バングナルトの事情
新章突入です。説明回になります。
バングナルト様は父と私の願いで我が家に滞在することになりました。
今は客室にバングナルト様、クレスト様、私が居ます。
「さて、詳しく話していただけるかしら?」
私は遮音と遮断の結界を張りました。魔法については攻撃はあまり得手でないのですが、補助・回復・結界の才能がありましたので、磨きましたのよ。
「うあ、何この変態的なまでに難解な結界!」
「…うふふ」
結界は糸を紡ぐように作り出すのです。編み物…特にレース編みが得意だった私は、結界も大得意ですの。
「…俺にはよくわからんが、ルージュ的に結界は編み物と似てるらしいぞ」
「何それ!?」
「さて、どこから話したもんかな……」
バングナルト様はため息を吐きつつも話してくださいました。
バングナルト様とクレスト様のお話はこうでした。長かったので私が要約いたしますわ。
バングナルト様は、第二王子としてお生まれになりました。第一王子は正妃様のお子さんなので、現在王太子となっております。バングナルト様は側妃様のお子さんで、第一王子殿下とも仲がよいそうです。
ただ、バングナルト殿下は生来魔力が強く、ソルレイク王族特有の体質である『魅魔の魔眼』を持っておりました。しかも美貌で優れた第二王子。
バングナルト様を王にと望む人間もいたようです。ちなみに第一王子は魔眼がないそうですわ。
バングナルト殿下の『魅魔の魔眼』は、見つめた相手を魅了してしまうらしいですわ。だから魔眼を無意識で発動させないために、常に仮面をつける必要があったそうです。
魔眼だけでなく、取り入ろうとする人間や彼を王様にしようとする人間に嫌気がさしたバングナルト様は考えました。
だったら王様なんか相応しくない男になればいいじゃんか!
自暴自棄なうえ人間嫌いになったバングナルト様は、それはもう周囲に冷たく当たったそうですわ。だから氷の王子様なんて噂がありましたのね。
そして、それを良しとしなかったのがバングル様の婚約者であるピアス=ビネー公爵令嬢でした。
ビネー公爵はバングナルト様を王に推す派の中心です。そりゃ、娘を王太子妃にしたいですよね。
だから、冷たい態度のバングナルト様では困るのです。幸いバングナルト様は常に仮面を着けているから……言うことを聞かないなら、すげ替えてしまえばいいと考え、彼をアヒルにしたのだろうとの事でした。
「甘いですわね」
現にバングナルト様は生きている。
「どうも当初はアヒルに変えて俺を屈服させる予定だったようだ。元婚約者がそう言っていた。あれは気位とプライドが異常に高いから、あれを邪険に扱った仕返しも兼ねていたんだろう。あれは俺の地位と顔しか見てない上に性格も悪いから、あれを愛するのはどう考えても無理だがな」
「なるほど」
アヒルとして無力化されたはずのバングナルト様は大暴れしてピアス嬢をつつきまくり逃亡した。アヒル化はバングナルト様の魔力を無力化させるためでもあったらしく、バングナルト様は逃亡の末に魔力をほぼ失い、気がつけば食用アヒルとして捕まって…私に出会いました。
さらに、ビネー公爵側が誤算だったのがクレスト様の存在ですわ。バングナルト様の失踪の穴を、クレスト様が埋めたのです。元から目の色以外…特に背格好がよく似ていた母方の従兄弟で乳兄弟だったクレスト様。クレスト様はバングナルト様をよく知っていたから、自分からの失踪ではないと知っていたのです。
そして、幼馴染みでもあった第一王子とクレスト様はバングナルト様が生きていると信じて探し続け、ついに見つけた、というわけですわ。
「俺、頑張ったよ!めっちゃ頑張ってたのに、バングナルトってば可愛い女の子とイチャイチャしてんだもん!」
「…すまん」
「ごめんなさい」
私とバングナルト様は謝罪いたしました。
「ルージュちゃんは別になんも知らなかったんだから悪くないよ!悪いと思ってるなら、可愛い女の子紹介してくれよ!」
「…ピアスとか?」
「お前、確かに顔はいいけど自分で無理だと思う性格どブスを押し付けんなよ!!」
「ええと…見た目は儚げな妖精さんだけど中身は益荒男な感じの子と…」
「待って!益荒男って男だよ!?ってか、ギャップ萌えってレベルじゃねぇ!!」
「では外見は気が強そうな美人だけど、中身は大人しいと見せかけてかなり毒舌な女の子…」
「なんか怖いんだけど!?」
「怒らせると一服盛られるかもしれませんが、とてもいい子なんですよ」
「いやいや、いい子が毒を盛るな!!ルージュちゃんの交遊関係どうなってんの!?」
クレスト様は親しみやすい方ですわね。いつの間にかちゃん呼びですわ。
「いたって普通ですわよ?」
「とりあえず普通の定義を問いたくなるが…まあ友人関係は良好だったぞ」
「…そう。まぁ、もういいや」
脱線しましたが、クレストさんの活躍によりバングナルト様の不在は誤魔化されました。
そして、国に戻ったバングナルト様はピアス嬢と婚約破棄してめでたしめでたし…とはならなかったのです。
ピアス嬢との婚約破棄はできました。しかし、公爵を糾弾する証拠がないのですわ。
「俺達の証言だけでは、元婚約者が切られて終わりだろうな。だから婚約破棄も表向きは性格の不一致による解消だ」
「では、これがバングナルト様の婚約者としての初仕事ですわね」
「そうだな」
「うっわ、頼もしい…」
うふふ、相手に不足はありませんわ!
ルージュ=ガーネット!いっきまぁぁす!!
今回からバングナルト編ということで、恒例の(笑)
・ルージュが仲間になった!




