とある侍女の不幸
レッタ視点になります。
美しいご令嬢から逃亡した後、私は騎士団長様から事情聴取を受けました。とりあえず、これで話は終わったし、明日からまた平穏平凡侍女ライフが戻ってくると思っていました。
朝詰所に向かう途中、例のいわく部屋から呻き声??がして思わずダッシュで逃げました。よく考えたら意地悪ババアーズが助けを求めていたのではないかと逃げ切ってから思い出しましたが、誰かが助けるだろうと戻りはしませんでした。
詰所でシフトの確認をしたら、私の名前がありません。
「あの、私の名前がないのですが…」
副侍女長に確認したら、衝撃の返事がきました。
「ああ、貴女はルージュ様付きになったから」
「は?」
ルージュ様?ルージュ、様………ま、まさか……
「昨日のアヒル事件のご令嬢様よ。気に入られちゃったみたいね?貴女を指名してきたのよ…頑張ってね」
「のいやああああああ!??」
昨日名前聞かれて素直に答えた私の馬鹿馬鹿馬鹿!!副侍女長も同僚も、心底同情した目で私を見ていました。同情するなら変わってくれ!頼むから!
「レッタでごじゃいます……」
挨拶で噛んだ。死にたい。不興を買えばアヒルになるだなんて、切なすぎる……
しかし、ルージュ様は私に無茶ブリはしなかった。普通に優しかった。
鬼畜美女と爽やか鬼畜美少女も普通に優しかった。しかし、油断すればアヒルの上全裸放置の刑に処される。それはなんとしても避けたい。
「あの、何故ルージュ様は私を指名なさったのですか?」
「だって貴女、ビネー公爵の関係者じゃないし私を助けようとしてくれたのでしょう?」
「え!?」
何故それを!?騎士団長様!?私を売ったのですか!??というか、ビネー公爵と敵対してるんですか!??
「…どうしても嫌なら考慮するわ。でも、出来れば信用できる人を側に置きたいのよね」
「……………はい」
それは解る。毒殺だって珍しくないご時世だ。そう考えるのは当然と言えば当然だよね。
そんな風に考えていたら、事件が起きた。
皆様がまったりと昼食を食べていたら、リストバルト殿下と鬼畜美女ことマカラさんと……???が来た。
当初は頭が理解を拒んだのですが、鬼畜美女様はよつん這いになった男性に乗っておりました。あの、その状態で城内移動したんですか!?
男性は轡をかまされ、ピチピチの皮製ショートパンツのみを着用していた。
隣を歩くリストバルト殿下は轡つき変態パンツ男を微塵も意識していないご様子である。なんで気にならないの!?めっちゃ目立ってますよね!?なんでナチュラルに許容していらっしゃるの!??
「うわ、バングナルト頑張ったね。寝たらスッキリしたから、兄様もお仕事するよ。あ、私と彼女の昼食をこっちに持ってきて」
轡つきピチピチショートパンツ男に目を奪われていたら、リストバルト殿下に声をかけられて超焦りました。
「ひゃい!?きゃしこまりましたぁぁ!!」
とりあえず、ダッシュで昼食を頼みにいきました。途中盛大にコケて痛かったです。
他の侍女から変態パンツ男について聞かれ…私が聞きたいわ!と逆ギレする羽目になるのでした。
昼食は私の中の侍女力を駆使して変態パンツ男を気にしないように努め、こぼすことはありませんでした。
嘘です。
ひたすら現実逃避して回避しました。やはりルージュ様はともかく鬼畜美女様には関わりたくありません。
時間はかかったけどルージュ様にきちんとお断りしようと心に決めてルージュ様の元に向かう途中、血塗れの美少女ことファンデさんに会いました。
待て。それは誰の血だ。
まさかの城で事件!?私、口を封じられちゃう!?
「あ、確か侍女の…ラットだったか?」
「レッタですわ」
近くて遠いわ!いや、そこはどうでもいいわ!
「今狩りをしてきたんだ。今夜は豪華な肉料理にするって、料理長が言ってたぞ」
どうやら狩りの返り血だったらしい。事件でなくてなによりだ。しかし、見た目は儚げな妖精さんなのに、ワイルドだね!
「わぁい…ではなく!城の床が汚れてしまいます!血は落ちにくいんですから、お風呂に行って着替えてください!」
「えー」
「えーじゃありません!風呂に行ってください!さもなくば、マカラ様にチクりますよ!!」
「…………………わかった。マカラには内密に…」
やはりファンデさんにもマカラ様は怖いらしい。
さらに、血塗れの魔石をそのまま持っていこうとしたので叱り、洗浄した。肉片とか得体の知れない物も付着していて、半泣きでひたすら洗った。騎士達によれば、この魔石は大半ファンデさんが狩ったものだそうだ。
おい、待て。
この数を狩ったって…私は猛獣に風呂に入れと強要してしまったらしい。幸い彼女は気にしていなかったが、ファンデさん…ファンデ様とも関わらないようにしようと心に決めた。
しかしファンデ様は適当に流しただけだったので髪やら体に血がこびりついたままで、やり直しと言うしかなく着替えをさせてから戻ったので遅くなってしまいました。
「すいません、遅くなりました」
「ラットに言われたから、ちゃんと綺麗にしてきたぞ!」
子供みたいに無邪気に笑うファンデ様は不覚にも可愛かった。しかし、彼女は危険人物。関わってはいけない。
「…レッタです」
「まあ、ファンデと仲良くなったのね?」
「違います」
「そうだ!」
ファンデ様は無視して本題に入ることにした。
「ルージュ様、私にはルージュ様付きの侍女は無理です!どうか辞めさせてください!」
「そう…残念だわ」
ルージュ様が悲しげに目を伏せた。美女の憂い顔…罪悪感が半端ない。しかし、私は言うべきことを言った。
しかし、何日経とうと私はルージュ様付きのまま。勇気を出してルージュ様に確認した。
「あの、私はいつまでルージュ様付きなんですか?」
「それが…他の侍女が怖がって貴女以外にするのは無理だと言われてしまって………ごめんなさい」
「のいやああああああ!??」
副侍女長!あんた、私を生け贄にしたな!?必死に抗議したのだが、私は身分がひっくい男爵令嬢。
決定は覆ることなく、私は今日もルージュ様付き侍女としてスリリングな毎日を送るのでした。
カムバック!平穏!!
・レッタがルージュ付きの侍女になった!
・ファンデのレッタへの好感度が上がった!
何人か気がついてましたが、レッタはとても度胸がある侍女です。
しかし本人は小心者だと思っていて、自覚はありません。




