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角の生えた少女  作者: aaa
10/17


 ティーメル村を経ってから数日が過ぎた。

 最初こそ少しばかり心躍らせていた旅というものだったが、その理想は開始数刻にして打ち破られることとなっていた。


 私たちの旅は、主に馬車での移動だ。

 私たちなどといったが、カルシアロードを行きかう旅人たちはみんな馬車である。

 道も整備され、道中の安全も国の兵士たちによって護られている。その上、ひとつひとつの街の間隔が相当長いのだ。この道を歩いて行こうなんて人は、余程酔狂な人だけだろう。


 私は別に、そのことについて直接的に不満があるわけではない。

 そう、私の不満というのは───馬車の揺れだった。

 上下に、左右に。まさに縦横無尽に揺れる馬車の中で、私は乗り物酔いという現象に苦しめられることとなっていたのだ。


「……もう無理」


 ようやくたどり着いた休憩場所でぽつりと弱音を漏らすと、縮こまっていた私の身体が人影に覆われた。


「やっぱり辛いの?」


 声のした方を振り向くと、そこには心配そうに私を見降ろすカーミアさんの姿があった。


「いえ、大丈夫です」


 そう言って立ち上がったが、思わず足元がふらついてカーミアさんの方に倒れ込んでしまった。


「もう……もう少し甘えてくれてもいいのよ?」

「……いえ」


 私が頑なにカーミアさんを拒もうとすると、カーミアさんが突然私の手を握ってきた。


「悲しいわ。私のことは嫌い?」


 カーミアさんは本当に悲しそうな表情で、私は自分の心が痛むのを感じた。

 私は、その心を抑え込むように唇を噛んだ。


「嫌いじゃないです」

「なら、何か知られたくないことでもあるのかしら?」

「どうして……」


 思わず出たその言葉に、私は何も続けることができずに黙り込んでしまった。

 カーミアさんはそんな私を見ると、視線を少しずらしてどこか遠いところを眺めるような目をした。


「……隠し事なんて、なんにもいいことは生み出さないわよ。本当に」


 その言葉は私の胸に刺さるように響いたが、私はそれ以上何も言葉を出すことはできなかったのだった。


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