夢と浪漫
ずいぶんと遅くなった、、、、、。
「おいリズ、ちょっと待て。何入れる気だ?ってシズ、ストップストップ!ダメだって、あ、あぁー。」
「リュー、こっちも大変なの!」
後ろからはシルフの悲鳴。
隣では上へ下への大騒ぎ。
どうしてこうなった?
リュースティアは昨日の自分の発言を後悔するがもう遅い。
あんなこと言わなきゃよかった、、、、。
*
「そういえばさ、前からリュースティアに聞きたい事あったのよね。」
閉店後の片付けも終わり、夕食の準備をしているとシズがそんな事を言ってきた。
2人は家に帰れば屋敷付きの料理人がいるのに、なぜか夜ご飯はリュースティアの屋敷で食べていく。
作るのはもちろんリュースティアだ。
「何?俺が何者とかは聞かれても答えられないぞ。」
夜ごはんの盛り付けをしながらそんなことを言う。
本日のメニューは手作りニョッキのカルボナーラソース添え。
付け合わせは無難にカルパッチョとミネストローネ、バゲットを用意してみた。
「それは気になるけどもう聞かないわよ。」
カルパッチョに使っている魚は元の世界では見たことのないものだったがこちらでは主流のものらしく試しに買ってみたものだ。
食べた感じは淡白で癖もなく普通においしかった。
「じゃあ食事しながらでもいいか?」
そう言ってできた料理からテーブルに並べていく。
ちなみに昨日のメニューはカース牛の赤ワイン煮。
赤ワイン煮というものを初めて食べたリズたちも大絶賛のできだった。
なぜパティシエであるリュースティアがここまで多彩な料理ができるのかと言うと製菓だけでなく調理の学校にも通っていたからである。
そして結局はパティシエの道を選んだわけなのだが調理スキルと知識は今でも健在だ。
「ええ。それよりも早く食べましょ!」
「そうですね。昨日食べた”あかわいんに”も美味しかったですけど今日の料理もおいしそうです!」
それよりって自分が気になる事だろうが!
久々に内心で盛大なツッコミを入れるが顔には出さない。
成長したな、俺。
「今日はカルボナーラのニョッキにカルパッチョ、ミネストローネだ。」
「・・・むぅ?」
言っていることのわからなかったスピネルが首をかしげたままこっちを見てくる。
かわいい、、、、。
だがだからと言って説明はしない、しないぞ?
昨日説明していたせいでご飯を食べ損ねたしな。
「まあ気にせず食べてくれ。いただきますっと。」
説明を求められるよりも先に食事を開始するリュースティア。
三人は渋々といった感じながらも説明を諦め食事をする。
「で、聞きたいことって何?」
シズが食事を味わう事に必死すぎて一向に聞きたいこととやらを言ってこないのでこちらから聞く。
絶対そこまで聞きたいと思ってないよね?
「なんだっけ、、?」
うぉい!
