第24話 セレーナの叡智ディアス
エリーブラウン11才のお話し。
ここは、士官幼年学科中央広場。エリーは午後の授業が終わり、隅のベンチに一人座っている。
「エリーさんお待たせしましたわ、学生会の打ち合わせがあったのですが、体調不良にして抜けて来ましたわ」
アンジェラが教棟側らちょっと焦った様に駆け寄って来た。
エリーは近寄って、来るアンジェラを眺めながら、(アンジェラ様やっぱり超可愛いですね。でも中身はリーゼちゃんなのよね)
「アンジェラ様、ご足労おかけします」
そう言ってエリーが頭を下げる。
アンジェラが嬉しいそうな顔して言う。
「エリーさんのためなら、出来る事は何でも致しますわ、お気になさらないで下さいませ」
「エリーさん、では、参りましょうか」
ハリーヘイゼルの教官室は士官幼年学科、第三教棟二階端にある。通常、教官室は第一教棟一階にあるのだが、左遷されたハリー教官は、教官でただ一人第三教棟にいる。第三教棟は学年教室は無く、特別教室、実験室、書庫、備品室がある建物だ。
ハリーヘイゼルは連邦首都国家大学主席卒、国家大学始まって以来の秀才で、超エリートだった。だが、配属先の内務局で揉め事を起こして、今は教育部門局付きでこの幼年学科教官に左遷され閉職の身らしい。
教官室に向かいながら、アンジェラがハリー教官について、いろいろ話してくれた。
「ジョージア教官から聞いていた事とほぼ同じです。アンジェラ様、情報ありがとうございます」
第三教棟内に入り、階段を上がって教官室を目指す。エリーとアンジェラは教官室のドアの前に着いた。
ドアには、【教程教官ハリーヘイゼル】と表示されたプレートが貼り付けてある。
「エリーさん、わたくしが先に入りますわ」アンジェラがエリーの顔を見て微笑んだ。
「いいえ、アンジェラ様、私が先に!」
エリーがそう言って、ドアをノックする。
〈トンーートン〉
部屋の中から男性の声がする。
「どうぞ、お入り下さい」
エリーがドアを開けて室内に入る。それにアンジェラが続いて行く。
教官室20畳程の空間、一番奥に執務机があり両サイドの壁は書棚で埋まっている。入口より2m程の所に、小さいテーブルと向かい合わせで椅子が二脚あった。
執務机の向こうに座っていた男性が立ち上がり、エリーの方を見る。
「お待ちしておりました。エリーブラウン様、今朝はご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」
そう言って頭を下げた。
エリーは不機嫌そうに言う。
「あの様な事を聞いて、放って置ける訳がないでしょう!」
それを聞いて、反対側に居る男性は、申し訳無さそうに再び頭を下げた。
「エリー様、私はハリーヘイゼル・・・・・・、生前はセレーナの叡智の一人 ディアス ラングナーと名乗っておりました」
エリーは、暫く頭を傾けて考えた。
「ええーーっ! あのディアスさん・・・・・・? 確かだけど、かなり渋めなおじさんだった筈」
「なんか、ディアスさんゴメンナサイ! 雰囲気が全然違って・・・・・・、頭が追いつかなくて」
エリーは目をパチクリさせて、頭をうんうんさせて、納得した顔になる。
「そうよね、転生したのですものね」
ハリーがニヤついて言う。
「そうですよ。それに、セレーナ様だってとても可愛いお姿になられていますよ」
エリーはハリーを見つめて微笑み。
「お互い様ですよね」
ハリーはエリーの隣に立っているアンジェラを見て、ちょっと嫌な顔になる。
「騎士団長の娘さんですよね! セレーナ10騎士の一人リーゼ=バーンさんでしたね」
アンジェラがハリーを見て微笑んだ。
「前世では、余りお話しする機会はございませでしたわね。でも、父からは良くお話しは聞いておりましたわ。奴はワシの持って無い物で大いにセレーナ様の役に立っておる。替の効かぬ人物であると申しておりましたわ」
「ほうーー! その様な事、本人から聞き及んだ事はありませんでしたが」
ハリーが少し嬉しいそうに言う。
「あゝ、失礼しました、椅子にお座り下さい」
ハリーが、エリーの朱色の瞳を見つめて微笑みながら言った。
エリーはその言葉を受け、椅子に座り、アンジェラも反対側の椅子に座った。
「なぜ、気付いたのですか?」
エリーがハリーの顔を見上げて、不思議そうに言う。
「決定的には、剣技大会決勝ですね、だって、魔力波動が懐かし我が主のものだったのですから! セレーナ様のお姿が見えたのですよ」
ハリーが少し高揚した様に言った。
「実は、エリー様のお名前は、4年程前から知っておりました。国立図書館の館長から、1000年前の古文書の写し原書を熱心に読む少女がいると、神童と呼ばれた君以上だよと言われ、私は興味を持ちました」
ハリーは更に言った。
「少女の読んでいた古文書は1000年前の大陸統一大戦前後の歴史書でした。7才の少女が原文を読んでいる? 理解しているのか? 館長が少女にいろいろ聞いてみたところ、内容を理解していると判り驚いたと言っておられました。少女の名はエリーブラウン、ただ残念な事に、大きな商会の娘さんで、将来学者になる事は無いだろうと言っておられた」
エリーは頷いて少し驚いた様に言った。
「確かに、図書館によく行ってました。館長さん? よく、おじさんが話し掛けて来ました」
エリーは顔を傾けて微笑む。
「それで、ディアスさん・・・・・・あ、ハリーさん今後どの様にされるおつもりでしょうか?」
ハリーはエリーに微笑んだ。
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