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「あんのクソジジイ!」




「つまり魔法はイメージって事よね?」




 もういいや。


 と、意識を手放した瞬間、この上下左右のわからんほど真っ白な場所で横たわっていた。


 卒業式の日、やっと地獄の日々から抜け出せる。と、少し浮かれていたのかもしれない。


 うっかり拉致られて、クラスメイト達にボコボコに暴力を受けて倒れ込み、ついさっきまで、泥水に顔半分浸かっていたっていうのに。


 今、顔にへばりつく清潔そうな床からも、ちゃんと重力を感じる。


 どうやら夢を見ている訳じゃないみたいだけど、何だかふわふわとしていて、身体は動きそうに無い。


 やっぱりあのまま死んだのだろうか?


 目を開けて、薄ぼんやりとした意識のままあたりを視線だけで見回すと、そのかたわらで自分を見下ろす見知らぬ老人が、さっきから脳内で会話していた相手か。




 いかにも。このままでは消費されるマナに偏りがある。

 それゆえ別の価値観の中で生まれ育った 異世界人 が必要なのだ。

 異世界で、無辜な事象で尽きる寸前の魂を救い出し、この《契約の部屋》に移転させた。

 後は互いの合意を以て()の世界を生きてもらうだけで良い。

 いかなる支配もしないと誓い、いかな望みも叶えよう。

 どうか、()の世界を救うために協力して欲しい。




 ・・・いやいや、特異な力を持っていたとしても、その力がどんなに強力だったとしても? 結局それを活かせるのはどこにいたって犯罪上等思考の人だけじゃん。


 私、嫌だよ。犯罪者になるの。



 その犯罪者を成敗して、同じ無辜な人々を守る為に力を使ったら、、、



 それこそ犯罪者ありきの発想じゃん。どんだけ危険な世界なの。ネズミ講システムにも程があるよ。


 この人って絶対アレよね?


 いかにも“神様”然としている存在を前に、こんなに強気になれるなんて、やっぱ「無敵の人」って最強なんだなぁ。


 アナタが偉大なる何者かならば、どうぞどうぞ。ご自分で問題解決に着手してください。



 我とて、地上でその営みを育む者に直接力を及ぼす事まかりならぬ(ことわり)の中に組み込まれている。

 この場所で別れた後は、我の力及ばず、他に取れる手立て無く、其方に頼るより他になく。



 それって良くある、ひたすら赤の他人の依頼クエストをクリアする勇者という名前だけの役職の奴隷になれってこと?


 あ〜ヤダヤダ。あ〜無理無理。

 そううゆうネットの課金ゲームみたいなの苦手なんだわ。絶対転生したくない。

 これ以上のタダ働きなんてまっぴらゴメンだわ。搾取・駄目・絶対。

 おまけに、話を聞いてると、貴族や王族がいる封建社会じゃん。


 快適な生活を維持させるためには、超課金必須じゃんよ。なにそのソシャゲ。流石にクソゲーが過ぎるよ。

 そんなところに急に移転させられて、現代日本で生まれ育った女子供が適応できるとは思えないよ。

 ・・・あれ? 言語化すると相当やばい。もはや罰ゲームじゃん。やっぱりなんか私の事、騙そうとしてる?




 では、人目を避けてひっそりと、どこかの森の中で、自分のためだけに能力を使えば誰にも迷惑かけずに、



 ・・・そりゃ趣味のドールハウス制作だけして?

 凪の日々を過ごせりゃ願ったり叶ったりだけど?

 どうらやら行き先が《剣と魔法と封建社会》って事は、YouTubeもリットリンクもベイスも無いどころか、ネット環境すらない世界じゃない。

 自分の生命維持のためには少なからずも、収入を得なけりゃいけないとなると、直接的な(ヒト)との関わり合いはどうしたって避けられない世界観なのに、それを避けて生活を維持させなきゃいけないんでしょ?

 今の日本ですら無理よ? Amazonもヨドバシも無い世界なんて。無理of無理。

 自給自足の辛い肉体労働のみで、生活のほとんどが占められたうえ、さすがに、2度も、死ぬまで孤独の刑も受ける気はないんだけど。

 どんなドMだと思われてんのかしら。



 ・・・多少の関わりも嫌がるとは。そんなに人に関わるのが嫌なのか?



 そりゃ、あんな死に方したんだから好きになれるわけないじゃん(即答)



 ・・・いや、まだ死んだわけでは。



 あのまま移転させられなければ死んでいたのでしょう?

 だからもうイイってば。このまま消えて無くなりたい。



 ・・・あいわかった。どんな力を使っても犯罪にならず、



 老人の言葉に、自身の体が ポワッ と光る。



 其方に何よりも強い力があっても何一つ救う必要も無く(ポワッ)

 其方の魂は、其方の欲する物が全て用意してある、其方の為の空間に移転させよう(ポワッ)

 我を信仰すれば、希望(のぞみ)は全て叶えられ、必ず人生のハッピーエンドを約束しよう。


 これでど



 だからなんでよ?


 食い気味にその行為を非難してやるわ。


 生き返らなくて良いって言ってんじゃん。もう何も頑張れない。もう疲れたよパトラッシュ。

 移転は拒否します。このまま死なせてください。


 

 申し訳ないがその望みを叶えてやることはできない。

 魂を救うために存在するのだ。滅する力は我にない。



 いまさっきどんな望みも叶えるって言った?



 ・・・スマヌ。



 沈黙。

 シュンとするご老人。



 ・・・え、なにこれ、私が悪いの? もうほんといい加減疲れたんだけど?

 何せこっちは、死にかけなんだけど?




 さっきから黙って聞いてりゃキサマどうゆうつもりだ!?



 背後から突然現れた、鳥のような何者かに、頭を押さえつけられた。



 ・・・(鳥の足? と、鳥の頭?)



 よさぬか、約束を違えたのは我のほ



 んな!? キサマ!? 少しも抗わぬとはどうゆう事だ!?



 ・・・もう、いいよ、そのまま踏み潰して



 ふざけるな!!

 貴様が捨てようとしているその魂に、一体どれだけの価値があると思っている!?

 持たぬものにはそれこそ一生かけても手に入らぬ、



 んにゃあな! わぁの魂がわぁのだってへってらのんがどだべんが。せば、わぁの魂をなぁしたって、わぁの勝手だはんでっ! かっちゃくちゃへってねで、そのまま踏み潰せでばっ!!



 キサマー!!



 やめよっ!!(ポワッ)



 グシャリ!



 目の前が真っ黒になった。

 あぁ、今度こそやっと、死ねるんだな。







 [ ドロップしました ]


 ・・・風を感じる。


 何かのアナウンスが頭に響いて、再び目を開けると、よく茂った木々の隙間から青空が覗き込み、真っ直ぐに木漏れ日が伸びている。


 そして、ひんやり硬い石の上。


 ・・・石の上?


 外、だな、これ、森か?

 また森の中に戻ったのか??

 え、待って、マジで?

 これって、私 今 裸 じゃない?


 目に入る青色と灰色と緑色、に、対しての、肌色の多さと、じんわり全身で感じる森林の空気感。


 「あんの(クソジジイ)っ!!」

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