勇者と魔術師は欲しい未来を掴む
この話のためにラヴィ視点の話を改稿しております。申し訳ないです。改稿箇所は活動報告にのせております。
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モンフィスを脅し、バルバロスは全てが順調だと感じていた。
彼はサラリアを中心に置いている。あぁ、言えば失う未来よりも手元に置く未来を選ぶだろう。その未来はひいてはこちらにとって実に都合がいい結果になるはずだ。
サラリアはバルバロスにとって邪魔以外の何者でもない。しかし、ラヴィはサラリアに気を許している。ラヴィの前で彼女を殺せばラヴィの心の一部が死んでしまうだろう。それではバルバロスが我慢できない。
サラリアがラヴィの心の一部を拐っていくような気がした。死ぬまで刻まれるサラリアという刻印などいらない。
ラヴィの心を埋めるものはこの先、自分だけでいい。だから、彼女には生きてもらう必要があった。モンフィスも同様だ。
形はなんでもいい。人間の形を損なっても、息さえしていればいい。二人がどこかで生きているという証明さえあれば、ラヴィは安心して、バルバロスの方を向くだろう。
そう。
全ては順調だったのだ。
サラリアを庇い、魔王の最期の一撃をラヴィが食らう時、歪んだ笑みが出るほど、全ては順調にいっていると、バルバロスは思い込んでいた。
魔王の一撃を受けたラヴィは魔法が消えると女の姿になって気を失っていた。バルバロスはすぐ駆け寄り、体を抱きかかええた。男の時とは違うしなやかさがあり、それに喉がなった。
「ラヴィ……?」
声をかけるも反応はない。震える手で息を確かめる。ラヴィの体はあたたかく、胸に耳をあてると心臓の音が聞こえた。
――生きてる……
その事実に安堵した。
そして、バルバロス目は嬉々と輝きだし、笑った。
「くっ……ははっ……はははっ!」
たまらず昏い笑みが漏れだした。狂うほどの歓喜に呑まれていく。そして、バルバロスの様子を息を飲んで見つめていた二人に目線をやる。バルバロスの凶暴な笑みを見た二人はひゅっと息を飲んだ。
「帰るか……」
低い声で甘く言うと、二人は無言で頷いた。
バルバロスは興奮を抑えられずにいた。高笑いし続けたい気分にひどく苛まれた。血も逆流し続けて内に留めておけない。今すぐラヴィをめちゃくちゃにしたくなる。
高ぶる衝動を発散させようと、魔王城を出た後、バルバロスはラヴィを抱きかかえたまま魔法を唱えた。
「我に力を分け与えたまえ。破壊の精霊王。――デストリュクシオン!」
バルバロスの片腕から禍々しい黒い球体が出現して、竜巻のように轟音を鳴らし膨れ上がる。歪な球体を膨らませながら、バルバロスは目を見開き歯を見せて笑う。
「消えて無くなれ」
そして、腕を振りかぶり、魔王城をめがけてその凶悪な魔法をぶつけた。
――ドゴオオオオン!
