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アヒルとお尻

 久しぶりに夕食を家族で食べ、引き留められたが私は学校の寮に戻った。寮は貴族の子女が住むため、かなり広い。キッチン・風呂・トイレつきだ。さらにリビングと寝室、従者またはメイド用の部屋もあるが私は連れてこなかったので使われていない。身の回りの事はひととおり出来るし、寮の部屋には同居人がいるからだ。

 さっさと実家から戻ったのも、そのためだ。


「おそい。はらへった…」


「ごめんなさい。軽食を貰ってきたから食べて」


「うん」




 白くて綺麗な、アヒルが私を出迎えた。





 同居しているこのアヒル、実は使い魔である。はむはむと軽食を食べる姿はとても愛らしい。鶏肉も食べる、雑食アヒルである。


「たべにくい。にんげん、なりたい」


「はいはい」


 私の魔力をこめたペンダントを渡すと、魔力を吸収して美青年の姿に変わった。

 使い魔とは、普段動物の姿をしているが主の魔力を貰うことで人型になれる魔獣である。

 バングルは私の使い魔ではなく、主人とはぐれてしまったので私が保護している。




 あれは私が木陰で休憩していた時だった。


『助けて!食われる!誰か助けてぇぇぇ!!』


「!?ソルレイク語!?」


『!?あんた、俺の言葉が解るのか!?』


 バングルは最初ソルレイク語しか喋れなかった。ソルレイク語は発音が独特で、知らない人間からすれば変わった鳴き声にしか聞こえなかったらしい。

 おまけに私はたまたま語学に興味があったから習っていたが、ソルレイクは海を渡って遥か北の国。ソルレイク語を知る人間はこの国にはほぼいないだろう。


『ええ、解りますわ。貴方、誰かの使い魔?』


 私はソルレイク語で答えると、アヒルをそっと抱き上げた。


『俺は…ひぎゃあああああ!!来た!奴が来た!!食われる!殺されるぅぅ!!』


 包丁を持った料理人の迫力は相当でした。刃物を持っているし、目は血走っていて私もかなり怖かった。コックスーツを着ていなければ、殺人犯と勘違いしたかもしれない。

 そんな男に追われたアヒルはパニックを起こしていた。無理もない。料理人の気迫はそれほどだったのだから。


「お嬢さん、それは晩の食材なんだ。こっちに渡してくれないか」


『いやだああああ!死にたくない!!助けて!助けてぇぇぇ!!』


 泣き叫ぶアヒルが流石に哀れだったので、私は助けてあげることにした。


「この子は誰かの使い魔だと思われます。勝手に調理したら、外交問題に発展するやもしれません」


 嘘ではない。ソルレイクの人間の使い魔であるなら、外交問題になる可能性はある。野良の可能性もあるにはあるが、余計なことは言わなかった。


「え!?」


「外交問題になるかもしれないのに放置するわけにはまいりません。この子は私が買い取ります。これで足りるかしら?」


 相場より高いお金を料理人に渡した。料理人は急いで別のアヒルを手配しなくてはならないからと走り去った。


『………助かった、のか?』


『はい。貴方、使い魔なんでしょ?ご主人様が見つかるまでは私が面倒を見てあげますわ』


 こうして、アヒルことバングルとの共同生活が始まったのである。






「うまい、けど、ルージュのごはんのが、いい」


「スープを作るよ。ちょっと待ってて」


「ありがとう」




 アヒルことバングルが食べ終わると、私は早速バングルにねだった。


「アヒルになって」


「は?」


「アヒルになって」


「なぜ」


王太子(バカ)にフラれたのよ!慰めて!バングルのお尻で癒して!!癒しが欲しいのよぉぉ!!」


『…別に慰めなら人間の姿でも問題ないだろう。ほら、撫でてやるから来い』


 バングルはアヒルでも人間でも美しい。純白のアヒルは人間になると銀髪にアイスブルーの瞳を持つイケメンに変わる。

 バングルは海を隔てた遠い国、ソルレイクから来たらしい。だから私の国スカイルの言葉を話す時はカタコトになってしまう。ちなみに私はどっちも問題なく話せる。発音も完璧だ。

 バングルは人型のまま慰めてくれるらしい。私に向かって手を広げたバングルに抱きついた。


「う、うわあああああん!!」


 バングルに抱きついて、私はようやく泣けた。


『よしよし。見る目がない王太子(バカ)なんぞ忘れてしまえ。お前はいい女だ。俺が保証してやる』


「うわあああああん!」


 バングルは優しい。頭をナデナデしてくれる。


『…尻を揉むな。アヒルじゃない尻に興味はないのではなかったのか?』


『いいじゃない、減るもんじゃないし』


 バングルは何か言いたげだったが、苦笑して最後には受け入れた。とてもいいお尻です。アヒルの時には負けるけど、適度に固くて気持ちいい。


『…好きにしろ』


『わぁい!ならアヒルになって!』


『………相変わらず身の危険を感じるな』


 そう言いつつ、アヒルになってもふもふさせてくれた。純白の羽毛はふかふかで幸せです。


 特に魅惑のお尻は絶品でした。


 ふっかふか胸毛も捨てがたいが、あの歩くたびに揺れるプリップリの尻は誘っているとしか思えない!けしからん尻をはむはむしてやりました。すごく嫌がってたよ。仕方ないからスリスリするだけにしてあげたよ。


 いやあ癒された!王太子(バカ)殿下がどうでもよくなるぐらいに癒されたよ!ありがとう、バングル!君(のお尻)のおかげだよ!

 アヒルのバングルが仲間になった。バングルは穏健派ですが、かなり王太子に怒ってます。

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