悪役令嬢達による対象の攻略または仕返し
レッタからもらったヒントを元に、私はアミュレットを作りました。魔石を加工し、見た目はただの根付けですわ。ですが、我が国ではありふれたアミュレットです。たくさん作って義弟やヴェース殿下、保健医にもあげました。
それから私はピアス達に協力を求め情報収集いたしました。
そして、一人の令嬢をお呼びしましたの。
「ごきげんよう、レスト=ソイソー嬢」
「…ごきげんよう」
彼女もまた、私達と同じ……婚約者を持つ『悪役令嬢』ですわ。ただ、私達と彼女は違います。
「単刀直入におうかがいいたします。貴女は、婚約者を取り戻したいとお考えですの?」
「…………はい」
唇を噛みながらも、彼女の瞳には決意がありました。
「ならば、私達が貴女の力となりましょう。その代わりに、対価をいただきますわ。これはあくまで対等な取引です」
「…条件をうかがってからでよろしくて?」
「もちろんですわ」
流石はピアスが選んだご令嬢。賢く美しく、素晴らしい逸材でしたわ。彼女は条件を快諾いたしました。
他にも『悪役令嬢』達と取引をいたしました。中にはもう婚約破棄をなさると言う方もおりましたが、イーリ嬢に一泡ふかせたいと皆様大変協力的でした。
先ず私がしたこと。それはレスト嬢の婚約者であるアンク=ケチャ侯爵子息をはじめ、攻略対象と思われる男性達がイーリ嬢に疑念を持つよう仕向けることでした。
私やピアスはイーリ嬢の取り巻きの一人である彼に話すことはできません。すでに一戦やらかしていて悪印象…というかアヒル的な意味で恐怖感を持たれています。そんな私達が話しかけても確実に逆効果ですわ。
なので、事情を話してヴェース殿下と義弟にお願いいたしました。二人とも快く引き受けてくれましたわ。
しかも、
『独り占めしたいと思わないのか?』
『彼女の本命は誰なんだい?』
『彼女といると、思考が歪む気がするんだ』
等々、疑念を持たせることにも成功しました。
そこから我が国ではよくこういった魔法無効アクセサリーを貴族は持つと説明してアミュレットを渡したようです。信頼させるために簡単な魔法を無効化させたりもしたそうです。
見事な手腕ですわ!
当然、彼らはイーリ嬢から少しずつ離れていきました。やはりなんらかの魔法による干渉があったのでしょう。私やバングナルト様は生来魔法耐性が強くて影響がなかったので、気がつけなかったのだと思います。
さて、作戦は次の段階へ移行いたしました。イーリ嬢から離れた婚約者達。事前に調べた婚約者達の趣味、嗜好、好みのタイプをふまえて攻略するのですわ。
「上手くいくでしょうか」
「ええ、応援しておりますわ」
ケチャ侯爵子息がレスト嬢から離れた理由は、身分差から彼女が高圧的に出ていたから。清楚可憐タイプが好みのタイプでしたので、レスト嬢を清楚可憐にカスタマイズいたしました。化粧もつり目を穏やかに見せるように施し、きつく巻かれたカールはゆるふわに。色もふんわり暖色系をチョイスしました。服も白のレースを使ったゆるふわお嬢様タイプ。
そして、最後におまじないをいたしました。
「貴女の努力は実ります。どうか、貴女が素直になれますように。貴女の幸せを、心から祈りますわ」
「…私も…祈るわ。頑張って」
「………はい!」
なんとピアスのデレ応援までつきましたわ!レスト嬢は笑顔で決戦に向かいました。
レスト嬢はあらかじめケチャ侯爵子息を人払いした実家に招き、話すことにしました。私達は魔法で覗き、何かあればフォローすることにしましたわ。
「…話とはなんですか?貴女という婚約者がいる身でありながら、他の女にうつつを抜かした僕に別れ話でも?」
彼は自分の罪を自覚していて、悲しげに笑いました。言い訳しない辺りは好感が持てますわね。
「わ、私…アンクが好きなの!」
おお、レスト嬢はどストレートで攻めましたわ。
「…………………は?」
てっきり別れ話かと思ったケチャ侯爵子息は固まっていますわね。
「だ、だから頑張るわ!貴方好みになれるように!ちゃんとアンクに好きになってもらえるように、頑張るわ!!」
「え?だって、レストは僕を嫌いって……」
「嫌いじゃないわ!だって、アンクったら他の女にも優しいからやきもちをやいてしまって…だ、大好きなの!本当なの!いじわるばかりしてごめんなさい!!」
頭を下げたレスト嬢に動揺しまくるケチャ侯爵子息。
「え、えええええ!?い、いや、僕はレストを裏切ったんだよ?何か魔法をかけられていたとはいえ、僕は君を傷つけたんだよ!?」
「悪いと思うなら、離れないで側にいて!あの女のせいでアンクが離れていく方が耐えられない!!」
「レスト……」
ケチャ侯爵子息は彼女に手を伸ばしかけ…手を止めました。そして、何かを決心した表情で彼女を抱きしめ、口づけをしました。きゃー!
「レスト…君の気持ちに応えたい。僕だって…本当は君が好きだった。でも身分差を気にして卑屈になって……」
「私も貴方に高圧的に出ていたから仕方ないわ。今度からは話し合いましょう」
「ああ」
このお二人はすれ違っていたところを狙われてしまったのですね。作戦成功をピアスと喜びました。
「上手くいきましたわね」
念のためにとレスト嬢を観察していましたが、それも不要だったようです。
それから私達は他の『悪役令嬢』達が対象を攻略するのを手伝いました。
逆に魔法による干渉から解放された以前アヒルになった逞しい貴族青年なんかは私達と婚約者の令嬢に土下座して謝罪いたしました。誠意は受けとりますが、注目されるからやめていただきたいですわ。
ちなみに婚約破棄をされた攻略対象の男性達は婚約者を裏切った最低男という烙印をおされ、学校をやめたり肩身の狭い思いをしております。家から勘当された人もおりますわ。こちらも私が証拠映像提出等、支援させていただきました。
それからレスト嬢から説明を受けたケチャ侯爵子息は、私達をイーリ嬢が嵌めようとしているので気をつけてください、と忠告をくれました。さらには、来月のダンスパーティで何かを仕掛けるらしい、とも。なかなか有力な情報ですわ。
ふと視線を感じてふりかえると、イーリ嬢が私を睨みつけておりました。まだまだ、これからですわよ。
私は悪役令嬢らしく、ふふんと悪い笑顔を返してさしあげました。
・悪役令嬢達と一部の攻略対象が仲間になった!
・ルージュとピアスの親密度が上がった!




