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それから数日後、私と師匠はハンター活動で街から少し外れた森を目指していた。
「それにしても、あのライラがねえ」
「もう、その話何回目ですか?」
私たちがハンター活動を行っているということは、当然本来の目的である旅の準備やカナドラへの報告はライラさんが引き受けてくれている。
そのことが師匠にとっては随分と驚きのようで、何度も何度もその話を繰り返していた。
「だって、あのライラがよ?」
「あのって……私は優しい人だと思いますけど」
「そうなのよ。ペリットちゃんに甘いのよねえ……あのライラが」
そんな噛み合っているような噛み合っていないような会話をしているうちに、私たちは目的の森へと辿り着いた。
「そういえば、何をしに森まで来たんですか?ギルドの方にも寄らなかったですけど」
「まずは、ペリットちゃんの実力を知らないといけないもの。それに、私も害獣を相手にするのは久しぶりだから、感覚を取り戻さないといけないわ」
そう言って、師匠は自分の腰の携えている剣に軽く触れた。
「ペリットちゃんは、剣を使わないのよね?」
「はい。素手格闘と魔法です」
「魔法?誰かに習ったのかしら?」
「いえ……」
私が独学で魔法を学んだことを伝えると、師匠はうなり声を上げた。
「驚いたわね……ペリットちゃん、ナーチなのね」
「ナーチ?」
「生まれながらにして魔法が使える人のことよ。もっとも、別に特別な力があるとかじゃなくてただ魔法のセンスが良いってだけだけど」
私の場合はそうではない気がしたが、それを口に出すことはなかった。
「とりあえず、ペリットちゃんの力を見せてもらおうかしら」
師匠が区切りをつけるようにそう言うと、森の中へと足を踏み入れた。
私は森の空気にどこか懐かしさのようなものを感じながら、師匠について行くのだった。