第7話 ルシアとの試合。
エリーブラウン11才のお話。
士官幼年学科剣技大会初日午後
剣技場4ブロックで、それぞれ試合が開始された。各試合制限時間10分一本先取するか、相手が降参を申し出るか、試合ブロック枠外へ出てしまうと負けとなる、後は審判が試合続行不可と判断した場合、制限時間一杯の場合は審判が攻撃に積極的だった方を勝ちとするルールらしい。エリーは一応ルールブックは読んで理解していた。
「もうそろそろかしら」
エリーは一応身体に防具を装着、木剣を持ち準備していた。
エリーの持つ木剣は標準長仕様だ。
試合に使用出来木剣の刃長は基準±5cm範囲内であれば自分の長さは自由に選択出来る。
エリーの身体の大きさを考えればもっと短くても良いのだが、間合い等を考えてこの刃長にした。
(最初は魔力を乗せなくても行けるかしら)
エリーがそう考えていると、ジェーンが近づいて来る。
「エリー、準備万端か?」
ジェーンは微笑んでエリーの肩に手を軽く乗せてた。
「はい、問題ありません」
エリーはジェーンを見上げ、笑顔をみせる。
「エリー負けは絶対許されない、理解しているな」
「はい、学科長、教官のために、そして、両親のために、頑張ります」
エリーは顔を引き締める。
しばらくして、エリーは剣技場第二ブロックへと入り対戦相手と同時に礼をする。
対戦相手が先に名乗る。
「ルシア ガーフィルド 3年だ、正々堂々やり合おう!」
「エリー ブラウン、特待学生です、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」エリーは微笑んで相手を見つめながら言った、言い終わると再度、相手に礼をする。
ルシアは(何だこの感じ、この少女がシードなのか!? 強者のオーラをまったく感じない、違和感しか無い)
ルシアは戸惑った顔をしていた。
(噂によると、ジェーン教官と引き分け、学科長の愛弟子との話もある。強者であることは、間違い無いのだろうが、まずは、様子見で慎重に行く事にしよう)
ルシアは思考を巡らし、「よーし!」
大きな声で気合いを入れた。
審判が両者に「準備良いか」
ルシアとエリーが軽く頷くと、審判は旗を下げ「試合始め!」と声を上げる。
エリーは木剣を右斜め前上段に構える。
(相手の先手を受けて、様子を見るほうが良いかしら?)
エリーはスキルを発動し、相手の身体を見つめてルシアの波動を視覚化する。これは、前世の執行の女神セレーナの付与スキルだ。筋肉、骨格、関節、始点終点、間合い、振り出し速度、魔力量の見極めが出来る。この世界で一般的に言えば魔眼とか神眼言われているものだ。
エリーは木剣を上段構えから下段構えと変えながら、ルシアを視感する。
(動く気配が無いわね?こっちから仕掛けるしか無いのかしら)
10秒程両者見合ったまま時間が経過した時、エリーが動く、上体を少し沈めると右足を蹴り出し、前へ飛び出した。
〈ドーーーバン〉轟音が響く。
次の瞬間、ルシアは後ろに吹き飛び、仰向けに倒れていた。
審判は一瞬、何が起こったか判らず呆然となり、倒れたルシアを見つめていた。
「ななんだ・・・・・・!」
審判は事態をやっと把握して、旗を上げる。
「勝者、エリーブラウン!」
エリーの下段斜め斬りが見事にルシアの胴体を捉えた一撃だった。
エリーは(間合いに入った時ルシア様、凄く驚いた表情されてましたけど、試合中なのに油断したらダメですよ、でもこんなに綺麗に入るなんて思わなかったわ)
エリーの試合を観戦していた周囲大勢の学生はルシアが倒れた後、一瞬静まり返り、どよめきが起こった。そして、審判のジャッジと共に大歓声へと変わる。
エリーは審判の勝利宣言が終わり、医官の診断を受けて、寝かされているルシアの元に駆け寄るり跪く。
「ルシア様、大丈夫でしょうか」
心配そうな顔で、ルシアの顔を覗き込み
、ルシアの右手を両手で積み込み
「申し訳ありません、怪我は大丈夫でしょうか」
エリーは朱色の瞳を潤ませてルシアの目を見る、ルシアは顔を赤らめて。
「エリー嬢、大丈夫だよ、胴体防具には防御魔法が付与されているから、骨は折れて無いみたいだ、まあ、かなり痛いけどね」
エリーはホットした顔をして言う。
「怪我無くて良かったです・・・・・・」
ルシアは(まったく、反応すら出来なかった、恐ろしいスピードとパワーが、こんな可愛い妹の様な少女のどこに有るのか)
「エリー嬢 俺の心配はしなくて良い、勝った事を喜んでくれるか」
「はい、ルシア様、ありがとうございます」
エリーは潤んだ目を少し瞬きして、首を傾け、微笑んだ。「ルシア様、今後共よろしくお願い致します」
ルシアは(天使かよ、なんて可愛いんだ、俺はこの美少女に完全にやられちゃったのか)
「あゝ、エリー嬢今後、困った事があれば俺のところに来れば良い」
「これでも、学生会会長だからな」
そうルシアは、この幼年学科学生会会長なのだ。
「そうなのですね、そうとは知らず失礼致しました」エリーは軽く頭を下げる。
跪いてルシア手を握っていたエリーは、優しく離して立ち上がる。
審判が声を上げる。「次の試合があるから、場外へ移動してくれるか」
ルシアは医官と学生に両脇を抱えられ場外へと移動して行く、その後取り敢えず医務室へ行って、問題があれば病院に行くとの事だ。
エリーはふと周りに気を向けると、歓声が未だに聞こえる。
「さすが、シード剣士ハンパ無い」
女子学生からは「エリー様お友達なってください」
「エリー嬢、今度内のクラブに遊びに来てください」
「会長を一撃て凄すぎる、今度、お茶会に」
歓声と、いろんな声が聞こえてくる。
エリーは(目立っちゃったな・・・・・・)
ちょっと照れた顔して剣士待機場所まで移動した。
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