さあ、ゲームを始めよう
レッタから話を聞いて、私は反射的に走り出しておりました。
「ハルルちゃん、ビネー嬢を探して!」
「くわぁ!」
小さな桃色のアヒルさんに導かれ、私はビネー嬢の元へとひたすらに走りました。ハルルちゃんのお尻もぷりちー…
「くわ!」
真面目に集中しなさいと叱られてしまいましたわ。確かに、雑念を抱いている場合ではありませんわね。
「ビネー嬢!」
「!?あ、あんた…何の用よ!」
ビネー嬢は水…いや、泥水をかけられたらしく、びしょ濡れで泥だらけでした。魔法で綺麗にしてあげようと手を伸ばしたら、叩かれてしまいた。
「あら」
「どう、満足!?みっともなくて泥だらけで、惨めな私を見て満足!?惨めな私に施しを与えて、満足なの!?」
何やらお怒りなご様子のビネー嬢に、私は首をかしげました。
「貴女のどこが惨めですの?」
「……………え?」
ビネー嬢は怒りに瞳を輝かせた、生命の光に満ちた少女ですわ。さらに、敵の施しなどいらぬとハッキリと拒絶できる誇り高い人。そんな方が惨めなはずありません。
「私は泥だらけであっても、毅然として誇り高い貴女を惨めとは思っておりません」
「…………………は?」
「ただ、私に出来ることがあるのに力を使わず貴女が風邪をひくのは嫌ですわ。魔法を使わせていただけないでしょうか。お願い致します」
私はビネー嬢に深く頭を下げました。
「はあああああ!?」
「駄目でしょうか…」
頭をあげて首をかしげると、ビネー嬢がため息をつきました。
「………勝手にすれば?」
「ありがとうございます!」
気が変わらないうちに!とハルルちゃんにもお手伝いしてもらい、泥を浄化して服を乾かしました。
「あの、髪も直してよろしいですか?」
「…………勝手にすれば?」
ビネー嬢はあきれたご様子でしたが、髪をいじらせてくれました。
「ふわぁ………可愛い…」
リボンを編み込み、アップにして…片側に少しだけ髪を垂らして大人可愛くしましたの!可愛いというよりは綺麗ですわ!我ながらいい出来ですわね!
「あんたさ」
「…はい?」
「なんで、かまうの」
「………はい??」
なんで、かまうか…ですか。少し考えてから返答しました。
「ビネー嬢と仲良くなりたいからですわ」
「はあああああ!?私はあんたが嫌いなの!そこは解ってる!?」
「はい」
嫌われているのは理解しておりますので、素直にうなずきました。
「じゃあなんで嫌われてる相手と仲良くなりたいなんて発想が出るのよ!」
「貴女が私を嫌うのは、よく理解しております。私も…同じでしたから」
「………は?」
そして、私は語りました。私の元婚約者のことです。
私達はとても仲が良かった。しかし、仕事によるストレス太りをした頃から冷たくなりました。
私は必死に努力をいたしました。王妃としての教育を受け、元婚約者を支えられるに足る人間になろうと全力で努力をいたしました。睡眠時間も削り、勉強と仕事にひたすら取り組みました。
しかし、元婚約者は私が努力をしている間に可愛いだけの浮気相手を作って、デートをしておりました。仕事も放り出して女性と遊んでいたのです。
それを知った時、とりあえず数種類の殺害方法が頭を駆け巡り…仮にも王太子を完全犯罪で消すのは無理だという結論に至りました。
それから、どうにかして元婚約者の気を引こうとしましたが…全て失敗。誘っても断られ、冷たい態度に心を痛めました。プレゼントも棄てられていたと知った時には泣きましたわ。
そして、元婚約者を略奪した令嬢に嫌がらせをしたのです。
「…わかる…わかるわ!」
そこまで語ると、ビネー嬢は泣きながら私の手を取りました。
「しかも、相手がまだ有能なら許せたのですが、相手は可愛いだけの低位貴族でした。私のプライドはとても傷つきましたわ」
「で、どうしたの!?」
私は苦笑しました。
「…こちらから婚約を破棄して、みみっちい仕返しをしましたの」
「みみっちい、仕返し?」
「だって、どんなに尽くしても彼は戻りませんし、私の望む謝罪は…一生かかろうと得られないでしょう?なら、相手を切って困らせてやろうと思いましたの。他の誰でもなく、自分の手で。犯罪は家や周囲に迷惑がかかりますから、どうにか踏みとどまりましたわ」
「…そう」
ビネー嬢は語りました。彼女も彼女なりの努力をしていたと。それでも自分を見てくれなかったバングナルト様が憎かったと。そして、努力をしても得られなかったモノを得ている私が憎い、と語りました。
「…内緒にしてくださいますか?」
私はバングナルト様…バングルとの衝撃的な出会いを語りました。出会わなければバングルは調理されてディナーになっていたはずだと聞いて、ビネー嬢は蒼白でしたわ。でも、死んだら呪いが解けるのかしら?どちらにせよ、知りたくはありませんわね。
「私、少しビネー嬢にお伺いしたいのです」
「何よ」
「貴女に呪いをかけるよう、唆したのは…どなた?」
それからビネー嬢と私は語り合いました。
私達はきっと、物語やゲームでいうところの『悪役令嬢』なのですわ。
そう、主人公のために物語を更に華やかに彩る悪の華。強く、賢く、美しく、高貴で…醜くて意地悪なの。
でも、素直に悪役になんかなってあげませんわ。基本スペックが高い悪役令嬢達が手を組んだらどうなるのか…今後がとても楽しみだと思いませんこと?
さぁ…役者は揃いましたわ。ゲームを始めましょう。
お覚悟は、よろしくて?
・ビネー嬢が仲間になった!
・ビネー嬢のルージュへの好感度が大幅に上がった!
・ビネー嬢とルージュは解り合った!!




