とある侍女の怒り
ルージュ様と鬼畜美女様は、猛獣様が魔石を大量に持ってきてからずっとひたすら石に魔法をかけています。魔法なんて見たことないから、ちょっと楽しいです。
ただ、鬼畜美女様は魔石をなにやら複雑な紋様が描かれた紙の上におき、謎の液体をかけて呪文を唱えている。すると魔石に美しい紋様が現れる。
ルージュ様も魔石を複雑な紋様が描かれた紙の上に置くところまでは一緒なのですが…アヒルがせっせと隣で働いています。とても、ずっと気になっていたので、私はついにルージュ様に聞きました。
「る、ルージュ様」
「何かしら?」
ルージュ様は一旦手を止めて私を見た。穏やかで空気も優しい。だから、きっと違うと信じて聞いた。お願いだから、違うと言ってください!
「こ、このアヒル達も…元人間なんですか?」
「…………………」
微笑んだまま、ルージュ様が固まった。や、やっぱり!?私もいつかアヒルにされて飼われるの!?
「ぶっひゅ!ぶははははははは!!」
クレスト様が爆笑しだした。え!?どういう…バングナルト様と鬼畜美女様、猛獣様まで笑ってる!?
「あの…私、罪もない方を無差別にアヒルに変えたりしませんわ…この子達は使い魔で、人ではありませんわ」
ルージュ様は涙目でした。疑ってごめんなさい。
「良かった…マカラ様みたく調教したりはしてないんですね?」
「してませんわ!!」
ルージュ様は泣き、皆様は爆笑していた。ルージュ様、ごめんなさい。でも…すごくホッとしました。
「ところで、何故ルージュ様達は魔石をひたすら加工してらっしゃるのですか?」
ルージュ様達はひたすら魔石を加工しているが、この国の魔石は足りているはず。輸出でもするのかなと考えて、軽く聞いてみた。
「ああ、実はこの国の魔石はソルレイク王家を呪う術式が組まれているから全部すげ替えなくてはいけないのですわ。上書きされないよう、ロックも完璧ですのよ」
「スゴいですね~」
ん?
え?
待って。ルージュ様、今…
「え、ええええええ!?なっ!?え!?」
「びっくりしますわよねぇ…知らない間に王家を暗殺する片棒を担がされていたなんて」
「ええええええ!?ちょっと!ルージュ様!詳しくお願いします!!」
「実は…」
ルージュ様達がひたすら魔石を加工する羽目になったのは、この国になくてはならない魔石そのものに、王家の人間を害する呪紋がわからないように刻まれていたから。知らずに魔力をこめれば呪いは完成し、何も知らない魔力持ち…つまり私達も勝手に王家を呪ってしまっていた…ということに……
「ええええええ!?マジですか!?」
ルージュ様は頷いた。
「あ、だから…魔石を新しくしてるんですね?上書きして消すことはできなかったんですか?」
「石に刻まれてしまっているし、下手に干渉して罪のない人達に影響が出たら困りますわ。しかも、誰に影響するかわからないのですもの。迂闊なことはもうできないのです」
「……もう?」
既に迂闊なことをしたような口ぶりだ。嫌な予感がした。なんでも呪詛返しは簡単らしい。しかし石に呪紋を刻んだ本人ではなく、石に魔力を注いだ人間が術者とされてしまうそうで呪いを返せば不特定多数の人間が苦しむことになるそうだ。
幸い今、冬は終わり。作動している魔石は少ない。
だが、またこれから冬に備えて魔石に魔力をこめなければならない。そうすれば……ゾッとした。
「…レッタ」
「…はい」
鬼畜美女様が大変イイ笑顔でおっしゃいました。
「先週ぐらい、原因不明の急激な腹痛に一晩苛まれなかったかしら?」
「は?」
先週?確かにいきなり腹痛があり、一晩トイレで過ごす羽目になったが……まさか……
「これ、貴女の魔力だと思うのよね。大丈夫だった?」
漏らさなかった?と囁いた鬼畜魔女様。明らかに面白がっていらっしゃる!!
「のいやあああああ!!漏らしてませんけど…漏らしてませんけど!あの地獄の腹痛がまさか…!」
「……ごめんなさい」
「いや、ルージュ様は微塵も悪くないですよね!?」
「どちらかっていうと悪いのは私ね。呪術師は普通、呪詛返しされた場合の対処をしているもの。まさか何の関わりもない一般人を、無差別に巻き込む愚か者がいるなんて、流石に想定外だったわ。ごめんなさいね」
あ、鬼畜魔女様、目が笑ってない。よくわからないが、呪術師的にはマナー違反らしい。
「い、いえ…」
このド迫力な鬼畜魔女様に弱小男爵令嬢が何か言えるだろうか。いや、言えまい。しかし、私を知らない間に王家を呪うなんて大それた事件に巻き込みやがった馬鹿野郎に仕返しをしたい。
「ルージュ様…私、この件については被害者ですよね?」
「…そうですわね」
「私、仕返しをしたいです。ルージュ様達は…犯人を捕まえるつもりなんですよね?」
「ええ、そのつもりよ」
「私も仲間に入れてください!あの腹痛、マジで死ぬかと思ったんですから!仕返ししないと気がすまない!」
「えええ!?」
「大歓迎よ、レッタ!」
「これでラットも仲間だな!」
「ですから、私の名前はレッタですってば」
こうして、私はルージュ様の仲間になったのでした。
ビネー公爵一派に思うところもあるし、無理ない程度に協力しようと思います。
・レッタが仲間になった!
・マカラが鬼畜美女から鬼畜魔女にクラスチェンジした!
・ルージュへの誤解が一部解けた!
ようやくレッタが仲間になりました。ツッコミが増えてよかったです。




