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だから嫌がらせはささやかでいいんですよ!

 さて、憂鬱だけど休むわけにはいかない。身支度を整え、いざ出陣!

 そういやバングルは私が着替えようとするといつも隠れてしまう。なんでだろう。


「ルージュ、おれもいく」


 バングルが私のスカートを羽でチョイチョイ触りながら言った。


「え?ええ、わかったわ」


 私はバングルを抱き上げる。バングルが私にスリスリする。本日は珍しいデレ日だったらしい。くっ…可愛い…!しかも、もふもふ…!


「バングルの羽毛でぬいぐるみ作りたい」


「…むしるきか!?おれがいるからいいだろ!」


「確かに」


 ぬいぐるみなんて、バングルの代わりにならないよね。私はあっさりとバングルぬいぐるみ作成を諦めた。




 教室には既に王太子(バカ)殿下が来ていた。いつもなら挨拶するが、私は王太子(バカ)殿下を一切見ずに着席して本を読む。


 他のクラスメートがざわめく。私はいつも王太子(バカ)殿下に必ず挨拶していたからね。ひそひそ話が聞こえてくる。


【珍しいですね】

【どうせ殿下がルージュ嬢を怒らせたんだろ】

【なるほど】


 大体当たってる。王太子(バカ)殿下がクラスメートの視線に耐えられなくなったのだろう。こちらに来た。


「ルージュ、おはよう」


「おはようございます、王太子殿下。もう赤の他人でございますから呼び捨てはやめてくださいましね」


「え」


「私、生徒会副会長も辞任いたします。もうお話しすることもありませんわね。失礼いたします」


 礼をとり、私は教室を出ようとした。


「待ってくれ!…!?」


「放してくださいまし!」


 私はこれみよがしに王太子殿下の手を振り払い、涙を見せた。女の涙は武器ですよ。切り札ですよ。王太子殿下が怯んだ隙に逃亡し、この日は教師に体調不良だからと申告して保健室で自主勉強した。


 チョコチョコと後からバングルがやって来た。念のため防音結界をはって会話する。


『いい演技だったな』


『本当?わざとらしすぎなかった?』


『いや、クラスメートはバッチリ同情していたぞ』


『マジで?やった』


『クラスに居づらそうだったぞ、王太子(バカ)


『ざまぁ』


 バングルとニヤリと笑いあった。さりげなくお尻を触ろうとしたら、羽でピシッと叩かれた。ご褒美、ありがとうございます。

 その後はたまにお尻を狙いつつ、バングルと勉強してました。





 昼食どうしよーかなと考えていたら、友人であるファンデとマカラが来てくれた。ファンデは見た目が儚げ美少女だ。色素は薄く、妖精さんみたいな女の子。ただし中身は毒舌で、クリオネみたいだと思う。

 逆にマカラは見た目がキツそうなつり目でナイスバディなのだが、中身は優しく穏やかだ。


「昼食、適当に買ってきてやったぞ」


 慣れたからもうなんとも思わないが、ファンデ嬢のギャップは本当にすごい。男前な儚げ妖精さんである。


「し、食欲ある?大丈夫?」


 そして、キツそうな見た目とは裏腹に、マカラ嬢は天使だ。あと、乳がうらやまけしからん。


「精神的な理由でこちらに居ましたので、大丈夫ですわ」


「あ゛?」

「え?」


 ファンデ嬢怖い。目で人が殺せそうだよ!しまって!殺気はナイナイして!


「ファンデ怖い。落ち着いてくださいまし。話したくても話せませんわ」


「あー、ごめん」


 彼女達は私が心から信頼できる親友達だ。防音結界をはってから、私は包み隠さずすべてを話した。王太子(バカ)殿下の裏切り、婚約解消について。それから、今後の私について。


「私は、嫌がらせをしようと思いますの。放置していても王太子(バカ)殿下は馬脚を現して失脚すると思います。でも、私が捧げてきた真心や仕事や王妃教育を無駄にしやがった仕返しがしたいのです!」


「よっしゃあ!乗った!八つ裂きだな!」


 ファンデは剣を取り出して振り回した。彼女は武家貴族なので本人もかなり物理的に強いらしい。


「ストップ!スプラッタ!!」


「縦半分か?横半分か?」


「そこは心底どうでもいい!!裂くな!!そもそも裂くな!!」


「…そうか、撲殺か?」


 ファンデはモーニングスター…だったかしら。トゲ付き鉄球に鎖がついた凶悪な武器を取り出した。


「殴ったらダメです!」


「大丈夫、苦しまずに一撃でしとめるぞ!」


「威力の心配はしてません!殺すなぁぁぁ!!」


「…殺すな…つまり拷問か!切り取るか!」


「物理から離れて!切り取るってナニを!?やっぱいい!聞きたくない!!」


 なんで閃いた!みたいなイイ顔してるんだよ!


「呪いか?」


「いや、だから直接的すぎる!!」


「…じゃ、毒?」


「「……………………」」


 あかん。マカラの目は本気(マジ)だ。


「いや、だから殺さないでくださいまし!」


「大丈夫…半身不随とか不能にするとか…殺さないで苦しめる毒、あるよ」


「だから威力は心配してません!私は小心者ですから、良心が痛まない程度のささやかな仕返しがしたいのです!」


「「えー」」


 いや、なんでそんな殺る気なの?あの王太子(バカ)君達にもなんかやらかしたの??


「あの、王太子(バカ)殿下に恨みでも?」


「ルージュを悲しませた男なんて死ねばいい」

「ルージュを泣かせた時点で死刑です」


「ファンデ、マカラ…!」


 方法はさておき、その気持ちは嬉しいわ!私は親友達を抱きしめた。


「ありがとう…でも殺害計画はダメよ」


「「ちっ」」


「ダメだからね!?舌打ちしないで約束して!!」


 私は昼休み中必死で説得してファンデとマカラに『殺さない、呪わない、毒を盛らない』と約束させた。


 しかし、友情とはこんなに過激なものだったのか。知らなかった。しかし、逆の立場なら私もやらかしかねない。気をつけよう。






『女って怖い』


 空気と化していたバングルが、親友達が去ってから呟いた。ぴるぴる震えて怯えてて、とても可愛かった。ぎゅっとしても震えてて可愛かった。

 でもお尻を揉んだら蹴られた。正気に戻ったらしく、暫く室内を走り回ってた。


 バングルは癒し系です。

・ファンデとマカラが仲間になった!


 ちなみにマカラさんは毒も薬も扱えます。実家は宮廷医師をよく輩出する医療エリート貴族です。


 本人が知らないうちに王太子の周囲がどんどん危険になってますね。

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