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DEATHGAME~A STORY NO ONE KNOWS~  作者: 陽菜


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二章 始まるまでの話

 それから、三回目の会場はスズエさんと一緒に作っていった。

「……これなら、簡単だし解けるんじゃないか?」

 ヒントも簡単なもので、スズエさんはボクに見せていく。スズエさんはギフテッドだから簡単の基準がおかしい時があると分かっているのだ。

「大丈夫、ありがとうね、スズエさん」

「別に。私はお前のサポート役の人形だ、共犯者になってやるさ」

 ボクとスズエさんは同じ階のフロアマスターだからということもあり、こうして共犯者になっていた。シナムキもそうだったけど、彼女は下の階のフロアマスターなので協力は出来ない。ただ、メインゲームを無効化するために尽力するしか。

 ――メインゲームを無効にする方法が、一つだけある。これはボクがシンヤに提案したことだ。

 誰かが役職を持たないこと。一階で言えば、役職カードを拾わないことだ。望みは薄いけど、何もしないよりはマシだ。

 それにしても。

「……はぁ、また誰か殺されたんだね……」

 下の階から響く断末魔。まだ封鎖されていないからか筒抜けなのだ。とっとと閉じてくれたらいいのに。

「……ボクもサイコパスって自覚はあるけどさ」

「あるのか……」

「さすがにこれは好きになれないよ……」

 監視カメラがないことをいいことに、ボクは呟く。スズエさんは「……それでいいだろ」と言った。

「お前はそのままでいいんだ。……悪役になり切れない、そのままのお前で」

「……スズエさん」

「私はお前が憎まれ役を買って出ていることを知っている。だから、私にだけでも弱音は吐きだしてしまえ」

 スズエさんは優しく、頭を撫でてくれる。母のように……。

「……しかし、まさかエレンさんが私達の実の兄だとはな……。しかも、お前も七守家の血筋なんてな」

「驚いた?」

「さすがにね。……一応、お前も「義兄」になるということなのか?それとも違うのか?」

「どうだろう?自分達の考え方次第じゃないかな?」

 幼馴染特有の、和やかな空気が流れる。それは、とても幸せな時間だった。


 ボクはユウヤやエレンのところに向かった。二人はあの忌まわしい村から出て、既に東京に来ていた。

「あ、アイト。いらっしゃい」

「相変わらず二人は一緒に暮らしてるんだね」

「そっちの方がスズエやシルヤのことについて相談しやすいですし」

 ……この二人も仲がいいんだよなぁ……。

 スズエさんとシルヤ君の、あの激しいスキンシップほどではないけど。

 エレンがお茶を出してくれる。ボクはありがたくそれを飲んだ。

「……それで、モロツゥはどうなってる?」

 ユウヤに聞かれ、ボクは現状を伝える。スズエさんも既にモロツゥの実態については掴んでいるということも。

「……なるほど。スズエは既に気付いているんですね」

「でも、あいつらのことだ。恐らくスズエさんの記憶は消されると思う」

「だろうねぇ……」

 スズエさんの記憶力はすごい。一度見たものは忘れないほどなのだから。だからこそモロツゥにとっては脅威でもあるのだ。

 ――確か、レイさんって人もそうだったかな?

 あっちはサヴァン症候群だったけど。

「……とにかく、今のところは様子見ってところかな?」

「私の方でも警戒しておきます。アイトは私達と通じていると感づかれないようにしてくださいね」

「ありがと、義兄さん」

 エレン義兄さんは笑ってボクを見ていた。

「それじゃ、ボクは帰るね。長い時間はいられないし」

「うん。何かあったらボク達に伝えて」

 二人は笑顔で、ボクを見送ってくれた。


 途中、あと一軒に立ち寄る。

「……どちら様?」

「やぁ、ラン君。調子はどうかな?」

 そう、彼だ。参加者の一人で、父親から虐待を受けている高校生。一応、参加者とは顔見知りでこうやって話す程度には仲良くなっている。

「どうって……変わらねぇよ。ただ、クソ親父がまた借金を増やしたぐらいだな」

 それは変わったというのでは……という言葉は胸の奥に封じ込めておこう。彼にとってはこれが「日常」なのだ。

「それは大変だったね……本当に、何かあったらすぐに言うんだよ」

 そう言って、ボクは去っていった。

 これは参加者の現状を確認し、報告するために指示されたことだ。

 モロツゥのやり口は簡単で、願い事を叶える代わりに同意書に名前を書くというもの。それでゴウさんとタカシさんは怪我や病気関係なのですぐにそれを叶え、他の人達はまだ叶えていないところだった。……いや、ボクが把握していないだけで叶えているかもしれないけど。

