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「カーミアさん、その……前に何かあったんですか?」
アンさんが去ってからしばらく経ち、ようやく意を決した私は先程の話の根幹にあった『あんなこと』ということについてカーミアさんに尋ねていた。
「アンのこと?」
「はい」
「そうね、話して聞かせるようなことでもないのだけど……簡単に言えば、騙されたのよ」
「騙された?」
「そう。ハンターっていうのは、時には複数人でパーティーを組んで活動することもあるの。それで私も四人組のパーティーで行動していた時期があったのだけど、その時のリーダーにね」
カーミアさんは当時を思い出しているのか、悲しそうな顔をした。
「まあ、騙されたと言ってもそんな酷いものではなかったわ。でもね……私は嘘が許せないの」
ドキリと心臓が音を鳴らしたが、私はわざとそれに気づかないふりをして目を背けた。
「どんな嘘だったんですか?」
「目的のことだったわ。リーダーは公には困ってる人を助けるためって言って各地を回っていたのだけど、本当は『不朽の剣』って言う代物を探すためだったの」
「不朽の剣?」
「その名の通り、朽ちることのない伝説の剣ね。存在するかも疑わしいものだけど、別にそれはいいのよ。ただ、最初から本当のことを言っておけばよかったってだけ。そしたら私も、きっとアンも反対はしなかったわ」
だったらなぜ、と思ったが、それを口に出すことはできなかった。
聞いてもきっと、また嘘が許せないからと返されるだけだろう。
それは、おそらくはぐらかされているわけではない。カーミアさんは本心から、嘘が許せないのだ。
それがなぜなのかは全く予想もできないが、私のこの角のように、繊細で、気安く触れてはいけない話なのだということがカーミアさんの表情から伝わってきた。
カーミアさんはその無を感じさせる表情をふっと和らげると、私に向かって微笑んだ。
「それと、今度から私のことは師匠と呼ぶように。ね?」