再会、そして……
レッタのおかげで復活した私は、かたっぱしから仕事を片づけた。本格的に利人を探すなら、長期の休暇がいる。そのために、ある程度までは仕事を片づける必要があったし、希少な薬草の世話を引き継がなくてはならない。
ある程度の目処はたった。明日には休暇がとれそうだと考えつつ、いつも通りコンラッドの昼食を持って人気のない裏庭へ行く。
「あ」
私を見つけて穏やかに微笑むコンラッドにキュンと……ん?
私はコンラッドの顔を両手で挟んだ。そして、彼の顔を観察する。
「ちょっ、なななななな!?」
「コンラッド、観察中ですからうるさいとディープキッスの刑に処します」
「!?いやむしろご褒美…いやいやいや!なんで急にんんんんん!??」
うるさいのでディープキッスの刑を実行した。しばらくジタバタしていたが、上手く呼吸ができなかったらしく気絶した。丁度いいのでここぞとばかりに観察し…私は結論した。そして、縄を取り出した。
「ん……」
ダーリンが目を覚ました。丁度準備が終わったところなので、私は機嫌よく彼に話しかけた。
「ダーリン、おはよう」
「おは…よう?」
まだ寝ぼけているダーリンにキスをする。そこでようやく目が覚め、自分の状況を把握したらしい。
「な!?なんで裸!?しかもダーリンって何!?う、動けない!??」
裸で亀甲縛りをされているので動けないマイダーリンに、私は機嫌よく教えてあげた。
「逃がさないため。貴方は私と結婚するの。約束、したでしょう?」
彼の目前に大事な未来の約束の証がはまった指を見せる。どうにか縄をはずそうともがいていたダーリンはおとなしくなった。
「……え?その、指輪……まだ、持ってて……」
瞳を潤ませるダーリンの額にキスをしたら、きゃあと言われた。可愛い。
「ダーリン…悲しいけど浮気は許してあげる。だから今すぐ結婚しましょう」
「…………………はい?」
「まあ、では今すぐこちらにサインして!ああ、他に好きな女がいるのよね?先に始末と調教が必要かしら」
「は、はいぃ!??始末!?調教!??」
当然じゃないの。何を驚いているのかしら。ダーリンは私の夫になるんだもの。解りやすいよう説明してあげた。
「ええ。ダーリンは私だけを愛さなきゃダメなの。だから障害を取り除いて、ダーリンが私以外に反応できないように念入りに調教しなきゃ!先ずは鞭?それとも蝋燭??ああ、楽しいでしょうね…ダーリンが泣きながら私に許しを乞うのは」
「ぬな!?マカラちゃん、やめて!!」
「わかったわ」
あっさり鞭と蝋燭をポイ捨てした。
「へ?え…えっと…逃げないから服が欲しいんだけど…」
「それはダメ。ダーリンの対応次第で既成事実を作る予定だから、服は邪魔だもの」
「せ、せめて股間を隠したいんですが!」
「そのぐらいならまあ、いいわよ」
そっと毛布をかけてあげた。ダーリンはなにやらモジモジしている。
「マカラちゃん…いつ気がついたの?その指輪を君に贈ったのは『コンラッド』じゃない」
「ええ。私と結婚の約束をしたのも『コンラッド』じゃないわね。約束をしたのも、指輪をくれたのも『利人』だわ」
「今の僕は以前と似ても似つかない…なんで!?いつ気がついたの!?」
私はクスクス笑った。考えてみれば、簡単なことだわ。私の魔法は完璧だったのだ。
「ごめんね、利人。いいえ、リヒャルトかしら?私は私に魔法をかけて貴方の記憶を封じたの。ようやくその魔法が解けた…それだけのことだわ。空色の瞳も、髪も変わらない。ちょっと太ったぐらいじゃない」
リヒャルト=コンラッド。それが私の愛した利人の本名だ。ようやく思い出せた。
「いやいやいや!ニキビもあるし、汗っかきだし、臭そうじゃない!昔みたいに美少年じゃないし!そもそもちょっとどころじゃないデブだし!!」
だからなんだと言うのか。全く問題ないだろう。ニキビなら治してあげるし、汗っかきなら汗を拭いてあげたい。治せなくもない。体臭は食事療法かしら。肥満も治せるし一石二鳥ね。
「そりゃ、色々変わっているけど…何か問題が?」
そんな事を考えながら首をかしげた。後は、彼の現在の想い人ね。さっさと処分しなきゃ。
「こんな醜い僕じゃ、マカラちゃんに釣り合わない!」
コンラッドが泣いた。どうしよう。どうしたらいいのだろう。
「…私はリヒャルトが醜いなんて思ってないわ。周囲の目が気になるなら、どっか山奥で暮らしたらいいわね!二人きりで山小屋暮らしなんて、楽しそうだわ」
これはとてもいい案ではないだろうか。誰も来れないような未開の山奥で二人暮らし。とても楽しいだろう。
リヒャルトは泣き止み、目を真ん丸にしている。
「…コンラッド、利人、リヒャルト……私は寂しかったわ。耐えられなくて、貴方の記憶を封じたの。そして、いつか貴方に会えたなら…解けるようにしていたのよ」
「マカラちゃん」
「姿なんてどうでもいいわ。貴方が貴方ならそれでいいの。だから…私といるって…もう離れないって、言って!」
ぎゅううっとコンラッドにすがりつく。
「じゃないと、拉致監禁して調教してするから!」
でも、リヒャルトに嫌われたくない。痛いことはしたくない。こぼれた涙をリヒャルトが優しく拭ってくれた。
「いや、そこまでしなくてもずっと一緒にいるよ。今度こそ約束を守る。マカラちゃん…ずっとずっと、大好きで…今も君が好きで仕方ない。何も言わずに君の前から消えた僕が君のそばにいる資格なんてないって悩んだけど…君といると、どうしようもなく幸せなんだ」
「リヒャルト!」
彼に甘えて頬ずりをする。
「…で、そろそろほどいてくれない?服もください!」
「え~」
この生肌、もちもちしてて触り心地がいいからもう少し触りたい。
「いやああああ!?どこ揉んでるの!??」
「胸。なかなか巨乳ね」
「きゃああああああああああああああああああああああああ!?」
リヒャルトに珍しく本気で叱られた。私のとどっちが大きいか比べたいと言ったら、さらに叱られた。
仕方なく縄をほどいて服と下着を返却したのだった。もう少し堪能したかったのに、残念。




