白 邂逅②
〜プレイリー公園〜
男がゆっくりと距離を詰めてきた。逃げようにも囲まれているし、俺は座った状態から動けない、見えない力で抑え込まれているようだった。
「キミの活躍、見てたよ。やるじゃないか。でもあんな派手に能力を使っちゃだめよ。」
「俺を…殺すのか?」
「? あぁごめんごめん。」
男が指を鳴らすと、周りを囲んでいた男達が影になって消えた。同時に体が楽になった。
「キミの能力は移動系だろ?逃げられたくなかったんだ、ごめんね、苦しかっただろ?」
「なんなんだ、お前は?」
恐る恐る聞くと、男は笑って言った
「キミの仲間だよ。」
気がつくと空がほんのり赤くなり始めていた
「隣いいかい?」
「・・・」
返事なんて気にせず、おとこは腰を下ろした
まだこいつを信用していいか、分からない。少し距離を置いた。
「そんな怯えなくてもいいだろう?」
「・・・よく言うよ」
「はは、まぁそれもそうか。ほんとに悪かったって。」
男をじっと見てみた。黒髪で7:3分け、目が細く切れ長だが端正な顔立ちをしていた。あの目の隙間から覗いた″黒色″、見たことの無い色だった。
「あぁ…この目かい?やっぱり怖いよなぁ…」
やっぱりってことは自覚はあるのか…?
「ん?キミもしかして眼白くないの?」
「なんの事だ?」
男の顔が急に近づいてきた。思わず驚いて仰け反る。
「ちょ」
「うーん、能力によっては個人差があるのか?」
「ちょっと待て、話に全然ついていけない。」
男はふっと微笑むと
「いいよ、色々教えてあげる。」
と言った
「″能力持ち″に目覚めるとまず髪の色がそれぞれの″能力″に合わせて変化するんだ。これを第1段階って私は呼んでいる。この時はまだ使える能力に制限がかかっているようだ。次に第2段階なんだけど…、」
「…私の場合は、目の色が濃くなっていった。日に日に真っ黒になって…そのせいで…」
どんどん声が小さくなっていった。過去に何かあったようだ。
「とにかく君は″能力持ち″としてまだ未熟なんだ。そんなんじゃ、自分の身も守れないよ。」
「・・・まるで誰かと戦ってるみたいな言い方だな。」
「そう、それだ、キミが″組織″の存在を知らなかったのが非常に不味いんだ。」
「・・・組織?」
「俺達の″能力″を狙ってるやつらさ、みんなそうやって呼んでる。」
″能力″を狙う…俺達の孤児院を襲った奴らと姿が重なった。
「…ふむ、心当たりがあるみたいだね。」
「俺の家族をバラバラにしたやつかもしれない。」
「…そうか。」
少しの間沈黙が続いた。
「…しまった、私とした事が一番大事なことを知らせていなかった。」
「なんだ。」
「キミのあの能力、もし、万が一でも、組織のやつらに見られていたら危険だと思ってね。」
「俺を襲いに来るってことか。」
「もちろんそれもあるが…キミの家族を襲ったみたいに…」
…!
由美子さんとおっさんが危ない!
「だから用心して…え?」
すぐ行かないと…
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彼は突然勢いよく立ち上がった。
「ちょ、ちょっと!まだ話が!」
「行かなきゃ。」
そう呟くと彼が、そう彼自身が閃光のような″光″となった。
「これがキミの…」
光が強くなる。
思わず目を瞑る、次に目を開けた時には光の残像を残し、彼は消えていた。
はぁ…
「行き先も言わないで…」
取り残された男は、頭を掻いて再度ため息をついた。
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なんて事だ、白はとんでもない事件に巻き込まれようとしている。
早く伝えてやらないと。
資料室のドアを乱暴に開けて、俺は駆け出した。一刻も早く白のところに…!
「正義さん!」
仲間の警官に呼び止められた。
「なんだ!今俺は忙しいんだ!」
「消防からの連絡です…火事です。それも、場所が…」
「…な、に?」
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俺は立ち尽くすしかなかった
「遅かった…」
激しい炎を巻き上げて、もえていたのは、
由美子さんの定食屋だったーーー
まだ…生きているかもしれない…
俺は店の中に飛び込んだ。
激しい煙でむせ返った。視界が悪い…
だが
人の影が1つ、近くに倒れている人が2人ーー
目の前が真っ赤に染まっていった
「・・・殺す。」
体が光り始める、
「・・・、″白色″をおびき出せたぞ…了解、捕獲する。」
俺が身構えた時
影はもう目の前だった。
時間がゆっくりに感じた。
影は右腕を振り上げ、俺の体に向かってそれをーーー
腹に直撃、喉から何かがこみ上げてきた、と思っていたら
俺は扉をぶち抜け、外にぶっ飛んでいた。
集まってた野次馬は、みんな悲鳴をあげて逃げていった。
はは、笑っちゃうよな。
何でこんな目にあってるんだっけ。
俺、なにかしたっけ…確かに人よりは怠けてた。でも決して悪い人間ではなかったと思ってる。人を思いやる気持ちだってあった、こんな髪の色になってから大変だったんだ…?いくら元の色に染め直したって意味がなかった…周りから白い目で見られるし…笑ってくれよ、体を張ったジョークなんだぜ?…必死だったんだ、周りに合わせるので精一杯、自分を出そうなんて思わなかった。どこに居たって俺は異常だった。
孤独だったーーー
影が近づいてきた、サングラスに黒スーツ、イメージまんまのエージェントって感じの男だ
これが黒臣のいってた組織の奴らか…
くそ….だんだん痛みがハッキリしてきた…
「・・・制圧した、なに、戦い慣れていないやつだったからな、今から連れて帰る。」
手が伸びてくる、ちくしょう、せっかく手がかりを掴んだのに…
「やめろおぉぉーー!」
何かが突進してきて、男の胸ぐらをつかんだ。
そのまま潜り込むように体を沈めて、
「おるぁぁああ!!!!」
男が向かいの家の外壁まで投げ飛ばされた。
「大丈夫か?白…」
おっさん…
叫ぼうとしても声が出ない…
「おっと無理すんじゃねぇよ、さ、立てるか?」
おっさんが助け起こそうと近づいてくる。
おっさんの背後に影が…手にはロープ…
危ない…おっさん!!
「ぐっ…!」
おっさんの体が宙に浮いた。
また時間がゆっくりに感じた
ロープがおっさんの首を絞めあげる。男は力をさらに加え続ける。
このままでは
俺が、助けないと…
ーーー体から小さな光が飛び出した。
欲しいな、あれ。ーーー
頑張って覚醒した白の戦闘シーン書きます…