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私、みみっちい仕返しをいたします  作者: 明。
番外・マカラ編
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酷すぎる上映会

 これは、とある粘着質な気持ち悪い付きまとい男の話です。


 静かに悪意を込めた女性の声から映像が始まった。この声はお義母さんだな。のっけから酷い。


 そして、7歳ぐらいから男がやらかしていたことが発覚。奴はマシューさん…お義父さんにこんな年から毒を盛っていた。理由は様々あるが、そもそも男は誰からも愛されなかった。その理由が美しく賢く魔力も高い兄がいるせいだと思いこみ、犯行に及んだ。再現VTRまで…完璧に映像魔具を使いこなしている。無駄にクオリティが高い。


 最初はストーリーになっていた。美しい兄とそれを妬む弟。美しくなろうと母の化粧水を使って叱られ、おねしょが治らず、使用人を馬鹿にするため使用人からも嫌われた。常に相手の悪口をあることないこと言うため、親からも見捨てられていた。


 次に証言者の話に移行したが、これまた酷い。証言者は目に黒い四角がついているものの、服装や髪型でなんとなく誰だかが僕でもわかる。ほとんどがお義父様の屋敷にいた使用人さん達じゃないか!


「…あの坊ちゃんは私ら使用人に対しても酷くてねぇ。あたしゃ見たんですよ。マシューぼっちゃまの食事に毒を仕込むのを!しかも、毒味が終わったのを見計らってですよ!?まぁぁ、性格の悪いこと!あたしが声をかけたら、今度はあたしの口を封じようとゴロツキまで雇ったんですよ!でも、マシューぼっちゃまがあたしや家族を保護してくだすって…あの馬鹿のしでかした事は黙っていてとお願いされました。ぼっちゃまは、あの恩知らずをずっと庇ってらした……お役人様、あの悪魔みたいな男に、厳罰をお願いいたします!!」


 今証言したのは確かお義父さんが離れで暮らしてたときに世話係として仕えていた人だ。


「ふむ…では死刑「いやいやいや!まだ続きありますから!罪もひとつじゃないですし!!」


 頑張ってください、クレストさん。後で公正じゃなかったとか言われたくないですから。もう、クレストさんが司法官長の役をやったらいい気がします。


 次に出てきたのは、まだ若いメイドさん。こちらは本宅の人だったはず。


「マシュー様は私達にもお優しいですが、この男は気に入らない使用人や借金がある人、路上生活者を毒の実験体にしていました!人間かどうかも疑わしいです!!怖くて怖くて言えなかったけど、こいつのせいで人がたくさんたくさん苦しみぬいて死んでます!どうか、どうか許さないでください!!」


 気のせいかな。罪が増えたよ。僕は魔力で解毒していたけど、それができなくて死んだ人がいたのは確かだ。どうなったかは知らないけど、ボクが魔力実験をしていた頃に同じ部屋のベッドで寝ていた人が居なくなることがよくあったから。


 屋敷の人達はずっと黙っていた。そうしなければ、次に死体になるのは自分達だと解っていたから。その悲痛な訴えに、全員が眉をひそめ…死者を悼んだ。


「デタラメだ!私が醜く、気に入らないから捏造したのだ!!私は殺してない!証拠がないだろう!!」


 叫ぶ男に、周囲の瞳は冷たい。かなり詳しく話した使用人もいたので、男の話を信じた者はいないだろう。男の言葉にヤジを飛ばす者もいる。


「じゃ、別のやつ、いってみようか」


 クレストさんが指を鳴らすと次は、女性達が画面に映った。顔に可愛いウサギさんのスタンプがついている。今度はなぜよりによってスタンプ系……。ウサギさんのついた女性は可愛らしい声で話しだした。

 

「私は昔ぃ、親が奴の家で仕事してたからぁ、仕方なく遊んであげてたんだけどぉ…ナニをカンチガイしたのかアタシをメカケにしてやるとか言い出したわけぇ。マジサイアクぅ。で、親にチクったわけぇ。したらぁ、親ちょーキレてぇ新しいトコに就職してくれたわけぇ。しかも親がアタシらを引き離したとかワケわかんないこと言い出してぇ、イミフな手紙山ほど送りつけたあげくぅ、アタシを無理矢理誘拐しようとしたのぉ。たまたまそん時のカレシがそれなりの冒険者だったから無事だったけどぉ…昔っから粘着質でサイテーな男よぉ」


 さらに、女性は男からの大量の手紙を提出した。処分したかったが、騎士団に付きまといの証拠として提出し、何かに使えるかもとしまいこんでいたそうだ。


「ちなみに、その手紙を証拠として提出する。内容を見ればわかるだろうが、こいつは粘着質で妄想癖がある」


 クレスト様がカゴに山盛り入った手紙を証拠として提出した。司法官長が確認する。


「……被告人に質問します。何故この手紙には愛しているしか書いていないのですか?怖いのですが…」


 明らかに司法官長がドン引きしている。せめて他の内容も書いてほしい。愛しているだけがびっっしり書かれた手紙なんて、恐怖しか感じない。


「………昔の話です。それだけ愛していただけでしょう。裁判には関係ないと思いますが」


 男は話をそらそうとした。しかし、クレストさんはそれを許さない。


「いいや、関係あるね!あんたが粘着質であり、被害者に執拗なつきまといをする人間だって証明できるからな。この後の映像も、その証拠になる!」


 そして続きが上映されたが……最後はただの悪口というか、男を貶める発言が続いた。女の人、怖い。誰もストッパーがおらず、言いたい放題だった。もはや存在を否定されていた。


「……やる」


「ん?どうしましたかな?」


 司法官長が男の異変に気がついて声をかけた。


「ころして、やるうぅぅぅ!!」


 男が手錠を焼きちぎり、司法官長に襲いかかろうとした。


「ストロングファンデ!!」




 べち。





 しかし、ファンデ様のよくわからない『ぼくがかんがえたさいきょーのぶき』とか小学生が言いそうな、デタラメに色々ゴテゴテくっつけた武器に阻まれた…というか、虫のごとく潰された。

 クレストさんがファンデ様を誉める声を聞きつつ僕も男に駆け寄り手錠を確認する。これでは魔力が高い男の魔力を封じきれない。キャパ以上の魔力を入れられて壊れたらしい。


「クレストさん、この手錠じゃこいつにはキャパが足りません。護身用の封印具使っていいですか?」


「マジか!いいよな?」

「もちろんです!お願いいたしますぞ!私の安全のためにも!!」


 クレストさんが確認すると騎士さんは快く頷き、司法官長は身の危険を感じたらしくむしろお願いされてしまった。護身用の封印具を手首につける。どこでもいいのだが、触れれば首輪にも胴輪にもなるスグレモノだ。継ぎ目はなく、装着者の意思がないと外れない。対魔法使い用最終兵器とも言える。


 男が気絶してしまったため、一時間の休廷となった。波乱の裁判は、まだ始まったばかりである。 

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