続・お気遣い従者の暗黒時代
ファンデ視点になります。
クレストさんから『続き』をされてから、記憶がない。気がついたら、自室のベッドで寝ていた。自室に自力で戻った記憶がないので、どうやら気絶したらしい。
「我ながら軟弱な…!」
いや、しかしあれは仕方ないと思うのだ。耳と首すじを舐められて、ゾクゾクした。しかし、私を気絶させたのはその感覚ではない。
『…男の前でそんな顔してると…食べちゃうよ?』
『そーいや、さっき続きするって言ったよな?』
クレストさんが…エロい!
エロかった!
エロ過ぎた!
エロエロだった!!
にぶい私でもわかるぐらい色気…色気ぐああああ!!
「うぬあああああああ!」
うっかり色気ムンムンのクレストさんを思い出してしまい、しばらく布団で悶え転げる羽目になった。そう、私はクレストさんの凄絶な色気に当てられて気絶したのだ。
どうなってんだ、あの人。優しくてかっこよくてエロいとか、反則だろう。捕縛対象だろう。私の婚約者様が素晴らしすぎて辛い。
いくら悶え転げても私の嬉しさと恥ずかしさとトキメキは微塵もおさまる気配がない。さらに、もしかしたら抱っこされて運搬された可能性に気がついてしまい、悪化して転げ回り続けた。
数カ所体当たりして部屋に穴が空いてしまった。部屋にいると余計にクレストさんについて考えてしまうので、仕方なく散歩で気分転換をはかることにした。
「あれ?」
「あ、こんにちは」
確かクレストさんのお兄様だ。礼をとると、これはご丁寧にと礼を返してくれた。
「うんうん。素直ないい子だね。クレストの昔話を聞きたいかな?」
「聞きたいです!」
お兄さんは今日聞いたばかりのクレストさんの昔話をしてくれた。
大筋は同じだが、ちょっと違った。
本人から聞いた通り尖っていたクレストさん。だが、本人の話と違い手当たり次第ケンカをふっかけていたわけではなかったそうだ。
「なんつーか、潔癖な部分があったんだろうなぁ」
騎士に夢を見すぎて、現実を受け入れられなかったのだろうと語る。ソルレイク騎士団は今でこそ実力主義になったが、それまでは恥ずかしながら貴族のせいでどうしようもない状況にあったのだとクレストさんのお兄様は語った。
まだ若かったクレストさんは、その理不尽に真っ向から立ち向かったのだという。
「今のあいつならもっと上手い手段を使っただろうけど、昔のあいつは本当に直球勝負だったからねぇ。結構危ない橋を渡ってたんだよ」
バングナルト様やリストバルト様、クレストさんのお父様やお兄様が影で奔走するのも少なくなかったそうだ。
「ま、おかげで騎士団の膿は出せたけどね。あいつが派手に動いたおかげで、私達も動きやすかった」
クレストさんのお兄様はとても賢い人であるようだ。近衛騎士解体についてはお兄様達の暗躍もあったのだろう。
「だから、元一般騎士達や下級貴族の騎士はあいつを慕う。あいつはソルレイク騎士団の英雄なんだよ。本人は否定するけどな」
「ああ…」
確かにソルレイク騎士団の人間はほとんどがクレストさんに心酔している。ようやく合点がいった。
真っ直ぐ理不尽に立ち向かうクレストさんはさぞやかっこよかったことだろう。強さだけではなく、その潔癖な信念に騎士達は憧れを見た。
彼こそ『私がなりたかった騎士』そのものだ。
ただ強いだけじゃない。大切なものを守るために戦える、かっこいい人。それが騎士だ。今は従者だが、その心根は変わらず騎士のまま。
私はやはり、見る目があったらしい。クレストさんを想って自然と笑顔になる。
「君には感謝しているよ」
クレストさんのお兄様が穏やかに笑った。
「はい?」
「近衛騎士解体後、あいつは目標を見失ってぬけ殻みたいになっていた。それを復活させたのは…剣聖ファンダル=ウェルス…君だよ」
私自身、そんなに大層な事はしていない。でも、クレストさんは私のおかげで目標を思い出せたと礼を言った。
「クレストさんは…私がいなかったとしても、いつかきっと立ち直って今のクレストさんになったと思う」
うん。クレストさんは忘れていただけだ。だから時間がかかっても、きっとまた見つけたはずだ。
「でも、私が少しでも彼の助けになれたというのなら…こんなに嬉しいことはない…です」
心があたたかい。
嬉しくてしかたがない。
彼への想いが湧きだすかのようだ。とても幸せだ。
「君達は本当にお似合いだね。そういうわけでクレストには敵も多い。気をつけてね、と言いたかったんだ」
「ありがとうございます」
クレストさんのお兄様はとてもいい人だった。
クレストさんにそう言ったら、騙されてない?大丈夫!?とものすごーく心配された。
そしてそれを見てお兄様が爆笑して、クレストさんに追いかけられていた。
ムキになるクレストさんは珍しくて、面白かった。




