マカラさんといっしょ
リストバルト視点になります。
疲れていたのですぐ眠りに落ちたのだけど、暗い泥の中に私はいた。ああ、またこの夢か。この夢、寝た気がしないんだよねぇ。
「やはり、夢魔ですね」
「………ん?」
さっきの可愛い…いや、彼女も美人系だなぁ。マカラ嬢だっけ?なんか泥を調べているようだ。頭にアヒルをのっけている。
「ごきげんよう、リストバルト殿下」
「ああ、こんにちは。早く逃げた方がいいよ」
夢とはいえ、君が無惨に殺されるのは見たくない。
「…生憎ですが、手遅れみたいです」
刃物を持った男達。最初は私を傷つけていたが、いつからか家族や親しい人間を傷つけるようになった。泣き叫ぼうとも止まらない。少しずつ、だが確実に私は無関心になっていく。よくない兆候だと思いつつ、どうにもできない。
「リストバルト様、夢を取り返してくださいませ」
「夢を?」
「ここは貴方の夢。夢魔は貴方を弱らせ、魂を食べようとしています。お手伝いしますので、ちゃっちゃと取り返してしまいましょう。バルちゃん、チャームヒップダンス!」
マカラ嬢の指示で愛らしいアヒルは巨大化するとダンスを踊り始めた。流石は夢だ。なんでもありだなぁ。
「がぁがぁがぁ♪」
「!?な、なんだ!?つられる…!?」
「くわっくわっくわっ♪」
楽しそうだなぁ。暴漢の一人がアヒルと同じ動きをしている。泥も捕まった家族や親しい人たちも消えて、白い空間には私たちと髭のおっさんだけになっている。
「ば、馬鹿な!夢を使えないだと!?」
「がぁがぁがぁ♪」
「が、がぁがぁがぁ♪」
ついにしゃべることも出来なくなったらしい。しかもおっさんが悪魔みたいな感じになってきた。これが夢魔…なのかな?
「くわっくわっくわっ♪」
「く、屈辱♪くわっくわっ♪」
夢魔から夢を取り返す…とりあえず、夢魔が何か持ってないか確認してみた。手には持ってない。
「がぁがぁがぁ♪」
「おまえ、なにがぁがぁがぁ♪」
「リストバルト様」
マカラ嬢にナイフを渡された。ええと……
「…これで腹を裂けばいいの?」
夢魔が真っ青になった。散々私にはやったくせに、やられるのは嫌なようだ。
「はい。ザックリいっちゃってください!」
マカラ嬢は毒の花を思わせる、それはイイ笑顔を見せてくれた。クールな印象だが、笑顔は少し幼い印象だ。
しかし、私の夢は食べられちゃったということだろうか。なら仕方ないな。こいつ夢でとはいえ私を散々殺したり、家族や親しい人たちも苦しめて殺したんだ。因果応報というものだね。
「縦に?横に?」
気になったので、マカラ嬢に確認した。
「縦二分割横四分割でお願いします」
「八つ裂きだねぇ」
上手くできるかな?相手はおしりをフリフリしていて動いてるし。
「くわっくわっくわっ♪」
「くわぁぁぁ!?やめろおぉ!?くわっくわっ♪」
夢魔から光が溢れた。ナニかが私の前に現れる。これが私の夢?キラキラした水晶のようなもの。水晶と言っても磨かれた球体ではなく、原石みたいなやつだ。
それに触れると、世界が一変した。どこまでも続く青空と草原に周囲の景色が変わったのだ。
「ちっ、根性がない夢魔ですね。まぁ、無事リストバルト殿下の夢を取り返したのでよしとしますか。もう無力ですからいいですよ。バルちゃん、お疲れ様でした」
マカラ嬢が舌打ちした。まったくだ。私には散々同じことをしたくせに。
アヒルダンスから解放された夢魔は怯えていた。
「ひぃぃぃ…あ、あんたと違ってこの世界じゃ俺は生身なんだよ!刺されりゃ死ぬんだ!しかも夢を返したから、丸腰なんだよ!!」
ふむ、なるほど。
「マカラ嬢、意見を聴きたい」
「はい」
「この夢魔を殺すのは容易い。しかし、他に使い道があるんじゃないかな?」
「そうですね…しかし、よろしいので?コレは殿下にかなり酷いことをしたのでしょう?」
「疲労もあって無気力だったから、心底どうでもいいし…君に預けたら面白そうかなって」
「まぁ…リストバルト殿下ったら…頑張りますわ」
毒の花のように可憐な美少女は、私に何を見せてくれるのだろうか。
「ああ、頼んだよ」
ほぼ無気力無感動だった私は、久しぶりに心からわくわくしていた。
・リストバルトが夢魔から解放された!
・リストバルトが仲間になった!
・夢魔がマカラの下僕になった!
あらゆる意味でギリギリだったリストバルト様。少しずつまともになる……気がしないのはなんででしょうか。
あまりにも動じないのは精神的にも肉体的にもギリギリだったからですが、本人はもとからポヤッとしているため周囲にはわかりにくかったようです。
とりあえず、寝とけ。