でたそれ、そのパターン。
どうせ俺への興味なんて夜ご飯以下ですよね。
まぁいいですけど別に。
「、、、、、。ごちそうさまでしたー。」
すねるリュースティア。
気まずそうに必死で思いだそうしているシズ。
それを暖かい視線で見守るリズ。
食事に夢中のスピネル。
今日も平和だ。
「ごめん。って、待って!思い出した!思い出したから。」
シズが必死に部屋に戻ろうとするリュースティアを引き留めようとする。
もちろんリュースティアは部屋に戻る気などないがシズが慌てるところを楽しむ為にわざと戻ろうとしている。
リズはそんなリュースティアの考えを見抜いているので黙ったままだ。
さすが魔眼持ち、なんでもお見通しだ。
「なんだよ?」
ちょっと不貞腐れた感じを演出しつつ椅子に座りなおす。
リュースティアがとりあえずは戻ってきたことに安堵するシズだが顔はまだ必死に聞きたいことを思いだしている。
たまにはシズをからかうのもいいな、そんなことを思ってしまう。
「えっと、、、、。そう!リュースティアは創造って言う固有スキル持ってる訳でしょ?だから料理とかも材料さえあればスキルで作れるのにどうしてわざわざ手間と時間をかけて料理なんてするのか気になったのよ。」
シズがようやく聞きたいことを思いだし勝ち誇ったような顔でそんなことをきいてくる。
普段はリュースティアやリズを窘める役のシズが子供っぽい仕草を見せるのはなかなか新鮮だ。
それにしてもなぜ、か。
考えたことなかったな、、、。
「何でだろうな。」
「自分の事なのに自分でもわからないのですか?」
今までは静観を貫いていたリズがそんな事を言ってくる。
「いや、案外自分の事なんて自分が一番わかんなかったりすんだよな。でもなんだろ。やっぱり楽しいからじゃないか?」
うん、そうだ。
多分それ、きっと何かを作るのが楽しいんだと思う。
調理関係だけに限らず何かを作ることが楽しくて好きなんだろう。
そう考えれば神様からこのスキルをもらったのも偶然ではない気がする。
「多分これは何かを作る人にしかわからない気持ちだと思うけど。自分で一からなにかを作る。で、それを誰かが食べてくれる。その喜びって口じゃ言えないけどすごくうれしくて達成感と充実感があって、くせになる。お菓子に関してはただ作ってるだけで楽しいんだよな。」
「うーん。達成感とか充実感は商売として考えればわかるんだけどそれならスキルで作っても同じじゃない?」
シズ、わかってないな。
そこは夢とロマン以外にないだろ?
「確かにそうですよね。スキルで作った方が生産性も上がりますし、商売ならなおさら生産性は大事ですもんね。」
リズ、君もか、、、。
所詮男のロマンなんて現実主義者の女性にはわからないさ。
「なら明日にでも作ってみるか?」
ほんとに、ほんっとに軽い気持ちでそんな提案をしてみた。
せっかくだし定期的に近所の奥さんたちを呼んでお菓子教室を開くのもいいかもしれない。
作れる人が増えればお菓子も広まると思うしね。
「えっ、いいの?あんなに私たちを厨房に入れるの嫌がってたじゃない。」
「店はお客さんに売るものを作ってるから下手な事できないだろ?けど売るわけじゃないなら問題ないよ。」
確かにお店を開けている間は基本的に2人は厨房に入れていない。
入れることがあるのはスピネルくらいだ。
これは2人の調理スキルが低いこともそうだが、商品としてお店に並べる以上最高のものを提供するというパティシエのプライドだ。
お金をもらうからにはそこは妥協できない。
「なら私も!私もやりたいです!」
「・・・・。やる。」
意外なことにスピネルも参加するらしい。
さっきから食事に夢中で話なんて聞いてないと思ってたよ。
けど何か一つでもスピネルが興味を持ってくれるのはうれしい。
この調子で好きを増やしてほしいものだ。
「シズはやらないの?」
一人だけ参加の意を示していないシズに意地悪っぽくそんな問いかけをする。
「や、やるわよ!その代わりちゃんと教えなさいよ。」
もちろんですとも、そこはきちんとやらせていただきます。
「でもリュースティアさん、明日やるってお店はどうするんですか?」
「休みにすればいいよ。」
うんこれ、こういうのやりたかった。
シェフの気分で開いたり閉まる。
社畜ではできなかったこと、最高だ。
「休みってそんな急に。休んでお店平気なの?」
突然お店を占めると言われたのだ、店の経営を心配するのは当然だろう。
だが問題ない。
「すでに黒字だし、お金には困ってないからな。問題ないだろ。」
そうなのだ。
元の世界だろうと異世界だろうとお金こそが正義!
読んでいただきありがとうございます!
やっぱりテンプレには浪漫が必要。
うん、大事。
ってことで次回も3日以内に!




