マイカの過去
マイカの過去です。彼女がいつも明るい理由が明かされます。
マイカは二十歳になって、亡くなった両親が営んでいたパン屋を引き継いだ。それまではおばが若いマイカに代わって営んでくれていた。
しかし、そのおばも亡くなり意気消沈していた。パン屋は続けていたが、元気のなくなったマイカに寄り添ってくれる人などいなかった。
二十八歳のある日、茶髪の女子高校生が黒髪の女子高校生と共にマイカのパン屋にやってきた。
「サチ、何が食べたい?」
「スズエが食べたいものを選びなよー。いっつも私達が食べたいものばっかり食べてるじゃん」
「私はいいさ。シルヤとも食べるし、同じものを買うよ」
「もう!スズエってば、自分で稼いだお金で買うんだから、たまには好きなもの食べなよ」
うらやましいと思った。自分も、あんな友達が欲しかったと。
やがて、十個ほど選んで持ってきた茶髪の少女はマイカをじっと見た。
「……おねえさん、何か悲しいことがあったんですか?」
レジを打っている間、少女は聞いてきた。驚いたが、マイカはいつもの明るい演技をする。
「何でもないよー!面白いなー」
「そうですか?……無理は、しなくていいんですよ」
ありがとうございます、と代金を払い、パンだけを受け取っておつりすら受け取らず店内から出た。
「あ!ちょっと……!」
そのまま行ってしまい、マイカは目を丸くしていた。不意におつりを見ると1244円だった。
――「一緒」にいよう。
そう、言われている気がした。
そのおつりは、今もずっと残っている。




