表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/34

第21話 秀才ハリーヘイゼル

エリーブラウン11才のお話。


 エリーは今日も軌道車両に乗って幼年学科に向かっていた。幼年学科制服の左胸には剣技大会優勝章が光っている。


 エリーは車両内で明らかに目立っている。士官幼年学科学生は、近所の下宿から徒歩通学か、学科敷地内の学科寮、又は馬車通学が普通である。まず、軌道車両に乗ることは殆どない。


 朝の通勤通学時間帯は、ほぼ同じ人達が乗り込むので、毎日見かける幼年学科制服を着た美少女は、同車輌の人達には不思議な感じに見えていた。


 軌道車両内は、この時間帯は2両編成だが身動き出来ない程、一杯になることは殆どない。そして、幼年学科校舎に近くなる程、車両の乗客は減っていく。最後はエリーを含めて5人程度になる。エリーの護衛が2名いるので、純粋な乗客は2名ほどとなる。


 そうして、幼年学科前駅舎まで3分くらいになった頃、1人青年がエリーに近づいてくる。すかさずエリーの男性の護衛が間に入る。気の緩んでいたエリーがハットして言葉を発する。「何か、御用でしょうか?」


 青年は慌てて胸ポケットからなにか取り出そうとするが、男性の護衛に右手を掴まれ、その場にねじ伏せられた。

「イタターーッ!」

青年は声を上げる。もう一人の女性の護衛は周囲を警戒している。


 青年は声を振り絞って「誤解です!私は幼年学科の職員です!」


 エリーが青年を覗き込み、軍服を着ていないので怪訝そうに見ている。


「身分証がポケットに入っているので確認して下さい、お願いします・・・・・・」

青年が弱々しい声で言った。


 抑え込んでいる男性の護衛が、青年のポケットからカードを取り出し確認する。

「エリー様、確かに嘘ではない様です」

「どう致しますか?」

 男性の護衛がエリーに伺う。


 エリーは、ふーと息を吐いて言う。

「起こしてあげなさい」

 男性の護衛は青年を起こし、手を離す。


 青年はエリーを見て言う。

「エリー様、申し訳ありません、そうですよね。やっぱり護衛付いてますよね。不用意でした」

そう言って青年は頭を下げる。


 エリーは青年を観察する。適度に刈り込まれた薄紫色の頭髪、眼鏡を掛けているが奥に見える綺麗な朱色の瞳、顔は鼻筋の通った端正な顔立ち、顔色は白くあまり健康的には見ないが、イケメンの部類の顔である。白い長袖シャツに黒いスラックス、足元は黒い革靴、体型は細身でスラットしている。身長は高いが学科長程はない、年齢は20代前半ぐらいだろうか。


 エリーは警戒した顔で、「先程は、護衛が失礼致しました。御用件をお伺いしたいのですが」


すると青年がエリーの耳に口を寄せて小声で呟く。エリーが目を見開き驚愕した顔をする。

「貴方は、何者?」エリーが声を漏らす。


 そして軌道車が幼年学科前駅舎に到着した。

青年は、「ハリーヘイゼルと申します、一般教養課程教官をしております。御用があれば教官室へお越し下さいませ」


 エリーから離れると、軌道車両から降りて行った。エリーは未だ動けないでいる。

(どうして、なぜ? 転生者か? 私を知っている・・・・・・)


「エリー様、どうかされましたか」

 女性の護衛が声を掛ける。


「ううん、ユーリさん大丈夫、ちょっとびっくりしただけ」

 そう言ってエリーは軌道車から降りた。


 護衛のユーリが、「明日からは、馬車にした方が宜しいかと思いますが?」


「そうだね、護衛のみんなにも迷惑掛けるもんね。ユーリさんお願いします」

エリーは元気のない声で言った。


 護衛のユーリはエリーの横に並び幼年学科の正門前まで一緒に歩いて行く。

「エリー様、今日はさっきから元気が有りませんよ?」


「大丈夫だよ、ユーリさん気を付けて帰ってね」


 護衛のユーリはエリーの顔見て、「お迎えは馬車で参りますので、心配なさらないでください」優しく声をかけた。


「それでは、帰って参ります!」

 ユーリは駅舎の方へ引き返して行った。


 エリーが正門をくぐると、直ぐにジェーンが近寄って来た。


 エリーの肩に手を回し、左手でエリーの髪を掻き回す。「エリー、おはよう!」

エリーの反応が悪いのに気付いて、「どうした、腹の調子でも悪いのか?」


「お前、暗いぞ、いつも笑っているのに、美少女が台無しだぞ」

ジェーンが戯けた様に言う。


 エリージェーンを見上げる。

「ハリーヘイゼル教官を知っていますか?」

ジェーンが少し眉をあげ不機嫌そうになった。

「エリーなんだ! アイツか、知っているが、私はあまり好ましく思っていない」


「ハリーヘイゼルは連邦国家大学主席卒の秀才だが、内務局に配属されて本来なら超エリートだった。だが、今は教育部門局付きでこの幼年学科教官に飛ばされた。間抜けな奴だ」


ジェーンはエリーの顔を覗き込む。

「お前の落ち込んだ原因は、ハリーか、なにか言われたか?」


 エリーは顔を逸らして、「いいえ、今日、一緒の軌道車両に乗り合わせてお見かけしたもので、気になっただけです」


 ジェーンはかがみ込んで、エリーの顔を両手で挟んだ。

「嘘をつくな、お前が奴を知る訳がない、授業でも校内でも名前を知る事は無いはずだ」


 エリーは観念した様な顔をして「はい、実は、軌道車両内で、私にハリー教官が不用意に近付いて、私の護衛とちょっと揉めたのです」


 ジェーンはエリーの瞳を見つめる。

「些細な事でも、私に報告しろ、私はお前の専任指導教官なのだ、お前の問題は私の問題でもあるのだぞ、それに、お前の元気のない姿など見たくもない」


 ジェーンはエリーの両頬を軽くペッシッと叩いた。

「今後、ちょっとした事でも私に報告しろ、良いな」


「はい、わかりました」

ジェーンの言葉でエリーは少し瞳を潤ませ微笑んだ。

「少し、いつものエリーに戻ったな」


「ジェーン教官、ありがとうございます」

(ジェーンさんほんと良い人だ、嘘は言ってないけど、全部は言えないよね)


 ジェーンは立ち上がり、エリーの頭を撫でながら言う。

「直ぐに、学科長のところに行かねばならんのだ。エリーに話があるそうだ」



最後まで読んでいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