土煙を立ち上がらせ、古城が脆くも崩れ去る。バルバロスの破壊衝動の前に呆気なくただの瓦礫と化す城を他の二人は何も言わずに静かに見ていた。
「……そこまでやる必要あるの?」
サラリアが声をかけると、バルバロスは、はっと笑う。衝動が発散され、熱は小さく暗く燻るまでに落ち着いていた。
「もう誰も使わないんだ。潰したところで問題はないだろ?」
そして、バルバロスは愛しそうにラヴィを見つめた。その眼差しは先ほどまで全てを破壊しつくした男がしているものとは思えないほど、甘やかだった。
近くの宿場町まで戻った一行は、ラヴィが起きるまで休むことにした。バルバロスはベッドにラヴィを静かに寝かせた。
さらりと前髪を払ってやると愛らしい寝顔が見える。それに目を細めた。
「ラヴィ……ラヴィ……やっと、俺のものになるな……」
愛しげに頬を撫でながら、バルバロスはその白い柔らかい頬に口づけを落とした。
その日のうちにバルバロスは婚姻届と指輪の作成にとりかかる。ラヴィの気持ちを無視した行動だったが、ラヴィと結ばれる未来しか見えていないバルバロスには自分の行動が常軌を逸脱しているとは思っていなかった。
躊躇なくラヴィの細い指から血を流し、血判を押した時、バルバロスの顔は恍惚と幸せに満ちていた。
全ては順調だった。
後はラヴィが目覚めれば、バルバロスが焦がれた未来が手にはいるはずだった。
しかし、ラヴィは一向に目を覚まさなかった。
一晩や二晩ならまだ呪いのせいだとも言えた。バルバロスもまだ幸せそうに眠るラヴィに付き添い、その寝顔を見続けられていた。
しかし、それが10日も続くと、バルバロスの中で焦燥感が募り始めた。
食事もまともに喉を通らず、ほとんど眠らない日々が続いた。ラヴィのそばを離れずただ呆然とその寝顔を見つめるバルバロスにサラリアが近づいて声をかけた。
「バルバロス……」
バルバロスはサラリアを昏い瞳で見上げた。その瞳には10日前にあった歓喜も希望も何もない。絶望しきった瞳。それすら気づかない瞳を見て、サラリアはひゅっと息を飲む。
「サラリア……ラヴィはいつ目覚めるんだ……?」
静な問いかけだった。ただラヴィが目覚めるのを待っているだけの体躯から視線を外し、サラリアは口ごもる。
「分からないわ……」
「分からないだと……?」
瞬きをせずにバルバロスはサラリアを見つめる。
「ラヴィは王家の血を引いてないから……そのせいかもしれないけど……」
その言葉にゆらりと、バルバロスの体が動き出す。生気に満ちていた顔は痩せこけ、見る影もない。バルバロスはサラリアの首を掴む。
「そんな話、聞いてなかったぞ?」
へし折りそうなほどの力で首を締め付けた。サラリアは圧迫に耐えきれずに、白目を剥きだす。
「バルちゃん、やめなさい!!」
モンフィスが間に入って止めにかかる。まともに食べてないバルバロスの力は弱く、モンフィスの力でも振りほどくことができた。乱暴に振りほどいたために、バルバロスの体は崩れるように床に座り込む。
ぴくりとも動かなくなったバルバロスを二人は固唾を飲んで見守った。
「くっ……ははっ……」
やがてバルバロスの肩が震えだし、暗い笑い声が木霊しだす。ぽたり。うつむいた彼から、熱い雫が落ちて、床を濡らした。何度も。何度も。
笑い声はいつまでも響いていた。
喉を詰まらせながらも笑う彼を二人は心痛な面持ちで見ていた。
ラヴィが目覚めずにもうすぐ1ヶ月が経とうとしていた。
バルバロスの手の中には婚姻届が握られていた。それを見つめ、バルバロスはその紙をぐしゃりと握り潰す。
――こんな証明書の為に、俺は何をしていたんだ。こんな紙切れ一枚の為に……俺は……ラヴィを……
「くっ……」
咽び泣きそうなのをこらえながら、バルバロスは何よりも欲しかった証明書を握りつぶしていた。そして、ラヴィが眠るベッドに顔を突っ伏した。
「ごめっ……」
ラヴィをこんな姿にしたのは自分のせいだ。自分が赤い目を開かせなくした。
深い後悔がバルバロスを襲い、涙となってベッドのシーツに落ちていった。
ラヴィと結ばれる未来が欲しかった。
誰の目も気にせず、誰に憚れることもなく二人で居られる未来が欲しかった。
でもそれは、ラヴィが赤い目を開いていなければ意味のないこと。
そんな当たり前のことに、バルバロスはようやく気づいた。
「ごめっ……ラヴィ……」
このままラヴィが目覚めなかったら、自分は自分の欲のままに、男のラヴィと過ごすことができた未来を潰したことになる。
選択肢を間違えたとバルバロスは思った。
「ラヴィ……!」
