動き出した時間
千景は学校の休日に小さめのリュックにスポーツドリンク二本とタオル・財布・携帯を入れて電車という交通機関を利用して自宅から10kmほど離れた河川敷を訪れていた。
この河川敷は家から見て学校の反対方面に位置していて、この河川敷に千景が意識して来たのは初めてである。
意識して来たと言ってもこれといって理由があったわけでなく、勉強の息抜き程度に散歩しに来ただけである。
千景の通っているタカセ大成学校は日本でも学力の高さで有名な進学校の高校で土曜日まで学校がある寮生活が可能の学校である。
タカセ大成学校は有名な進学校ということもあり、規則正しい生活を義務付けられるため、寮生活をしてる生徒で日曜日に校外に出る生徒は少ない。
タカセ大成学校は全寮制ではない為、千景は1年生になる時に、親戚の人が引越しをするということで、両親にお願いして親戚の人と交渉をしてもらい、学校からバスで15分に位置している親戚が元々住んでいた家を取り壊さないで、千景が高校に通う3年間は千景がその家に移り住むことになった。
千景が今、歩いてる河川敷は車の行き来も少なく、散歩で歩く人もほとんどいない。
そのせいか、誰とも挨拶をせず、一人河川敷を歩いていると、河原の方でホームレスの人達が生活をしていたが、よく見ると、川を挟んで向かい側で一人でいる子も見えた。
千景はそれがなんだかとても気になって、芝生を坂を下った河原で生活しているホームレスの人達に聞いてみた。
ホームレスの人達の話を聞くと川を挟んで向かい側で生活している子は如月といった名前の女の子で5歳の頃からで約12年間この河原で生活をしていることが分かった。
そして、千景が彼女が川を挟んで向 かい側の河原で一人で孤独に生活している理由を聞くと、今は風邪を引いて熱を出してしまい、他のホームレスの人達に移さない為、川を挟んで向かい側の河原で生活をしていることも分かった。
千景は話を聞いてる間も彼女のことが気になって仕方がなかった。
彼女、如月が千景と同年代でありながら、千景と無縁の生活をしていることについてなぜ興味が湧いたかは千景自身分からない。
千景は如月のことについて教えてくれたホームレスの人達にお礼を言い、如月の元へ向かうことにした。
千景は橋を渡り、芝生の坂を下る前に一度深呼吸をした。
千景は呼吸を整えてから芝生の坂を下った。
芝生の坂を下り終え、如月の目の前に来た。
如月はちょうど、千景がいる反対方向を向いていた。
そして千景は、
「如月さん?」
如月のことを呼んだ。
彼女はそれに反応してこちらを振り向いた。
その時に、正確には、彼女と目が合った時、千景の中で止まっていた何かが動き出した予感がした。