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悪役令嬢はけっこうお怒りです

 ピアス嬢を交えて皆で穏やかに茶会をしておりましたら、可愛らしいご令嬢が来ました。明らかに嫌悪感を露にするピアス嬢。


「お姉さま、私もルージュ嬢とお話がしたいです」


 ふわふわの綿菓子みたいに甘そうで可愛くて…私が一番嫌いなタイプの女の子ですわね。ぶりっこの気配がいたしますわ。

 背後で男性達が見守っております。何がしたいのか解りませんが、私たちを睨んでおりますわ。


「消えて」


 ピアス嬢のシンプルな一言。もはや存在を抹消したいのですね。解ります。


「お姉さま、酷い」


「そうだ、酷いぞ!」


「それでも姉か!!」


「歩み寄ろうとするイーリの想いを踏みにじるとは…!」


 キャンキャン喧しい男性達にちょっとイラっとしつつも私は笑顔を作りました。ピアス嬢は素直に嫌悪感全開な表情ですわ。


「…まあまあ、ピアス嬢。よろしいじゃありませんの。折角ですから、ソルレイクの話を聞かせていただけるかしら?男性は遠慮してくださいませ。私の友人を悪し様におっしゃる方と同席だなんて不愉快ですわ。ところで、貴女はどなたかしら?」


「申し遅れました!私はイーリ=ビネーですわ」


「そう。私のことはご存じなようですわね。私はルージュ=ガーネットですわ」


 イーリ=ビネー嬢はピアスの腹違いの妹で、イーリの母君はピアスの母君亡き後後妻になったそうですわ。イーリ嬢はかなり頭がきれるお嬢様でした。私の提案を受け入れて、キャンキャン喧しい男性達を宥めすかして離れた席へ移動させました。