バルバロスは、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら顔を上げる。手から丸まった婚姻届が零れ落ちる。偽りの願いを捨て、本当に欲しい願いに手を伸ばすようにラヴィに触れた。
「ラヴィ……! 頼むから……目を覚ませ……!」
今度こそ、守るから。
何に変えても守りきるから。
だから……
赤い瞳を開いて、もう一度、自分を――
「っ……」
ぽたり。涙がラヴィの瞼に落ちる。それが合図のようにラヴィは瞼を薄く開いた。
赤い果実のような瞳がバルバロスを見つめる。
その瞬間のことを、バルバロスは何と例えたら分からなかった。全身が喜びを駆け抜けたとでも言えばよいのだろうか。
気がつくとラヴィの名を呼んで、力の限り抱きしめていた。
◇◇◇
その後、ラヴィは自分の体に困惑しつつも受け入れつつあった。バルバロスはよりラヴィを気遣い優しく接していた。ラヴィが動いて、話してくれることが何よりも嬉しかった。
まだ旅を終わらせたくないというサラリアの意向も特に疑問に思わなかった。
それほど、ラヴィが目覚めたことへの歓喜に満ちていた。
裏でサラリアが黒い感情を燻らせているとも知らずに。
それを知ったのは約1ヶ月の旅路を経て、あと一日で王宮へ付きそうだと言う時だった。
今日は絶対、ラヴィと寝るの!とサラリアが言って聞かないのでバルバロスは折れて好きにしろと言った。もうすぐ王宮へ着くから離れがたいのだろうという気持ちでいた。
満面の笑みではしゃぎだすサラリアにラヴィは苦笑いしながらも一緒のベッドの入り込んでいった。
はしゃぐだけはしゃいで寝付かないサラリアにモンフィスはダミ声で子守唄を歌いだす。
「モル! うるさいわよ」
「酷いっ! 心から歌っているのに!」
おいおいと泣き出すモンフィスにラヴィはしょうがないなと声をかけた。
「ほら、サラリア。オレが歌うから」
高くなった声でゆっくりとラヴィが歌いだす。それにサラリアは幸せそうな笑みを見せた。
「ラヴィ……わたくしのラヴィ……眠るまで歌っててね……」
小さな子供が母にねだるようにサラリアは金色の瞳にうっすら涙を浮かばせながらそう呟いた。
「あぁ、いいよ」
ラヴィは赤い目を細めて、歌を歌う。サラリアが目を伏せた時、はらり。一滴の涙が零れ落ちた。
寝入った二人に肩で息をして、バルバロスは布団をかけ直した。
それが終わると、ちょっといい?とモンフィスに呼び出され、バルバロスは二人が眠る部屋とは別の部屋に移動した。
「どうした?」
何気なしに声をかけて、はっとした。モンフィスは先程までの明朗な表情を消して、瞳に深淵を宿していたからだ。異様な空気を感じとり、バルバロスの表情が強ばる。
「どうしたんだ……?」
今度は低い声で尋ねた。モンフィスはバルバロスと対峙して端的にこれから起こる残酷な未来を告げた。
「王宮に着いたら、姫様はラヴィを殺すわ」
バルバロスの瞳が大きく開く。意味が分からずバルバロスの頬がひきつる。は?と声をかけるのが精一杯だった。
モンフィスは変わらない深淵の瞳で淡々とこの一ヶ月であった出来事を語りだした。
「姫様とアタシはね、旅路の一ヶ月の間に何度も王宮へ行っていたの。そこで、魔王の母体のその後の話を側近に術をかけて吐かせていたのよ」
「魔王の母体と種となる勇者は術者によって仮死状態にされ、そのまま魔物の巣窟へと転送されるわ。その先は分からないけど、たぶん仮死状態のまま交配させるんじゃないかしら」
バルバロスは眉間に深い皺を刻み、奥歯を噛みしめた。自分の不甲斐なさを罵るように側にあった机に向かって拳を振り上げた。
バキッ! 勢いのあまり机に穴が開く。
「くそっ……!」
そうだった。魔王の母体を手にしたら国は魔族に送るはずだ。分かっていたことを予期できなかった自分が腹立たしい。
怒りに漆黒の瞳を燃え上がらせていると、モンフィスは静かに続きを話し出した。
「落ち着きなさい。まだ終わりじゃないわ」
その声にバルバロスはモンフィスに視線を移した。
「仮死状態にする魔導師の目星はついていたわ。アタシのお仲間たちだからね。その一人一人にアタシが暗示をかけたのよ。仮死状態にするんじゃなく、本当に殺すようにね」
それにカッとなって、バルバロスはモンフィスの胸ぐらを掴む。
「どういうことだ!!」
モンフィスは動揺を見せずに淡々と語る。
「姫様はね。ラヴィを自分のものにしたかったのよ。自分だけのものにね」
モンフィスが語りだした。サラリアの歪んだラヴィへの愛情を。
――ラヴィと離れるなんてわたくしは耐えられないわ……あんなに可愛いのに。なんで手放さなくちゃいけないの?
