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強いひと

 イーリ視点になります。

 初めて会った異母姉は、意地悪で最悪だった。流石は悪役令嬢だと思った。やられっぱなしな私ではない。根回しして全力でやり返してやった。


 結果、異母姉は全てを失った。後は死を待つばかり。でも本当にそれでいいのか、迷った。


 異母姉に嫌がらせされたり唯一の家族だった母を馬鹿にされたのが許せなくてやったことだけど、死に追いやる必要があったのか…ここまでやる必要があったのかと悩んだ。

 私はこの世界が夢物語でも、ゲームでも、よくある異世界トリップでもなく『現実』なのだと理解していた。私がしたのは間接的とはいえ人殺しなのではないかと何度も考えた。


 そして、アイラに嵌められて隷属させられた時…どこかホッとしていた。


『これは罰なんだ』


 異母姉を嵌めたから、嵌められたんだ。悔しいし悲しかったけど、どこかで納得していた。



 隷属させられたとはいえ、意識はあった。家から見捨てられた異母姉は、当然虐められていた。そんな異母姉をなんとなく眺めていた。罪悪感を感じて辛かったけど、眺めていた。


 異母姉をあっけなく救ったのがルージュたんだ。

 彼女は名は体を現すと言わんばかりの…深紅の薔薇が似合いそうな容姿だった。真っ赤な口紅もきっとよく似合うだろう。

 しかし、その外見とは裏腹に、ルージュたんはアヒルを愛する素朴な女性だった。ルージュたんはあっさりと異母姉の立ち位置をひっくり返した。異母姉にあんなに嫌われていたのに、あっさり仲良くなってしまった。様々な仕掛けもほぼ無効化された。


 ルージュたんがソルレイクに来たときには、私は既にアイラによって隷属させられていた。だから、私の意思で彼女に接したのは一回だけだ。


 私は彼女に賭けた。助けを求めるなら…本当ならお兄ちゃんにすべきだったと思う。お兄ちゃんは何度も私を救おうとしてくれた。でも私はお兄ちゃんに助けを求めなかった。巻き込みたくなかったし、アイラがお兄ちゃんに何をするかわからないから。アイラはお兄ちゃん達を『攻略対象』『ゲームのキャラ』としてしか見てなかったから。


 それに、私は彼女に賭けたかった。その結果、私は賭けに勝って自由を手にしたのだ。


 でも、まだ迷っていた。迷った結果がこれだ。私は隷属の首輪を再反転され、アイラに使われている。魔力と命が削られていくのが解るが、何もできない。


 お兄ちゃんが泣いてる。でも、どこかで仕方ないって感じてる。だって、私はアイラを見捨てようとしたんだから。自分が助かるために、見捨てようとしたんだから。


 隣室にいた異母姉は無事だったらしい。往生際が悪いと思いながらも、お兄ちゃんだけは助けたくて懇願したが断られた。

 さらに私の状態に気がつくとお兄ちゃんにルージュを呼びに行かせた。呪いに介入して私を守った。


 理解できなかった。異母姉を殺そうとした私を、なぜ助けるのかとたずねたら、彼女はアッサリと答えた。


「一発殴ってチャラにしてやるって言ってるの。殴るためにはあんたがピンピンしてないと困るのよ」


 知らなかった。私の異母姉、めっちゃ男前だった。


「ルージュを待つ間、暇だわ。あんた、なんか面白い話しなさいよ。そうね、うちに来る前がいいわ。庶民の暮らしってどんな感じなの?」


 術式を固定させて余裕ができたのか、初めて話をしろと言われた。


「ちょっ、この状況で面白い話しろとかどんな俺様ですか!?」


「オレサマ?私はあんたのお姉さまよ」


「ぶはっ!やっべ!お姉さま面白い!!」


「そう。よかったわね」


 知らなかった。私の異母姉…お姉さまはこんな面白いひとで、こんなに優しく笑うなんて。

 ルージュたん、ありがとう。私、このひとを殺さなくて良かった。


 求められるままに、大好きな孤児院(いえ)の話をたくさんした。話しすぎたと思ったけど、お姉さまは穏やかに笑って聞いてくれた。


 穏やかに微笑みながら、ゆっくりとお姉さまが崩れ落ちる。


「お姉さま!?」


 手を出したくても茨に固定されていて動かない。


「遅くなりましたわ。よく頑張りましたわね、ピアス」


「…うん」


巨大なアヒルに乗ったルージュたんが颯爽と現れてお姉さまを支えてくれた。


「魔力切れですわね。ハルルちゃん」


「くわ!く~わくわ」


 ハルルちゃんとやらがピョコピョコ踊るとお姉さまが起き上がった。ピンクのアヒル、可愛い。手のひらサイズだし、可愛い。


「くわわ!」

「そうでしたわ!ハルルちゃんの愛らしさに我を忘れてしまいました。助けに来ましたわ、イーリ」


「ルージュたああああん!!」


 ルージュたんはアッサリと魔法を解いてくれた。


「…外してなかったんですのね」


 よろけた私を支えて、ルージュたんが隷属の首輪をなぞった。苦笑しつつも、優しい表情だった。


「…うん。何かあったらアイラを止めようと思ったんだけどさぁ!失敗しちった!」


「貴女とアイラは友達でしたものね」


 あ~、この人に誤魔化しても通じないんだね。そうだよ、いざとなったら隷属解除して逃がすつもりだったんだよ。迷ったし、悩んでたけどさ。


「ふふ、私たちの探し物も見つかりそうだし、アイラの件もなんとかできそうですわよ?嫌ですわ、イーリ。私、友達のお願いを無下にするような冷たい女ではなくてよ」


 ねえ、たすけてくれるの?おかしくなっちゃったけど、唯一日本が…あの世界が嘘でも夢でもなかったと知っているともだちを。


「ルージュたん…私、アイラに死んでほしくない!助けて、ルージュたん!!」


「承りましたわ。できる限り、頑張ってみます」


 にこりと笑う彼女はいつも通り優雅で綺麗だ。アヒルに乗っていようが溢れでる気品を微塵も損なわない。


「い、いいの?」


「はい?」


「アイラはルージュたんの敵でしょう?」


 ルージュたんは首をかしげて考えた様子だった。


「まあ、そうですわね。色々やらかしてくださいましたわ。でも、色々やらかせる実力がある人なんですから逆に有能って事ですよね?上手くいったらスカウトしたいですわ」


「い、いや婚約者奪ったり…」


「今はジーク様に対して特別な感情はありませんし、バングナルト様と結ばれるきっかけになったのは確かです。ジーク様といる時より、私は幸せですわ。それから相手が私を嫌いだからって、私が相手を嫌うかは別問題ですわ。私も処刑は寝覚めが悪いと思ってましたし…ちょうどいいですわ」


「あんたって変よね」


 お姉さまが呆れたご様子です。


「ええ、変わっているからピアスと仲良くなれましたわね」


「…………そうね」


 お姉さまを変えたのは、この人だ。私、強くなりたい。この人みたいに!


「ルージュたん!私もつれてって!!」


 私にすがりつかれながら、強い(ひと)はもちろんですわと笑った。

・イーリのルージュへの信頼・親密度が上がった!

・イーリは覚悟を決めた!

・ピアスが回復した!

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