 評価を変えねばなりませんね。政治、経済にも魔術の知識もなかなかでした。


「ルージュ、お待たせ」


 夢魔(ブタ)さんに乗ったマカラが現れましたわ。


「ヒッ!?」


 夢魔(ブタ)さんを見たら、イーリ嬢が明らかに怯えたご様子でした。


「あら、確かイーリ=ビネー公爵令嬢でしたわね。こんな姿で失礼しますわ」


「え、ええ…」


 返事をしつつ、気もそぞろなイーリ嬢。やたらチラチラと夢魔(ブタ)さんを見ていますわ。


「貴女、家畜(ブタ)に興味があるの?乗る?」


「結構です!!」


 そして、勢いよく逃げました。取り巻きの男性を置いていってしまいましたわ。不愉快ですから、きちんとゴミはお持ち帰りしていただかないと困りますのに。


「おい」


「…はい?」


 なかなか逞しい貴族青年が話しかけてきました。


「貴様らが何を企んでいるのかは知らんが、イーリは僕らが守る!」


「まあ、企むだなんて失礼ですわ。仮にも他国の令嬢にそのような暴言…私、傷つきましたわ…」


 ホロリ、と溢れる涙。逞しい貴族青年は慌てている。他の事情を知らない貴族達がヒソヒソと噂してますわ。

 しかし、濡れ衣もいいところですしこんなところで言うなんて…ソルレイク貴族は大丈夫なんでしょうか。


「な、泣くな!イーリが言っていたんだ!貴様らが何か企んでいて、ソルレイクに害を及ぼすと!」


「酷い…私はバングナルト様の婚約者として誠心誠意働いておりますのに…」


 あのね、ピアス嬢。私を慰めるとかしていただけないかしら。貴女はこう…見抜く力はかなり長けておりますけど、外から見たらどうなるかとかを気にしなさすぎですわ。


「ルージュ、可哀想に…」


 逆にマカラはその辺りをよぉぉく心得てますわ。さめざめと泣く私を慰めるマカラ。そして狼狽する青年。どう見ても向こうに非があるように見えますし、実際酷い侮辱ですわ。


「しかし、イーリが!」


「貴方の目は節穴です。イーリ嬢のせいにせず、自分の目で見て考えて判断なさい」


 マカラがぴしゃりと言い切りました。素晴らしい切れ味ですわ。


「…イーリ嬢は貴方から見てどんな女性ですの?」


「イーリは清く正しく美しい、天使みたいな令嬢だ!貴様らみたいに穢れていないのだ」


「なら、試してみたらいかが?彼女が清く正しく美しいなら、貴方を助けてくれますわよね」


 彼は、なかなか逞しいアヒルになりました。今回は範囲を服ごとにしましたから、戻しても全裸じゃないですわ。


「くわ!?」


夢魔(ブタ)さん、先ほどのレディにこの子を預けてきてくださいな」


家畜(ブタ)、ルージュの命令は私の命令よ」


「ぶひいぃぃ!!」


 夢魔(ブタ)さんは嬉しげにアヒルさんを抱えると走り去りました。




 待つこと数分。アヒルになった青年と夢魔(ブタ)さんが戻りましたわ。


「「……………」」


 なんだかやたらションボリしております。


「ぶひ…」


家畜(ブタ)、今だけ人間の言葉で説明なさい」


「薄汚いアヒルなどいらないと言われました…寄るなと泣き叫ばれ…新しい性癖に目覚め「おだまり」


 どうやら夢魔(ブタ)さんは新たな性癖の扉をオープンしてしまったようですわ。


 貴族の青年を人間に戻すと、彼は泣いておりました。


「あんなの嘘だ…嫌悪に染まった顔で私を…イーリが小動物(アヒル)を叩くだなんて…」


 夢魔(ブタ)さんがいたせいではないだろうかと思いましたが、相手がイーリ嬢に疑念を抱いたようなので、背中を押してあげました。


「…何を見たか私は存じませんが、人は演じることができる生き物ですわ。なんなら不細工な男性にしてさしあげますか?多分同じ反応ですよ」


「も、もういい…女なんて、女なんてぇぇ!!」


 貴族の青年は泣きながら去っていきました。残りの男性陣は私達のやりとりを見て蒼白ですわ。


「貴殿方もアヒルにしてさしあげましょうか?」


『すいませんでした!!』


 彼らは綺麗にお辞儀をすると、一斉に逃亡いたしました。残念ですわ。皆様見目だけはよいから綺麗なアヒルになるかと思いましたのに。


「…あら」


「…あんた、実はかなり怒ってたでしょ」


 ピアス嬢が呆れた表情でした。彼女、本当に素晴らしい洞察力をお持ちですわ。


「貴女が彼女を嫌うのは当然ですわ。彼女もわざと貴女を挑発してますもの。それに乗っかる馬鹿が元婚約者を思い出して不愉快極まりないのです!それに、そんな馬鹿が私の友人を貶めるなど許せませんわ!あら?ピアス嬢??」


 何故机に伏して震えてらっしゃるの??私の怒りに同意してくださると思いましたのに。


「ルージュって怖いでしょ?」


 ニマニマしながらマカラが言いました。どう意味ですの??


「もんのすごーく怖いわ!ああもう、ピアスでいいわよ!友達なんでしょ!」


「!!嬉しいですわ、ピアス!」


「うぎゃあ!?」


 歓喜して抱きつくとピアスは困惑したご様子でしたが、最後は笑ってくれました。ピアスのためにも頑張りますわ!!


 追伸・アヒルにした男性はきっちり身元を調べて王家経由で厳重注意をしていただきました。また、ついでに暴言を吐いていた貴族の男性達には友人達に協力していただき、今回の件にちょっと尾ひれをつけて噂を流していただきましたわ。学校から厳重注意されたみたいです。

 うふふ、ざまぁですわ!!

・ルージュの殺る気が上がった!


・ルージュとピアスの親密度が大幅に上がった!


 ルージュは自分のことには比較的寛大ですが、友人を貶める輩には厳しいようです。

 また、ヒロインの件がわりとトラウマになっている気がします。

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