ張り上げられたかのような身体の抵抗に目を開けると、両脇をリュコスに抱き上げられ、左右にゆすられ、ぶら下げられていた。

 ふわふわした感覚のまま、リコはなんとか言葉を発する。


「そんな、掘り出したジャガイモの土落としてんじゃないんだから」

「何をしてるんですか!?」

「え?」

「何やってんですかって言ってんですよ!?」


 なんか、怒ってる?

 急に現れて怒鳴り声を上げるリュコスに、リコは何が起きたのかわからないという顔をした。


「今、ご自分がどうゆう状況だったのか理解できていないのですか?」


 さらなるリュコスの質問に、「何って、土ゴーレムと一緒に畑を」リコが、背中のゴーレムに目をやると、さっきまで寄りかかっていた土ゴーレムは、ただの土くれに変わっていた。


「っえ!? やだ! 何!? どうしたの!?」


 リコは慌てて土をかき集める。


「【錬金錬成】!!」


 土は全くまとまらず、元のゴーレムに戻らない。


「なんで!?」


 リコは、何度も何度もその土を寄せ集めて土ゴーレムに戻そうとするが、積もった土の塊は、リコが触るとボロりと崩れ霧散して、魔法陣部分の金糸と魔石と、植っていた花たちが残された。

 リコが、残った土くれの上にボタタタと、涙をこぼす。

 リュコスは、そんなリコの行動に、眉間のシワを深くする。


「マナに返りました」

「そんな機能つけてない」

「マナがダンジョンに吸収されたのです」

「だから! そんな機能つけてないって言ってるでしょ!」

「リコ様が、ダンジョンに吸収されることを望んだのではないのですか?」

「はぁ!? 何言ってんの!?」

「リコ様がそう望まれたから、同化していたゴーレムは、それに従ったのではないですか?」


 リコはワナワナと震えると、さっきまで一緒にいた土ゴーレムの、空になった魔石を拾い上げ、金でできた魔法陣をそのまま【収納】し、こぼれた花を掴んで立ち上がる。


 別の場所から新たな土ゴーレムを引き出し、新しい魔石と金を使って【錬金錬成】すると、持っていた花を肩に植え、そのまま無言で家の中に入って行った。


 イビルちゃんが、新しい土ゴーレムの上で旋回し、何かをモニョモニョと話し合うと、土ゴーレムはうなずいて、畑周りの探索を始めた。



 イビルちゃんはリュコスの肩にとまり、スリスリと頬に体を擦り付ける。

 リュコスはイビルちゃんを指で撫でながら玄関の扉を開けると、家の中では、土まみれのままのリコが、昨晩昏倒しながら出した金を延べ棒に変え【収納】していた。


 リコは、そのまま外に出ると、家の脇に、見覚えのある小屋を作る。

 そうして中に、ピンク色の扉を設えた。

 リコは、鍵を選んで[ドアtoドア]を開ける。

 リュコスもイビルちゃんも、中に入ったのを確認して、リコは扉を閉めた。


 小屋の扉を開けると、そこは海洋フィールドの島だった。

 家の中はまだ静まり返っていて、人が起き出している気配はない。

 リコは、チラリと腕時計を見ると、家の中には戻らず、そのまま浜辺に向かって歩き出した。

 リュコスも無言でついていく。

 毎朝ラジオ体操をしている浜辺につくと、リコはおもむろにパジャマを脱ぎ出した。


「!???」


 リュコスが驚いて走り寄ると、下着姿で軽くストレッチをしていたリコは「〈身体強化〉」と呟いて、トン と海中に飛んだ。


「リコ様!!」

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