類は友を呼ぶとは正にこのこと
クレスト視点です。
バングナルト様の従者兼護衛として任命され、それなりに剣に自信があった。そう、過去形だ。格の違いをみせつけられまくった今、特技は剣術ですなんて口が裂けても言えない。
それほどまでに、圧倒的な『力』だった。
時間は少し遡り、ルージュちゃんに頼まれて魔獣狩りに来た俺達。騎士も腕がいい奴を15人連れてきた。
しかし、ファンデちゃんは何故か素手。武器を持っていない。本人に聞いたら、影にしまっているというよくわからん返事をいただいた。なんか魔法で収納してるってことかな?
数体の魔物を倒し、魔石を回収する。このペースじゃあ目標数までどのぐらいかかるかなぁ…
そんな風に油断したのが、多分いけなかった。
「クレスト様!!」
「ぐっ!」
第六感、という奴だ。嫌な予感がしたので咄嗟に横に跳び、衝撃を緩和した。
「な、なんでこんなところにブリザードワイバーンが!?」
この森で最強ランクの魔物だ。この戦力では勝てない。ファンデちゃんだけでも逃がさなきゃ…朦朧としながら、彼女に逃げて、と告げた。
「大丈夫だ!ブリザードワイバーンは美味だぞ!すぐに美味い串焼きにしてやるからな!」
うん?強かに体を打ち付けたからか、意識が朦朧としてるからか、会話がおかしいよね?俺、ブリザードワイバーンの串焼きが食いたいとか言ってないよね??
そして彼女は自分の影から巨大な剣を引っこ抜いた。あまりにも巨大で、たくさん物騒なモノがゴテゴテついている実用性を完璧に度外視したその剣は、小さな頃の自分が考えた『むてきでさいきょうのぶき』を思い出させた。
ブリザードワイバーン最大の武器は、空中戦だ。やはり空からの攻撃が厄介なのである。さらにブレスが上空から来れば打つ手なしだ。いくらバカでかくとも、剣は剣。ブリザードワイバーンには届かない。
「伸びろ!ストロングファンデ!!」
強いファンデって。むしろ剣より君が強いんですね?わかります。
そして、剣は伸びてワイバーンを叩き潰した。
「うああ、すまない!うっかり潰してしまった!だが、ミンチでも美味いからな!」
「…ファンデちゃん、もう串焼きはいいから」
遠慮するなと食わされた串焼きは、とても美味しかったです。
「…あれ?」
食べたら怪我の痛みが消えた。
「ブリザードワイバーンの肉には治癒効果があるんだ」
知らなかったというか、そもそもブリザードワイバーンを狩るような能力が俺にはない。ブリザードワイバーンを食う発想もない。
「さて、斥候が喰われたからめっちゃ奴ら怒ってるな」
や つ ら ?
ファンデちゃんが笑顔で指差す先…空は氷に似た水色でおおわれてました。
俺の人生、終わった。
連れてきた騎士達も、人生終了を理解してもはや悟ったみたいになっている。俺なんか、串焼きめっちゃ喰ったから間違いなく標的だな。
そして、死を覚悟した瞬間…アヒルが巨大化して火を吐いた。
「は?」
「へ?」
「え?」
「い?」
アヒルの火炎放射により、半数近いブリザードワイバーンがこんがり焼けた。アヒルって、火を吐く生き物だったっけ??そもそも巨大化しねーわ。しかも、バルちゃんなんか角生えて…あ、引っ込んだ。
何故だ、俺『絶対に言うな』とアヒルのバルちゃんにめっちゃ睨まれている。命が惜しいから言わないよ。つうか、バルちゃんの正体はなんなんだ!?
「ははははは、やるな!バルちゃん、行くぞ!!」
誰もが唖然とする中で、ファンデちゃんだけはマイペースだった。バルちゃんに乗ると空を駆け、ブリザードワイバーンを次々に撃墜していく。
その見事な剣さばきに、覚えがあった。
その後はもう、それはもう、凄かった。
血の匂いで誘われた魔獣をひたすら狩り、魔石を取り、狩って狩って狩って狩りまくった。
そして、それを次々と塩焼きにして食べてるファンデちゃんに騎士達はドン引きしていた。
俺は、ファンデちゃんがハムスターみたいに一生懸命食べてたので『たんとお食べ』と思った。
この辺り一帯は狩り尽くしたのだろう。魔獣の気配がしない。
「助力に感謝します。剣聖ファンダル=ウェルス殿」
「ぐふっ!?」
ファンデちゃんがむせたので、手持ちの水筒を渡してやった。
「んなっ!?え!?にゃんで!?」
動揺が凄まじい。かまかけただけなんだがな。
「ソーディアン剣術大会、決勝戦の相手が俺でしたから」
そう、俺は過去に一度だけ、その剣筋を見たことがある。小さな英雄・ファンダル=ウェルス。かつて『剣聖』と謳われた少年。2年前に国際御前試合…剣の都ソーディアンで数年に一回開かれる、世界一の剣士を決める大会で見事最年少優勝を果たした。
ああ、女の子だったから死んだことになったんだなぁと逆に納得した。
「ご、ごめんなさい…」
「んあ?」
やべ、考え事してたから聞いてなかったわ。
「騙して、大会に出て、ごめんなさい」
「いんや、女の子はダメとは(多分)規約に書いてなかっただろ。気にすんな。他言はしないって約束するよ」
「あり、がとう」
ふわりと笑った彼女は、とても可愛かった。
「あ、肉食べる?」
「…俺はもういいや…」
塩焼きにしてひたすら食べる彼女を眺めつつ、多分串焼きは彼女なりの配慮だったんだなぁと魔石を数えながら考えた。
そういやぁ、ルージュ様のガァラちゃんは…なんと治癒魔法を使っていた。破壊された木々も修復している。アヒルすげぇ。
そして、まさかの一日で目標を達成したという驚愕の事実に、俺と騎士達が白目をむいたのは言うまでもない。
女王様といい、剣聖ちゃんといい、ルージュ様にはとんでもない人材が揃って……いや、ルージュ様自身もあんな使い魔たくさん連れてるとかとんでもなかったわ!
つまり、類は友を呼ぶってことだなと納得した一日だった。
追伸・書類仕事は半日しかサボれませんでした。ファンデちゃんにまだ目標を達成してないことにしとけばよかったねと話したら、天才か!?と言われました。
素直か!とつっこまなかった俺を誰か誉めてください。
・ファンデが剣聖だと発覚した!
・クレストのスルーレベルが上がりまくった!
・ファンデのクレストへの好感度が大幅に上昇した!
クレストは、案外さらっと他人をフォローするので地味系女子にモテます。しかし、気がつきません。




