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405話 青騎士隊リナ

青騎士隊リナはエリーに帝都の情報を報告する。

 2国間和平交渉会議26日目午後(大陸統一歴1001年11月8日17時頃)


 ここは異世界、西部領大森林、ローゼの隠し砦施設。


 施設内エリーの個室に青騎士隊リナが、先程到着し報告していた。リサは帝都より黒騎士隊転移魔法陣を3箇所経由してゴロスネス市へ着き、そこからランカーⅡ5号機でローゼの隠し砦へ先程到着したのである。


 エリーは紅茶を準備して、棚からクッキーの箱を取り出しテーブルの上に置いた。そして椅子に座って。

「ご苦労様です。リナさんお疲れのところ申し訳ありませんが、報告をお願いします」


 部屋にはエリー、リナ、ニコル、リサがテーブルの椅子に座っている。リナは一度深く頭を下げてから報告を始める。エリーはグラン連邦国名店のチョコレートクッキーの箱を開けてクッキーを一枚取り出した。


「はい、それではご報告させて頂きます。先ず、ガーダ帝国内の情報伝達妨害工作については、中継塔、魔法通信具の破壊、妨害魔導波等により通信網の断絶及び、黒騎士隊による欺瞞情報流布による情報撹乱が一定の効果を上げてまともな情報が帝都中枢には届いておりません。それにより皇帝グリスダース、中央統制部は他領諸侯、地方統制官とダイレクトに連絡が取れず正常な判断指示が出来ない状態です。尚、通常、帝都防空隊であるワイバーン騎兵隊が地方連絡任務にかなりの数が従事しており作戦行動に支障をきたしております」


 エリーはクッキーをモグモグと食べながら頷き、紅茶を一口飲む。

「……脆弱ですね。高速通信手段が1系統しか無いのは私達には好都合ですが。グリスダース皇帝には最悪でしょうね。まあ、情報がまともに手に入らないのは疑心暗鬼を生みます。皇帝も判断に困るでしょう」


 エリーがそう言いながらテーブルのクッキーを一枚取る。そしてリナはさらに報告する。


「バッカルス様からの情報です。皇帝グリスダース陛下から直接聞いたとの事です。今夜、ヴァルキリー騎士団を解放するとの事です。西部領域への攻撃到達時間は明朝4:00付近と思われます。申し訳ございませんが、私はヴァルキリー騎士団の詳細に付いては情報を得ておりません。報告は以上です」


 リナは言い終わると立ち上がりエリーに一礼した。エリーはチョコレートクッキーをひとかじりして微笑み言う。


「ヴァルキリーに付いてはボリスさんより情報を得ています。元は大陸の守護者、裁定者と呼ばれていたようですが、数百年前に突然、ガーダ帝国側に付いて殺戮者になったとのことです。とにかく容赦無いとのことです。レベル的にはこの世界で言う、S級トリプルからシングルレベルだそうです。厄介なのは空を飛ぶということです。対策は準備していますが、まあ問題は無いとセレーナは分析しています」


 リナは安心したような顔をしてエリーに頷く。

「……、ボリス様が何十人も、そして空を飛ぶと、ですが、エリー様の余裕の顔を見て安心致しました。勝利を確信されているのですね」


 エリーは紅茶を飲みほすと、3人の顔を見渡す。

「対魔導誘導弾2種を使用します。ヴァルキリー個体は魔力放出が多いので有効と思います。侵入時、半数を落とせれば十分に勝利は確定です。仮に防御シールドを展開したとしても瞬間温度5000度には耐えれないでしょう。とりあえず高速攻撃機バルガで第一波を行い、弱ったところへ、ベルーダ攻撃機で第二波攻撃でほとんど迎撃出来るはずです。締めはレンベルで行い殲滅します」


 今まで静かに聞いていたリサが、エリーを見て少し厳しい口調で言う。

「万が一の備えは、如何致しますか? 一体でも撃ち漏らすとかなり厄介な様です。派遣部隊に人的被害を出す訳にはいきません」


 責任者であるリサの言い分を理解したエリーは、真剣な顔をして答える。

「もちろん、慢心していませんよ。魔導体を後方に配慮しておきます。仮にヴァルキリー騎士団トップクラスが来たとしても対応出来ます。リサさん、安心してください。そして、最終的にセレーナが出れば制圧出来ると思います。この世界においてセレーナの女神魔導体は無敵です」


