私の婚約者と悪い虫
今回は前話のルージュ視点になります。
学校で授業を受けていたら、バルちゃんから緊急メッセージが来ました。
『バングナルト、ピンチ』
私はすぐに早退し、バングナルト様とバルちゃんが居る城へ転移しました。
「何をしてますの?」
心配して急いで来たら、婚約者様に悪い虫がついていました。過去の悪夢を思いだし…泣きそうになったところでバングナルト様の声が聞こえました。
「ルージュ、助けてくれ!」
バングナルト様はかなり必死で助けを求めていたのです。よく観察したら、バングナルト様は腕にしがみついたイーリ嬢を本気で嫌がっておりました。
それを理解した途端、心の中の醜い嫉妬が消えて冷静になれました。
「イーリ嬢、離れてくださいませ。バングナルト様は私の婚約者です。婚約者のある男性に、失礼ですわ」
感情に任せるのではなく、あくまでも冷静にイーリ嬢へ注意しました。
「そうですね。失礼いたしました。今は貴女の婚約者でしたわ」
今はってどういう意味なのでしょうか。聞き捨てなりませんわ。また醜い嫉妬を感じました。
「そうだな。今は婚約者だが、いずれルージュは俺の嫁になる女だ」
私の不安を感じてくださったのでしょうか。バングナルト様は私だけを見て、簡単に醜い嫉妬を吹き飛ばしてくださいました。
「バングナルト様…」
どうしよう。キュンキュンしてしまっていますわ。そんな場合ではありませんのに。
「…また参りますわ」
不利を悟ってか、イーリ嬢は撤退しようとしました。
「忙しいから来るな」
「来ないでくださいませ」
ついお互い本音が出てしまいましたわ。ほぼ同時でしたわね。
「まあ、酷いですわ…私はビネー公爵家として殿下と親交を深めたかっただけですのにぃぃ!」
イーリ嬢が泣き出してしまいましたわ。ピアスと違ってしっかりいつの間にかいらしていたギャラリーを意識してますわね。でも、うそ泣きは貴女の専売特許ではなくてよ。
「ごめんなさい、イーリ嬢…私は以前に婚約者を取られたことがありますの。だから、バングナルト様に他の女性が近寄るのは許せないのです。狭量な我が身を不甲斐ないと…思いますが…これが私の本心ですわ」
実際に、私はバングナルト様に他の女性が近寄るのを許すことはできませんわ。もう、愛する人を盗られたくないのです。
思ったより元婚約者の件で、私はダメージを負っていたようですわ。
「泣くな、ルージュ…俺がお前以外に目移りするはずがないだろう」
バングナルト様がそっと私の涙を拭い、瞼に口づけをくださいました。そして、耳元でそっと囁いたのです。
「…ルージュ、愛している。二度とお前以外の女と二人きりにならぬよう取り計らおう」
「ふえっ!?」
は、破壊力ぅぅぅ!!ちょっ、あ、ああああ愛してるぅぅ!?
「ルージュ、俺はお前だけを愛している。不安ならお前以外に不能になる呪いをかねてくれてもかまわない」
「えっ、あの…」
すいません、もうお腹一杯なんですわ。萌えは急に大量に燃料投下されると消化不良で悶えますのよ!?
「ああ、ルージュ…すぐ結婚できないのが惜しいな。下らぬ嫉妬などする暇もないよう毎晩「みゃあああああ!?フェロモン!フェロモンを抑えてくださいまし!もう嫉妬などしてませんわ!ままままだ子作りは早いです!」
必死になってバングナルト様を止めました。嬉しさと愛しさと萌えと色気にやられてしまって余計なことまで言ってしまった気がしますわ。
「ならば仕方ない。これで我慢してやろう」
「!??んう…ふっ…んんん…………」
バングナルト様は深い大人の口づけをしてきましたわ。口内をバングナルト様の舌が蠢き…快感で腰が抜けてしまいました。バングナルト様の口づけってどうしてこんなに気持ちいいんですの!?
しかもいつの間にか膝に乗せられてさらに深く口づけされて…息も絶え絶えですわ…
「ぷはっ!はあっ……はっ…や、やり過ぎですわ!」
必死に呼吸をいたしました。いまだにその…息継ぎをいつすればいいのかわかりませんわ。
「すまない、ルージュが可愛くて…可愛すぎて、つい…」
可愛いって言ったからって許されると思ったら……こ、今回だけは許してあげますわ。
んん?何やらお尻にかたいモノが……こ、これはもしや……!?
「しかも、あた…あた……」
「すまん。まあ、男の生理という奴だ。ルージュが魅力的過ぎるから仕方ないだろう?」
完全に狼狽える私に、バングナルト様はさらっと返して堂々と胸を揉みました。
涙目で睨んだのですが、バングナルト様は色気をはらんだ笑顔でしたわ。ちょっと!さりげなく気持ちよくなる揉み方はだめ…!
「不潔ですわぁぁぁ!!」
「「あ」」
イーリ嬢とギャラリーの存在を、完全に忘れていましたわ。
皆様、真っ赤になりつつこちらの視線に気がついて素早く散開いたしました。レッタもいましたが、ものすごい速さで逃げてしまいました。
「………とりあえず、鍵を閉めて続きを」
「しません!!まだまだお仕事があるのですよ!」
必死で否定する私。そう、たくさんお仕事があるのですわ。
「…だからこそだ。久しぶりにルージュに恋人として触れたい。それに…触られた腕が気持ち悪いのだ。ルージュ、消毒してくれ…頼む」
「う…………ちょっとだけ…ちょっとだけ、ですわよ?」
バングナルト様に甘い自分にため息をつきながら、ちょっとだけと許可をしました。数分後、間違いだったと気がつきましたが…遅かったですわ。でも、久しぶりの恋人としての触れ合いは幸せでした。
以前は私が仕事にのめりこむあまり、元婚約者をおざなりにし過ぎて失敗しました。今は逆にバングナルト様との時間をとってきちんと話し合っていますわ。私はバングナルト様を誰にも盗られたくないのです。
それから、バングナルト様は興味のない相手に「ああ」しかおっしゃらないそうなので、それは誤解されたり利用されることもあるからやめるようによーく説明いたしました。
それにしても、イーリ嬢の目的が気になりますわ。彼女も私と同じなのでしょうか。ですから、腹芸が得意そうなあの方に探っていただくことにいたしました。正直何を要求されるかヒヤヒヤしておりましたが…彼は意外なものを要求いたしました。
彼は上手く彼女に接触してくれましたわ。後は、どこまで情報を引き出せるかですわね。
彼女が未来を知るならば、アドバンテージは彼女にありますわ。私は自分にできることをやるしかありませんわね。
・ルージュはスパイを送り込んだ!
・ルージュのイーリへの警戒心が上がった!




