天然の戦い
クレスト視点になります。
ガタゴトと揺れる馬車の中にファンデちゃんと二人きり。あれから貸し馬車を手配しようとしたら家から迎えが来ていた。
ほぼ勢いで連れてきてしまったが、ファンデちゃんにもう一度…最終確認をした。
「ファンデちゃん、本当に俺と結婚してくれる?」
「ああ!クレストさんと結婚するぞ!」
やべえ……俺幸せ過ぎる!こんな若くて可愛い素直な子が俺の嫁に?
「た、ただすぐには無理だから婚約期間を経て結婚になる。ファンデちゃんが好きで、ちゃんとしたいからなんだけど…それでいい?」
貴族の結婚にはどうしても柵が付きまとう。結婚しま~す、はいオーケーとはならないのだ。互いの家や親戚を呼んだりせねばならず、俺たちぐらいの年齢だと婚約期間はそのまま結婚準備期間になる。
「私はかまわないぞ」
彼女の意思も確認した。後は俺が腹をくくるだけだ。そう思ったら馬車が止まる。どうやら到着したらしい。
彼女にエスコートなんて不要だと誰より知っているが、手を差し出した
「…お手をどうぞ、俺のお姫様」
ファンデちゃんは手を取る姿勢で固まった。いや、自分でも今の台詞はくさいと思ったよ。
「ちょ、ファンデちゃん!?」
そして彼女がふらりと倒れた。さらに驚く。
「熱っ!?」
慌てて魔法(正確にはバングナルト様にもらった魔石)で冷却してやったが、茹でダコみたいに真っ赤だ。
「ら、らいりょうぶ…クレストさんがかっこよすぎて……ふぬああああああ…」
明らかに大丈夫じゃねーわ。知恵熱かなんか??
別に紹介するのは今日じゃなくてもいい。彼女を抱き上げて馬車に戻ろうとしたら、激しく抵抗された。
「や、やだ!」
「いや、ファンデちゃん体調悪いんだろ?家族に紹介するのは今日じゃなくてもいいから」
「ちが、違う!体調は悪くない!クレストさんがかっこよすぎただけだ!!」
「……………はい??」
この平凡で地味な俺が?
冴えないモテない俺が??
「こんなガサツで可愛くない私だぞ!大好きな人から『お手をどうぞ、俺のお姫様』なんて言われてみろ!!イチコロだ!!」
「…………え??」
よくわからんが、恋人の欲目フィルター+ファンデちゃん的ストライクのコンボで彼女をイチコロにしたらしい。
「つまり、熱じゃなく照れ?」
「そ、そうだ!」
「わかった。じゃ、行こっか」
確かに、今は落ち着いたのか赤くないし熱くないわ。お姫様抱っこのまま屋敷に入ることにする。
「ちょ、ちょっと!クレストさん!?歩ける!下ろしてくれ!!」
「こらこら、暴れないの。あんまり暴れると…お兄さんがイタズラしちゃうよ?」
首筋をペロリと舐めたら、首をおさえて真っ赤になり固まった。いやあ、ファンデちゃん超可愛いわ。むしろ暴れてくんないかな?もっとイタズラしたいなあ。
しかし、残念ながらファンデちゃんは両手で顔を覆ってプルプルしていた。
「…クレストさんがかっこよすぎて辛い…これが大人の色気というものなのか…」
うん…ファンデちゃん。地味平凡なお兄さんは、かっこよくもなきゃ色気もありませんぜ?
「いやはや、坊ちゃんも大人になられたのですなぁ。こんなに可愛らしいお嫁さんを連れてくるなんて…仲睦まじいようで何よりです」
御者はガキの頃から俺を知ってるおっさんだった。ファンデちゃんが瞬時に俺の腕から逃れ、敬礼した。
「お見苦しい所を見せて大変申し訳ない!!」
いや、本当にファンデちゃんはアンバランスだし見てて飽きねーわ。
「いえいえ。坊ちゃんは少々やんちゃであまり素直ではありませんが、根っこは優しい子です。坊ちゃんをよろしくお願いいたします」
「ああ、全力でクレストさんを幸せにしてみせる!しかし、クレストさんはやんちゃじゃないぞ。大人で優しいんだ!頭もいい!」
いや、やめよう。やめてください、ファンデちゃん。ほぼ身内みたいなおっさんの前でべた褒めしないで!
「おやおや、そうでしたか。これは失礼。坊ちゃんは本当に大人になられたのですなぁ…私も年を取るわけだ」
おっさんは穏やかに笑っている。
「お嬢様、お名前をうかがっても?」
「ファンデ=ウェルスだ。これから、よろしく頼む」
「ファンデ様ですな。こちらこそよろしくお願いいたします」
おっさんは御者…うちの使用人だから挨拶する必要なんかない。自然と人に上下をつけないファンデちゃんは、やっぱいいなって思う。
「じゃ、そろそろ行きますか…俺のお姫様」
さりげなく手を取ると屋敷に向かった。ファンデちゃんは真っ赤になってぎこちなく歩いている。お姫様扱いに慣れてないのだろうか。明らかに動揺した様子だ。 彼女を動揺させられる事に喜んでいる自分に気がつく。ガキみたいだと思いつつ、悪くはなかった。
無意識にファンデにクリティカルを与えるクレストでした。