 恐らく、あとは一気に叶えてしまおうという魂胆ではないかと思う。皆を繋げる人を見つけ、その人が見つかり次第デスゲームがすぐに行われるという……。

 ――でも、そうするとその人は同意書なしになってしまうんだよな……。

 シンヤが何を考えているのか、その時は全く分からなかった。


 そうやって準備していって、デスゲームが始まる二か月前になってシンヤに呼ばれた。

「どうしたの?シンヤ」

 ボクが聞くと、シンヤはにこりとユウヤと同じ笑顔を浮かべた。

「スズエを参加させることにした」

 告げられたのは、ボクにとって避けたかったこと。

「ま、待ってください。スズエさんの同意書はありません。だから、参加させるわけにはいきません」

 シナムキが反対を出すが、「決定事項だ」とシンヤは言った。

「皆の願いを叶えるための条件を満たすのがスズエだけだったんだよ」

「……で、でも、スズエさんは……」

「同意書なんてなくても参加させろ。異論は許さん」

 そんな強く言われて、ボクは反論出来るわけもなかった。

 その夜、ボクは走ってスズエさんのもとに向かった。スズエさんは丁度下校途中だったらしく、ボクを見て目を丸くした。

「どうした?アイト」

「スズエさん、ボクと一緒に逃げよう」

 そう言って手を差し出すが、彼女はキョトンとしたままだった。ボクが事情を話すと、スズエさんは「シルヤはどうなるんだ?」と聞いてきた。それも話すと、逃げるわけにはいかないと、弟を守ると笑った。死ぬことになるということも、知っていながら。

 その日、ボクはスズエさんの家に行った。

「先にお風呂、入っていいぞ」

 スズエさんはそう言って食事の準備を始めた。……まぁ、食べられないことはないけど人形だからなぁ……でも、スズエさんの料理はおいしんだよなぁ……エレンさんに似て。

 ふとごみ箱の方を見ると、栄養ドリンクの空き缶や野菜ジュースの空き箱が大量に捨てられていた。……シルヤ君が言っていた通りだなぁ……。

「……お風呂、入れるのかなぁ……」

 ボソッと呟きながら、ボクはお風呂に入る。……防水加工でもされているのか、壊れることはなかった。人形のスズエさんは気になっていたし、教えてあげよっと。

「タオルは適当に使ってくれ。下着は……おじいちゃんのものを使ってくれて構わない」

 そんな声が聞こえ、ボクはタオルが入っている棚から一枚取った。……いい匂いだ。やっぱり女の子なんだなぁ……。

 居間に行くと、机には二人分のオムライスが置いてあった。

「ありあわせのもので悪いが、食べてくれ」

 一応、少しは食べているんだなぁと思いながら、それを一口食べる。……やっぱりおいしい。エレンさんと一緒に厨房に立っていてほしいぐらいだ。

「また料理の腕、上げたね」

「そうか?最近はそんなに作っていないんだけど」

 そう言いながら、スズエさんも食べ始める。

「……ねぇ、スズエさん」

「どうした?またさっきの話か?」

 スズエさんは真剣に話を聞こうとする。ボクは首を振って「そうじゃないよ」と笑った。

「もしさ、君達にお兄さんがいるって言ったら、どうする?」

 尋ねると「兄か……」と少し考えて、

「もしいるなら、会ってみたいね。……妹は……アカリちゃんは、生まれた時に亡くなったみたいだからね」

 そう、答えた。

 会わせてあげたいなぁ……。

 このきょうだいは、どんな業を背負っているんだと聞きたいほど不幸なことばかり起こる。こうやってきょうだいが引き離されているのがいい例だ。

 そして、残酷なゲームに参加することになるなんて。

 ボクは客間で横になる。……今頃スズエさんはパソコンで何かしらの仕事をしていることだろう。どうやら彼女はそのハッキング能力からか、依頼も絶えないという。そのたびに一から調べ上げ、情報を渡すのだ。……噂では、裏世界でもダークヒーローとして暗躍しているとかなんとか。ちなみに、最近巷を騒がせている「アヌビス」というハッカー集団は彼女ではない。

 朝早く、スズエさんはボクを駅まで送ってくれた。そしてそのまま、学校に行ってしまう。シルヤ君と待ち合わせしているようだ。

 そのあとすぐに、ユウヤ達のところに向かった。

「あれ?どうしたの?アイト」

「今日は来る日ではなかったですよね」

 二人は不思議そうに首を傾げた。事情を説明すると、エレンさんは顔色を変えた。

「それは本当ですか!?」

「うん。……そして多分、あいつらはスズエさんを殺そうとしてる」

 二人は顔を見合わせる。そして、

「……なら、私がスズエを守らなければ……出来ることなら、シルヤも」

 エレン義兄さんはそう呟いた。

「ボクも、出来る範囲でやってみる」

「……ありがとう、二人共」

 ボクがお礼を言うと、「当たり前だよ」と笑ってくれた。

「ボク達にとっても……スズエさんは大事な存在だからね」

「えぇ、一緒に協力しましょう」

 それは、三人の誓いだった。


 戻ると、ボクはスズエの前に座る。

「アイト君?どうしたの?」

 目の前の幼い彼女は首を傾げる。ボクはその姿を見て、涙を流した。

「……ごめん……ごめんね……スズエ……ボク、本当の君を殺さないといけなくなるかもしれない……」

「アイト君……」

 ボクはモニターにしがみついて泣き続ける。スズエも一緒に泣いてくれた。

「……私に、実体があればよかったのに……」

 そう呟いた声が聞こえた。

 その日から、何度も三人で集まり、また人形のスズエさんやシナムキと共に、皆を生かす道を探し続けていた。


 ――そうして二か月後。エレン義兄さんとユウヤの必死の行動も虚しく、スズエさんも連れてこられてしまった。

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