お気遣い従者と家族
ファンデちゃんと自宅に入り、執事に案内されて食堂に通された。すでに家族は揃っていて、ファンデちゃんが緊張した様子だ。緊張するファンデちゃん、可愛い。
ちなみにうちの家族は両親と兄、三人の姉。俺は末っ子だ。兄は既に結婚してて子供もいる。姉達に妨害されないよう、留学中に婚約・結婚したそうだ。
「お帰りなさい、クレスト。まああ、その子がお嫁さん?」
どうやら母はファンデちゃんが気に入ったらしい。可愛いもん大好きだからなぁ。連絡の手紙をあらかじめ寄越しておいてよかった。
「ああ。ファンデ=ウェルス嬢だ。一応国賓でもあるから、く・れ・ぐ・れ・も!失礼がないようにね」
特に、最終兵器彼女共。軽くこっちを睨んでいたのでファンデちゃんから見えない位置に移動し全力で睨みつけた。あ、ビクッてなった。
「いや、今は国賓扱いではないのでは?私はこの国の騎士籍にいるだろう」
「正確にはまだ国賓扱いだよ。向こうの貴族籍を返還してないから。俺と結婚したら完全にソルレイクの人間になるけどね」
「なるほど」
素直に頷くファンデちゃん、可愛い。俺の嫁は素直だな…嫁……いい響きだ。
※まだ結婚してないので、正確には婚約者候補です。
「そんなことも解らないなんて馬鹿じゃな~い?」
「だよねぇ」
「ああ」
おい、ババア共。注意したそばからどういう了見だ、ゴルァ!俺が殺気をこめて睨みつけると、兄がフォローした。
「空気を読めずにディスるお前らの方が馬鹿だろう。冗談じゃなくクレストに殺されるぞ。あいつ、今までの相手と違って本気なんだってなんで解んないかなぁ」
「いや、私が無知なのは確かだ。己の事なのに知らないなんて愚かだ」
ファンデちゃん、真面目!そんな彼女のフォローにババア達が調子に乗った。
「つーかさ、騎士服で来るとかウチを馬鹿にしてんの?」
「女の子なのに騎士とか、他にも男を探してんじゃなぁい?」
「自分がクレストに相応しいと思ってる?」
よし、その喧嘩買った。ファンデちゃんは悲しげに俯いている。許さない。
「わかった。父さん、俺を勘当してください」
『は?』
全員が固まった…いや、兄だけは爆笑してた。
「俺、この人達ともう家族でいたくありません。だから、出ていきます。貴族籍無くてもバングナルト様がどーにかしてくれるし、仕事もあるんで問題ありません。俺の可愛い嫁をイビる小姑と今後一切の関わりを断つためにも、お願いいたします」
俺は真顔で言い切った。両親は苦笑。兄はまだ爆笑している。
「何を言ってるの!私達家族よりその子を取るつもり!?」
「うん」
俺は真顔だ。もうさ、我慢の限界なんだよ。俺さ、多分今回初めて本気で好きになったんだ。だから、もう許さない。姉さん達を甘やかしてたけど、やめる。
「それから、騎士服は礼服の類いだからおかしくないし、急にうちに挨拶に行くって決めた。だから責められるべきは俺の不手際」
「いや、私は」
「ファンデ、いい子で黙っていて。俺は可愛い嫁を貶められて怒っているんだ」
「よ、嫁………」
「ね、おりこうさんでいたらキスしてあげる」
「わかった!黙ってる!」
そんなにキスしてほしいんだね。俺の嫁が可愛すぎる。とりあえずデコチューで我慢した。
「それから、ファンデが男漁りしてるって?お前らじゃないんだから、するわけねーだろ!騎士団でやらかしたこと、全部聞いてるからな!騎士団は大半俺がぶちのめしてるから舎弟みたいなもんだし、俺が気にいってんの知っててファンデに手を出す命知らずはいねぇっての!!」
「……そうなのか?」
「昔、クレストはやんちゃでねぇ。今はだいぶ丸くなったんだよ」
おい、兄。余計な情報を可愛い嫁に吹き込むんじゃない!
「………そうなのか。カッコいいな!」
「ぐふっ………いや、お似合いだな!君ら」
ナイス、ファンデ!そこ喜ぶとは思わなかった!昔はかなりアホだったから、武者修行とかして騎士団全員ぶちのめしたりしました。バングナルト様がアヒルになるよりもっと前の話だ。
「大体、あんたらはアポ無しでバングナルト様の執務室に来たあげく、仕事中のファンデを邪魔しやがって……常識無いのはお前らの方だ!恥を知れ!!自分達が結婚できないからって僻んでねーよ!!そんな性格だから結婚できないんだよ!!」
「そんな…」
「ひどい…」
「うっ………」
最終兵器彼女は全員泣いた。
「クレストさん、言い過ぎだ」
「ファンデ…」
「やり方はまずかったかもしれないけど、お姉さん達はクレストさんが大事だから取られたくなかったんだよ。だから、怒らないで。お姉さん達はクレストさんが大好きなんだよ。たくさんクレストさんがすごいって話をしてくれたよ」
嫁の可愛さにより、怒りが鎮まっていく。
「だからってファンデを貶めていい理由にはならない。姉さん達、これが最後だ。どうする?」
「…ごめ……」
「聞こえない」
「うわああああ!ごべんなざぁぁい!!」
「ごべんなざぁぁい」
「ううう…ごめん………」
姉達が泣き出した。大変見苦しい。ファンデちゃんは呆れて…ないな。オロオロしてる。天使か。
「あの、えと…取られるんじゃなく、増えるのはダメか?…じゃなくて、ですか?」
「ふぇ?」
「家族、増えるんだ…じゃなくて、です。私が、お姉さん達の妹になるんだ」
「「「…………………」」」
ヤバい。俺の嫁は天使だった。優しすぎる。
「しょ、しょーがないから妹にしてあげるわ!」
「妹…可愛い妹、欲しいぃ」
「………妹、か」
そして、うちのババア達と母はすっかりファンデが気に入ってしまった。
ファンデは俺のなのに連れていかれてしまった。ご褒美のチューとか色々色々したかったのに!
「しかし、クレストの嫁って本当にブリザードワイバーンの群れを一人で殲滅したの?」
「マジ」
この目で見ました。そして食べました。美味しかったです。
「…そうか………」
「俺、頑張っても勝てる気がしない」
卑怯な手段ありなら……イケるかもしんなんけど、正攻法だと完全に不可能だな。ストロングファンデ出されたら、軽く死ぬわ。
「そうなのか!?」
「マジで!?」
「そもそも、一体ならともかくブリザードワイバーンの群れになんか俺じゃ勝てねーから!」
そんなしょうもない話をしていたら、妖精さんが現れた。
「クレストさん……?」
ファンデは美少女だ。すっぴんでも素材がいいから可愛い。可愛い美少女が、お洒落をしたらどうなるか。
答えは、とんでもなく可愛くなるである。
「母さん、姉さん、ありがとう。俺、今からちょっとファンデと旅に出る」
『落ち着け』
「落ち着けない!ファンデが可愛い!最初から可愛かったけど、ありえないぐらい可愛い!とりあえず独り占めして堪能する!!」
「…内面と実態を知った上で私を可愛いと言うのは、クレストさんぐらいだ」
「いや、ファンデは可愛い!俺の嫁、世界一可愛い!!周囲の見る目がないだけ!!」
「……嬉しい。クレストさん、どこへだってついて行くぞ!」
「よっしゃ!!」
『だから落ち着け』
こうして、ファンデはうちの家族に受け入れられ、婚約の書類に無事サインをもらえたのだった。




