冒険者依頼と眼福
今回も閑話です。
リューたちのちょっとした1日。
*
「ねーリュースティア。明日はなにする予定?」
「いや、特に決めてない。」
屋敷でシズがそんなことを聞いてくる。
「だったらさ、少し付き合わない?」
「おー、いいぞ。また武器でも壊したのか?」
シズの用事なんてそのくらいしか思いつかない。
だがそれは言ってはならない言葉だったらしい。
言った瞬間にシズが見るからに不機嫌になった。
口を尖らせ頬を膨らませる。
かわいいんだけど次に来る攻撃を考えると素直に愛でられない。
「そうそう壊さないわよ!今回は武器屋じゃなくてちょっと冒険者依頼に付き合ってほしいのよ。」
ん、珍しいな?
いつもはリズを誘ってるのに。
「別に俺はいいけどリズとじゃなくていいのか?」
「なに言ってるの?お姉ちゃんも一緒に行くに決まってるじゃない。」
あー、ですよね。
俺と2人なわけないですよね、はい。
*
「あっ、リュースティアさん!こっちです。」
とりあえず各自準備ができ次第正門で待ち合わせをすることになった。
同じ家に住んでいるんだから一緒に行けばいいと思ったのだがなぜか待ち合わせをすると言ってきかなかった。
女の人は準備に時間がかかると思って適当に時間をつぶして来たのだが少し時間をかけすぎたみたいだ。
女の人を待たせるなんて最低だな、反省しよう。
「遅い!レディを待たせるなんてどういう神経よ。」
案の定シズに怒られた。
「悪い。それよりどんな冒険者依頼なんだ?」
素直に謝り今回の冒険者依頼の詳細を聞く。
実は今回がリュースティアにとって初めての冒険者依頼だったりする。
冒険者登録をしてからなんだかんだで忙しく冒険者らしい活動を一切していなかった。
もちろんエルランドとの修行の魔物退治を含めなければ、だけど。
「えっと、今回は魔物退治の依頼です。討伐対象は近隣の村に最近出没するという角蛇です。まだ人的被害は出ていないらしいんですけど家畜が食い荒らされたりしているらしくこの冒険者依頼が出されたらしいです。討伐ランクはBです。サイズや年齢でランクは上下するのであくまで目安ですが。」
聞いたことない魔物だな。
でも名前から想像する限り角の生えた蛇ってことかな?
それよりも、、、。
「討伐ランクってなに?」
「はぁ?ギルドから説明あったでしょ!全く相変わらず無知なんだから。それでどうやって冒険者やるつもり?」
はて、説明とは?
シズの話からすると冒険者登録をした日に説明があるらしい。
うん、俺聞いてない。
「討伐ランクは冒険者ランクと連動しているんですよ。Aランクの魔物を単独で倒せると判断された冒険者に同じランクが与えられます。なので討伐ランクによって受けられる冒険者依頼も決められているんです。冒険者の生存率を上げるための処置だそうで。もっともパーティに高ランクの冒険者がいれば話は別らしいですけどね。」
「いや、それだとEランクの俺らじゃBランクの冒険者依頼なんて受けられなくないか?」
俺たちは全員Eランク冒険者だ。
リズの話からすると俺たちがBランクの冒険者依頼なんて受けられなるわけないと思うんだが。
もしかしてヤバイ事してないよな?
「あんたなんか失礼な事考えてない?」
リュースティアの内心を見透かしたようにシズがそんな事を言ってくる。
まったく。
この姉妹は勘がよすぎると思うんだ。
「今回の討伐はギルドマスターからの指名依頼なんですよ。」
は?
ギルドマスターってこの前の無駄に口の悪いおっさんか?
俺らみたいな初心者に高ランクの指名依頼なんて俺らの事殺す気があるとしか思えない。
「それって俺らが受けて大丈夫なわけ?」
「さあ。ギルドマスターはあんたがいれば問題ないって言ってたけど?まあ何とかなるでしょ。それに角蛇ってすっごく美味しいらしいし楽しみね。」
シズ?
君、完全に目の前の人参につられてないか?
ま、毒とかは持ってないみたいだし蛇くらい何とかなるだろ。
*
「っ!おい、角蛇がこんなにでかいなんて聞いてないぞ!それに何体セットだよ⁉」
「あれ、言ってませんでしたっけ?角蛇は大きい個体だと全長5メートルはあるんですよ。リュースティアさん、頑張ってください!」
「奴らは蛇の癖に群れで行動するのよねー。ほら、次来てるわよ。」
聞いてねーよ!
つか2人とも他人事すぎるだろ⁉
参戦する気なしですか、、、。
そもそもなんですかその結界、俺聞いてない。
「あーもう!こうならやけくそだよ!やるよ、やりゃいいんだろ!【吹き荒れろ 風神】」
*
「ぜー、はぁはぁ。お、終わったぞ。」
「お疲れ様です。」
「遅かったわね。」
お、お前らなぁ!
リュースティアが満身創痍の体を引きずって2人の元に行くとそこには結界に守られた快適空間でくつろぐ2人の姿があった。
しかもシズに関しては居眠りでもしていたのか顔に涎のあとが残っている。
それを見たリュースティアは珍しく顔に怒りマークを浮かべている。
さすがのリュースティアも我慢の限界みたいだ。
あっ、これは不味いわ。
2人がそう思ったのも無理はないだろう。
「おい、俺はお前らの付き添いで来ただけだよな?なんでお前らがくつろいで俺が必死で働かないといけないんだ?無知な俺に教えてくれよ?なぁ?」
目が完全に逝っている。
確かにリュースティアの実力からすれば問題なく倒せる相手だった。
特にけがを負ったりすることもなかった。
それはいい。
だがなにせ敵の数が多すぎた。
さすがにリュースティアでもあの数は体力的にきつかったらしい。
「す、すいません!ちょっと悪乗りしてしまったというか、、。これも全部あの人のせいです!」
「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ!これは仕方がなかったというか、ちゃんと理由があるの!」
「ほう?じゃあその理由とやらを聞かせてくれるんだろうな?無知で馬鹿な俺でもわかるように、丁寧に説明してくれんだろ?」
理由があると言われても一向に殺気を収めないリュースティア。
このままじゃ完全に頭に血が上っているリュースティアに殺される。
そんな恐怖に駆られる2人。
「少し落ち着くの!【水風船】」
リュースティアが2人に掴みかかる前にそんな声と共に現れた水風船がリュースティアの頭の上で割れる。
どうやら物理的にリュースティアの頭を冷やそうとしたらしい。
「冷たっ。シルフなにすんだよ。」
「リュー、悪い子なの!女の子いじめたらだめなの。」
ん?
俺がなにしたって?
疑問に思いながらもシルフが指さした方を見る。
そこにはリュースティアと同じように頭から水をかぶった2人。
リュースティアの視線が濡れて体に張り付いた洋服から透ける物体にくぎ付けになる。
もちろん大事なところは見えていない。
、、、、眼福だ。
「「ヘンタイ!!!」」
その直後リュースティアの意識が途絶えたことは言うまでもないだろう。
結局この冒険者依頼の真相を聞くことを忘れていたことを思いだしたのは夜になってからだったが目の保養にもなったことだしチャラで良いだろう。
ちなみに角蛇はめちゃくちゃ美味しかった。
読んでいただきありがとうございます!
話の方は次回から進みます。
そろそろ本格的にケーキ屋始動!(予定)