――しかし、姫様。バルちゃんは、ラヴィを手放さないわよ? バルちゃんはラヴィが一番だから……
――手に入らないの? なんで? ナンデ?
――姫様……
――手に入らないなら……なら、誰にも渡さないわ……だって、他の人がラヴィを手にするなんておかしいもの……
――おかしい。おかしい。おかしい。おかしい。オカシイ。オカシイ。オカシイ。
――ラヴィはわたくしのよ?
サラリアは愛情を歪ませて壊れた。そして、ラヴィを誰のものにしないために殺す算段をしたのだった。
「殺してやる……」
それを聞いてバルバロスは、ひくりと笑いサラリアが眠るベッドに向かおうとした。
「落ち着いて。話は終わってないわ」
「落ち着けるか!! 今度こそ首をへし折ってやる!!」
向かおうとするバルバロスの肩をモンフィスが掴む。異様な力で止められ、バルバロスは殺意の籠もる眼でモンフィスを見た。モンフィスはゆらりと深淵の瞳を揺らして、口元に弧を描いた。
「その必要はないわ。姫様はアタシの懐に入れるから」
バルバロスが訝しげにモンフィスを見つめた。だらり、肩から手を放すモンフィスの顔には女性らしさがなくなっていた。
「あんたが言ったんでしょ? 鎖を引っ張ればご主人様は懐に入るって」
「……どういうことだ?」
「さぁ……自分でもよく分からないわ……」
モンフィスはバルバロスから視線を外してどこか遠くを見つめた。まるで、サラリアとの過去を惜しむように瞳を揺らして、伏せた。そして、再び瞳を開いた時、その中にはバルバロスに似た炎があった。
「欲しくなったのよ。欲しいものを欲しい形に得られる未来を」
「結局、アタシは男を捨てきれなかったって、ことでしょうね」
そう言って、モンフィスはこれからのことを話し出した。王宮に着いたらパーティーが開かれる。そこで出る料理は遅延性の眠り薬が仕込まれてるだろうと。バルバロスは強いため、意識を混濁させて仮死状態にするはずだ。だから、食べるふりをしろと。
王宮に着いたら形式的に謁見が行われる。王が甘言を述べるが、資金だけ手にいれろ。値段はいくらつり上がってもうなずくはずだ。どうせ後で回収するのだから。
仮死状態にする儀式は檻に入れて行われる。なので、眠いふりをして油断を誘え。バルバロスの意識が混濁しているのを見ればラヴィを先に仮死状態にする術をかけるはずだ。
「アタシを信じてっていうのも変だけど、少なくともアタシはね、あんたのこともラヴィのことも仲間だと思っているから」
その言葉は心から言っているように聞こえた。全てを話したモンフィスに警戒しつつも、いざとなったら、全てを破壊しつくしてラヴィと脱出すればいいと考えた。
「わかった……ひとまず、お前を信じる」
そう言うとモンフィスはいつものような笑顔を見せた。
◇◇◇
そして、謁見の間に呼ばる瞬間がきた。ラヴィの報償が読み上げられている間にバルバロスはがくりと座り込み、項垂れるふりをした。魔導師たちに見えるように。
ガシャン。檻に入れられた音がして、バルバロスは帯刀していた剣を握った。
「バルウゥゥゥゥ!! 目を開けろおおお!!!」
ラヴィが必死に自分を呼ぶ声が聞こえる。それに堪らなくなった。
