第9話 ベル先輩との試合をする
エリーブラウン11才のお話。
士官幼年学科剣技大会2日目午前中
今日は大会2日目、午前に準々決勝、準決勝、午後に決勝が行われる。
エリーは剣技場入口に、貼り出さているトーナメント表を見ていた。
(先ずは、ベル バリントン様3年生、そして、ジェーン教官の予想だと、準決勝はロイ様、決勝はアンジェラ様との対戦なるはずだと言っていた、昨日のアンジェラ様の態度、気になるなぁ?)
今日は、昨日迄と様子が変わった事があった。それは、通り過ぎる学生や、すれ違う学生から挨拶されることだ。
エリーは挨拶される度、挨拶を返してちょっと疲れていた。
(やはり、昨日ルシア会長戦で、知名度が上がったせいかしら?)
などと考えていると
エリーは突然後ろに気配を感じる。
すると、背後から手が伸びて来て肩を捕まれ、髪を掻き回される。
「今日も、良い匂いがしているな」
エリーが首を回して、後を見ると、ジェーン教官が嬉しいそうな顔をして、エリーの髪を鼻に当てている。
(私は、どんな扱いなのか?、うんんーーペット枠なの、ジェーン教官て最初、前世の私みたいな武人の雰囲気だった気がするのだけど)
「エリー体調は、どうだ、万全か?」
ジェーンが、エリーの瞳を見ながら聞いてくる。エリーは、ジェーンの手を振り解き、振返て、嫌そうな顔をした。
「せっかく、お母様がブラッシングしてセットしてくれたのに台無しです」
「あゝ、それはすまなかった、いや、何でかわかんがやってしまうのだ」
「お前が、可愛い過ぎるからいかんのだ」 ジェーンはちょっと目を泳がせて、照れた様な顔をした。
「えーー、ちょっと前に確かですね、教官は私に言いましたよね、ちょっと頭の良いだけのひよっこが、叩きのめしてやるて」
「お前、そんな事言ったか?記憶違いだな」ジェーンは赤髪のショートボブをかき揚げ、とぼけた顔をする。
エリーはジェーン教官を眺めながら。
(この人、いつからこんな感じになった、普通にしていると凄い美人なんだけど、なんか、かわちゃった)
「ジェーン教官、恋人とかいないんですか?凄く綺麗だしモテそうですよね」
エリーが朱色の瞳をキラッとさせ微笑んで言った。
「見合いとか話はあるが、ずっと断っている」
「私は、剣技を極めたいのだ!」
ジェーンはすーと背筋伸ばし澄まして言った。
エリーはジェーンの紫色の瞳をじーーっと見つめ。「そうなんですね、うぶなのですね、恥ずかしがり屋さんなのですね」
ジョージアを揶揄う様に戯けていた。
「エリー、お前は教官に対して何と言う事を!」
「戯言は、もう良い」
ジェーンが真剣な表情になって右手を挙げる。
エリーは頷き、微笑んで「はい、わかっています」
二人は剣技場内に入り、剣士待機場所に到着した。
運営担当の学生が、エリーに防具を手渡す。「エリー嬢、防具を、準備願います」
エリーは手慣れた手つきで、防具を装着していく、装着具合を確認して、最後に木剣をケースから取り出して準備完了した。
「ジェーン教官、準備完了しました、それでは、勝って参ります」
「うむ、心配はしていない、勝ってこい」
ジェーンは少し微笑んで言った。
エリーは、それに応えた様に微笑んで、試合ブロックへと向かう。
エリーの準々決勝ブロックは第3ブロックだ。審判に礼をしてブロック内に入る。
審判がエリーの開始ライン位置を指示する。
エリーが正面を見ると対戦相手と視線が合う、エリーは礼をする、相手も反応して軽く礼をした。
審判が「試合は、もういつ始めても良いが、準備等ないか」
エリーは「はい、問題ないです」
対戦相手も「問題ありません」
審判は軽く頷いて「では、名乗りを」手を出してしてエリーを指す。
エリーが礼をして「エリーブラウン 特待学生、精一杯頑張りますのでよろしくおねがいします」そして礼をする。
対戦相手も「ベル バリントン3年、対戦出来て光栄に思う、お互い良い勝負を願う」お互い見合って再度礼をする。
審判が「準備、良いか!」
両者頷くと、審判は旗を振り下ろして声を上げる。
「試合始め!」
エリーは、前回も使用した相手の身体を見つめてエナジーの波動を視覚化する。これは、前世の執行の女神セリーナの付与スキルだ。筋肉、骨格、関節、始点終点、間合い、振り出し速度の見極めが出来る。
ベルはすぐさま間合いを詰めて、右上段斬りを入れて来た。エリーは直前で見切り、ヒラリと交わす。
(今日は、身体強化を使ってみようかしら)
ベルの連続の斬り突きを、ヒラリヒラリと交わしながら、エリーは考えていた。
エリーの試合ブロック周辺ではドヨメキが起こっていた。
会場の学生達の声。
《何で、あんな突きを交わせるんだ》
《なんて、身体能力だ》
《剣先を見極めているのか》
《凄い、まるでダンスしてる見たい》
エリーは魔力を身体全体に軽く乗せ、ベルの動きを見て、右側に上体を捻り、左上段斜めから斬り込んだ。次の瞬間ベルは木剣で防ごうとしたが、空振りし、エリーの木剣がベルの脇に入る。
〈バーーン〉と乾いた音が響く。
〈ぐーーあーーっ!〉とベルが呻き声を上げ、木剣を落とし、膝から崩れ落ちて、両手を床に着いた。
審判はその状況を確認して、旗を上げる「勝者、エリー ブラウン!」試合ブロック周囲学生が大歓声を上げる。
(勝って良かったです、ベル様大丈夫か
な?、今回は前回より、だいぶ抑えてたんですけど)
エリーは礼をして、うずくまっているベルに近づき跪く。
ベルの肩に手をそっと当て「大丈夫でしょうか」ベルの顔を覗き込み、心配そうな顔をする。ベルは、正座した様な格好になり、上体を両手で支えながら起き上がった。
「エリーさん、いや、大丈夫です、私とは、格が違うのが良くわかりました。どうかお許しを頂ければよろしいかと」
エリーはベルの瞳を見つめ、少し微笑んだ。「ベル様、何を、仰っているのか、よくわかりませんが、今後共よろしくお願い致します」そして、顔を傾けて更に微笑んだ。
「ベル様、立てますか?」
「肩をお貸しします」
エリーはベルの右脇に肩を入れようとする。ベルは顔を赤らめて、恥ずかしそうに「エリーさん、チョット無理だよ、俺との体格差あるから・・・・・・」
ベルはよろめきながら、何とか立ち上がって「エリーさん、凄いよ、こんなに強いのに、優しいし、とても可愛い」
(え〜と、ベル様なんか変なこと言ってますね)
エリーは、ベルの腰に手を回して支える。(エリーさんて可愛いなぁ、こんなに強いのに、見下す素振りも、傲慢さも無い、本当にいい子だ、こんな子が彼女ならな)
エリーはベルを支えて、ゆっくりと試合ブロックから退場した。
そして、試合ブロックの周りでは、学生達が拍手と歓声がそれを送る。
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