復讐劇、終幕(フィナーレ)
ざまぁされる側視点になります。
私は、自室で目を覚ました。
「朝………か?」
前日の事を思い出そうとすると、頭が痛い。机から、手紙が落ちた。
『大事な話があるから、何があろうと来なさい』
封筒の中には招待状があり、私はソルレイクに……記憶が一気に戻ってきた。動悸がする。悪い夢だったのだ。そうだ、夢だったのだ。だって『妻』はここで私の帰りをいつも待ってくれているじゃないか!
娘が兄の子だなんて嘘だ!彼女と私は愛し合っているのだから。
「旦那様、お目覚めでしょうか。国王陛下からの使者の方がいらしております」
「……今行く」
そうだ、悪夢だったのだ。呼び出しは今日なのだ。そうに違いない。
使者は王からの伝言を持ってきた。今日中に城に来るようにとのこと。また毒殺の依頼だろうか。
承諾の意思を伝え、今日は予定もないので城に向かった。すぐ謁見の許可がおり、謁見の間に通された。
「大変なことをしてくれたな」
何の話だろうか。ただ、王の様子からいい話ではないようだ。黙って頭を下げる。
「他国の、しかも娘の結婚披露宴であの醜態…ただでさえ我が息子がやらかし過ぎているのに、我が国のイメージが最底辺になったらどうしてくれるのだ!!」
「え…?」
娘の、結婚、披露宴…?醜態??
理解して、一気に体感温度か下がった。まずい。まずすぎる。多数の他国の貴族がいる場で、攻撃魔法を乱発したのだ。処刑は免れない。
「…どうした」
王が私の様子に気がついた。いや、まだ諦めるのは早い。従順にふるまえば、逃げるチャンスはあるだろう。
「……いえ、申し開きのしようもございません。私は現在の仕事を片付け次第、牢へ参ります。領主の仕事が疎かになれば、民が困りましょう。引き継ぎができるようにしておきます。今まで、お世話になりました」
「ふむ、ならばそなたの兄に引き継ぐがよい。そなたの兄は傑物であった。領主の仕事は問題なかろう。もう一つは、娘の方に才がある。あれに終わらせてもらうとしよう。国はもう揺らがぬ。そなたもゆるりと休むがよい」
今まで散々私に汚れ仕事を押し付けてきておいて、私を切るだと!?裁判の場で、王がいかに非道であるか全て暴露してやる!どうせ死ぬ身だ!余罪が増えようと痛くも痒くもない!
王は、私の言葉を信じたのか見張りに数人の騎士をつけたが私の帰宅を許した。
馬車に揺られながら、頭を回転させる。大人しく処刑されてやるつもりなどない。家財を持って逃げなくてはならない。国外で、我が国と親交がなく我が力を欲する国の候補をいくつかあげながら帰宅する。
そうだ。
どうせなら、皆殺してしまおう。私はなにも悪くない。私を裏切ったもの達が悪いのだ。怒りの炎を身の内に宿しながら帰宅する。騎士達は退路を絶つためか、玄関や裏口を見張っている。まあ、騎士数人ぐらい、薬を使えば無力化するのはたやすい。なんの問題もない。
それよりも、大切な妻をどうやって運ぶか思案して執務室に入る。執務室の棚から高価な薬を選別し、袋に詰めていると、車椅子に乗った諸悪の根元が来た。
「おかえり。何をしているんだい?昨日は大変だったね。大丈夫…」
最後まで喋らせなかった。持っていたナイフで心臓を一突き。我が家は毒と薬、医療に特化している。手応えはあった。即死だろう。さらに何度も何度もナイフで刺し、美しい顔の面影はなくなった。
「ふはははは!あはははははははははははは!!」
「ひっ!?」
使用人が怯えた様子で悲鳴をあげた。弾かれたように逃げ去ろうとしたので、それも一突きして執務室に投げ込んだ。
「なんの騒ぎですの?」
「ああ、なんでもないよ。家族水入らずで、どこか遠い場所へ行こう!」
「…お断りします。そもそもお前は私の家族などではないわ。私の家族を殺したお前は、仇でしかないわ」
「ち、違う!殺してない!私ではない!これは誰かの陰謀だ!」
「…違うわ。お前、母様も殺したでしょう」
「違う!彼女と私は愛し合っている!!そうだ、彼女を追い詰めたのはそこの間男だ!彼女は今でも私を待っているんだ!」
そうだ、妻は死んでいない!私は慌てて妻の様子を見に行くために隠し部屋へのスイッチを作動させた。
「…そこね!でかしたわ、夢魔!お父様、馬鹿を捕まえておいて!!」
死んだはずの間男が勢いよく起き上がり、車椅子が宙を舞う。
「ぐふっ!?」
車椅子が私の背中に直撃した。骨が折れたかもしれない。激痛が背中に走る。
「もう、おしまいです。お疲れ様でした」
「!?」
根性なしが私の手足に枷を嵌めた。魔力が一気に吸われている。
「…………………」
そこには、記憶よりもやつれた妻が顔をしかめながらマカラに支えられて立っていた。ずっとガラスの棺で寝ていた妻が、ようやく目を覚ましたのだ!私の治療が効いたのだ!!
ああ、会いたかった!私の、私だけの支配者にして最愛のひと。私は歓喜に震えながら彼女に話しかける。
「マスラ!私は」
「何があったのですか!?」
騎士達が部屋に飛び込んできた。状況が読めないのか、部屋に入ったはいいが固まってしまった。
「どうやら、国外逃亡するつもりだったようですよ?」
録画の魔具で騎士達に説明する根性なし。騎士達は画像を確認し、青ざめたが間男が無事である事に驚いていた。私も何故奴が無事なのかがわからない。根性なしが説明すると、彼らは納得して私を連行しようとした。
「待て!待ってくれ!!妻と話をさせてくれ!!頼む!少しでいい!!」
「…私は話したくないんで、さっさと連れていきなさい」
妻は私を見なかった。忌々しいと言わんばかりに顔を歪めて吐き捨てるかのように…不快げだった。
「マスラ、マスラああああああああ!!」
嫌だ!彼女と引き離されるなんて耐えられない!!
「マスラ、マスラ、マスラああああああああ!!」
だが、どれだけ泣き叫ぼうとも無慈悲な騎士達は私を引きずっていく。泣き叫び、手を伸ばすが、その手が届くことはなかった。