こんなに求められいる声で呼ばれて、歓喜せずにはいられない。
振り返ると自分ばかりがラヴィを求めていたような気がする。
ラヴィが欲しかった。それしか願いなどなかった。
でも、本当に聞きたかったのは……
自分を求めるこんな声だ。
バルバロスは咆哮した。
それは始まりを告げる咆哮だ。
これからラヴィと作る未来への一歩となる叫びだ。
今度こそ守りきる。その誓いを守るためにバルバロスは剣を振るった。全ての枷を凪ぎ払い、ラヴィへと手を伸ばす。
あの日、スラム街から強引に連れ出した時と同じことをラヴィに突きつける。
「ついてこい!」
今度はラヴィが自分の意思でその手を取ってくれる。それに歓喜が全身を駆け巡った。
その手を引き、自分の胸に押し当てる。今度こそ手放さないように。二人で未来を作る為に。
脱出するために魔法を放つため、手のひらを上にかざした。
その時、不意にモンフィスと目が合う。
"全部、壊していいわよ?"
そう言われたような気がして、バルバロスは最強の魔法を唱える。魔王を倒したものだ。同時にモンフィスは唖然としているサラリアの手を掴んだ。自分の懐にいれるように。うっとりと微笑んで。モンフィスの口が動き、二人の体が光だす。覚えがある魔法だ。あれは防御魔法。
――そういうことか。
モンフィスの意図が分かり、バルバロスは笑った。
「――ラヴィ以外は死ねばいい」
「お前も同じ気持ちだろ? モンフィス……」
黒く稲光した魔法を放ち、バルバロスはラヴィを抱えて脱出した。
◇◇◇
その後、バルバロスは送金された金を全額別口座に移した。王宮破壊という混乱の最中だったため、それはいとも簡単にできた。そして、ラヴィを言いくるめて嫁にすることを納得させた。
手で握りつぶした婚姻届を見せる時、少しだけ苦い思いが去来する。
しかし、バルバロスは笑ってみせた。
幸福なのは違いないのだから。
「違うな。終わりよければ全て良しって言うんだ」
その言葉を真実にするためにこれからがあるのだとバルバロスは思っていた。
バルバロスはラヴィに黙っていることがあった。あえて伝える必要はないだろうと感じたものだ。
それは、サラリアたちのその後のことだ。ラヴィに見せた新聞には全員、無事との記事が書かれていたが、あれは古い記事だった。
後に見つけた記事には王の死と、サラリアの兄たちの死が伝えられていた。生前、サラリアに女王の座を譲ると明言していた王の意向に沿い、サラリアは女王となっていた。
しかし、サラリアは下半身不随となって車椅子に乗っていた。王宮大破の事故の為と書かれてあった。
車椅子にのり、王冠を被る彼女の瞳に狂気はない。金色の瞳は「これは取引よ?」と言っていた意志の強さがあった
彼女の横には幸せそうに目を細めるモンフィスの姿があった。
それを見てバルバロスは喉を震わせて笑った。
「それがお前の欲しい未来だったのか?」
「お前の執着心は俺以上かもな……モンフィス……」
かつての仲間が得た幸運に未来あれと、思いながらバルバロスは新聞を火の魔法を使って燃やした。
火の粉を舞い上がらせながら消える様を見届けてバルバロスはラヴィの元に戻った。
4話予定でしたがあと1話続きます。