 リサはふーっと息を吐いてエリーを見て静かに言う。

「……エリー様、私はこの世に絶対は無いと考えています。ですから、備えは万全を期す。そして慢心はせず事象に臨機応変に対応する。それはセレーナ様の教えです」


 エリーは頷く。

「そうだね。もちろん、絶対は無いと……、ええ、考えられる備えはしておきます」


 エリーは紅茶カップにポットから注ぎ、リサを見て尋ねた。

「こちらも忙しいですが、ユーリさんの方は大丈夫ですかね。孤島の防衛体制構築はほぼ完了しているようですが」


「はい、問題は無いとの事です。ですが、ユーリさんと直接お話しした方が良いと思います。ユーリさんは私同様、エリー様の信者ですから、元気になると思うのです」


 エリーは微笑みリサを見て言う。

「……そうだね、じゃあそうするよ。ユーリさんも疲れているだろうから、労わないとだね」


 リサがエリーに一礼する。

「作戦開始まで、3時間ほどあります。孤島へお戻りになられても大丈夫です」


 エリーはクッキーの箱を閉じて棚に置く。

「リサさん、少しの間帰って来るよ。よろしくです。ニコルさんも一緒にお願い」


「はい、そのように」

 リサは微笑み答えた。そしてエリーとニコルは直ぐに部屋から出て行く。

 リサはリナの顔を見て微笑む。

「リナさん、それでは作戦準備を致しましょう。あなたはボリスさんの腹心と聞いています。作戦面の支援を期待してよろしいですね」


 リナはリサに一礼する。

「はい、ご期待に応えるよう尽力致します」


 リナはリサが膨大な魔力を内包する女神因子を持つ大魔導士であることを知っている。この世界でエリーに次ぐ実力者であり、女神セレーナの信任を得ている。見た目からは予想出来ない強者で、自分は足元にも及ばない。


「リサ様、お尋ねしたいのですが。リサ様ご本人はこの世界をどのようにするおつもりでしょうか?」

 リナは真剣な顔でリサに尋ねた。


「女神セレーナ様のご意志のままに、です。私の意志も同様です。リナさんだってセレーナ様の洗礼を授かっているはずですよね。答えはわかっているはずでは、なぜ、愚問を?」

 リサが目を細めてリナを見つめる。


「……いえ、他意はもちろん有りません。ただ、リサ様に尋ねてみたかったのです。違う考えがあるかもしれませんので」


 リナがそう言うと、リサは少し考えて言う。

「女神セレーナ様は理想主義ではありません。最も現実的な方向性を持ってより良い方を決断されるお方です。ただ……、エリー様が望まれる方向が間違っていなければですが」


「……それは、女神セレーナ様の指針を決めているのはエリー様だと?」


 リナが戸惑ったように尋ねた。


「はい、女神セレーナ様はエリー様の母親みたいな存在です。それもかなりの親バカです」


 リサが当たり前のように答える。


「……そうなですか? エリー様と女神セレーナ様の関係は主従関係でも無く、対等でも無く、親が娘を溺愛したような感じだと」

 リナは納得いかない顔をして言った。


「ええ、今は、もちろん何の問題もありません。エリー様は思慮深く賢明なお方ですから」

 リサはそう言って頷く。


「では、作戦司令部へ行きましょう!」

 リサがリナに言うとリナはコクリと頷き、直ぐに部屋のドアを開ける。


「リサ様、参りましょう」

 リナがドアの横で控えて一礼した。リサは若干呆れた顔をして言う。

「リナさん、そう畏まらないでください。私はその様な者ではありません」


「……いいえ、私には見えます」

 リナはそう言って丁寧にリサに頭を下げた。


「リナさん、私に何を求めても無駄です。あなたはボリスさんに尽くしてください」

 リサは直ぐに部屋から出て行く。そしてドアを閉めて追いかけるリナであった。


 

 

 

 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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