ユミの過去
ユミの過去です。ここで初めてアトーンメントの名前が出てきましたね。
……え?アトーンメントは誰かって?もちろん気付いているでしょう?
ユミは病気の母を看病していた。
「ごめんね、ユミ。一人親なばっかりに」
「ううん。お母さんは私を一生懸命育ててくれたもん」
ユミは高校生になってから、バイトを始めた。父親を早くに亡くし、女手一つで育ててくれた母には感謝してもしきれない。
しかし、母の病気が悪化して寝たきりになってしまった。病院に行こうにもお金もない。
ユミはバイトを増やした。でも、子供で稼げる金額など病弱な母と一緒に暮らしていければいい程度のもので。
ユミは、自分はどうなってもいいと裏バイトをしようとした。その時ネットの裏情報で偶然見た情報屋――「アトーンメント」に、連絡を取る。
裏路地で会ったその人はフードを被っており、男か女かすらも分からない人物で、本当に裏社会の人間だと思った。ただ、唯一見えていた大きな赤い瞳だけは覚えていた。
「……裏バイトはしてはいけない。君のような麗らかな少女には危険すぎる」
アトーンメントはやはり性別不詳の声でそう言った。
「でも、お母さんが病気で……」
「……すぐにお金が必要なのか?そんな、裏バイトをしてまで」
「はい……」
「そうか……ならば、ボクの手伝いをしてくれ」
そう言われた時、何をさせられるかビクビクした。しかし、アトーンメントはただ書類の束を綴るだけの仕事をさせた。どうやら怖い人に(アトーンメント自身は怖がっている様子がなかったが)依頼されていた情報を渡すために紙に書いていたらしい。
「助かったよ、ありがとう。これ、バイト代だ」
渡された封筒はとても分厚かった。
「それで当分は病院代とかに充てられるだろう。必要になったら、また来るといい」
中身は万札が数えきれないほど。さすがに受け取れないと返そうとするが、
「君はいい働きをしてくれた。気にせず受け取るといい」
そう言われ、結局受け取ってしまった。
あとから知ったことだが、アトーンメントは一部の人から「義賊」と呼ばれているらしい。だから裏バイトなどに手を出させず、自分にあれだけのお金を渡してくれたのだと気づいた。
その人は、弱い人を助けてくれる人。




