復讐劇の開幕
ざまぁされる側視点となります。途中混乱する描写があります。誤字ではなく仕様です。
最近距離が近くなった娘。私の愛する妻に生き写しの娘。その娘からソルレイクに招かれた。
『大事な話があるから、何があろうと来なさい』
その気高さ、美しさ。ここ最近さらに美しさに磨きをかけた娘から蔑まれ、蹴られることに快感を得ていた。
娘は妻の生まれかわりなのではないだろうか。だって、彼女は生前と同じく私の気を引くために他の男を愛するふりまでしていたのだから。
それは盛大なパーティだった。ソルレイク城の大広間で行われていた。我が国の高位貴族も招かれたのか、見知った顔がちらほらといる。
「おじ様!お久しぶりですわ」
「元気か…ですか?久しぶりだ…ですね」
私の娘を連れていったルージュ=ガーネット嬢。思うところはあるが、彼女は娘の大事な友人だ。嫌な態度を取ろうものなら、娘から嫌われ無視される。
山猿娘も何か変化があったようだな。まあ、今さらだがマナーを学ぶ気になったのはよいことだろう。
「久しぶりだね」
「おじ様、こちらへいらして」
「こっちだ…ですわ」
恐らく彼女達は娘の居場所を知っているのだろう。素直についていくと、忌まわしい男がいた。
「やあ、君もお祝いに来たのかい?」
「祝いに?」
音楽と共に、最愛の人が純白のドレスとヴェールを纏って現れた。
傍らには、穢らわしい豚のように肥えていた男。偉そうなことを言いながら、最後には娘を諦めた根性なしだ。
「結婚おめでとう!」
「マカラ様、おめでとうございます!」
「マカラ様、おめでとう!」
けっこん?
血痕、血管、血幹、葛根??
「きょうはマカラとリヒャルト君の結婚披露宴なんだよ。まさか、知らなかったの?」
結婚、披露宴??
私は、ようやくその単語を理解した。あの根性なしは私の最愛の女性の隣で新郎のふりをする。
根性なしの顔が、兄に変わった。
そうだ、この男だ。
この男が私の最愛の妻を奪った。汚した。
許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないゆるさないゆるさないゆるさないユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!
怒りで目の前が真っ赤になり、最悪の間男へと攻撃魔術を行使した。
「うわああああああ!!」
足が悪い男は、炎を避けられない。灼熱の業火で悶え苦しむがいい。
悲鳴をあげて紳士淑女が我先にと逃げ惑う。
私はもう一人の間男に魔術を放った。
「嫌だなぁ、こんなヘボい術式で僕を殺せるとでも?」
私の魔術を消し去る間男。こんなはずはない!私の魔術は完璧だった!こんな根性のない男が、気づかずに毒を飲むような間抜けが、私の魔術を防げるはずがない!!
「無駄ですよ」
勝ち誇った笑みを浮かべる愚か者に、全力で魔術をぶつけたが……それは飛び込んできた卵形の物体に弾かれた。
「ちょっと、お義父さん!無理しないでくださいよ!いくら魔力障壁があるからって無茶すぎる!!」
「あはは。流石に今のはまずいかなぁと思ったら、勝手に動いちゃった。これ本当に便利だねぇ。いくらぐらいなの?」
卵が消え、車椅子に座って柔らかく笑う間男。先程しとめたはずだが、傷ひとつない。ただひたすらに、この男には憎悪しかない。子供の頃から嫌いだった。だから、手を出した。
「もう終わりにしようか、我が弟よ。お前が私に毒を盛っていたことは知っていた。致死量まで与えてないのか我が家系の体質的なものかは知らないが、私には効きが悪いようだな」
間男が立ち上がった。まさか…解毒されている!?この男の言う通り、致死量手前の毒を食事に混ぜたり茶に混ぜて与えていた。
何度か致死量の毒も与えたが、男は死ななかった。ただし生死の境をさまよい、半身不随となったはずだ。そう、私の大切なものを奪い続けたこの男への、正当な報復だったのだ。
今度こそ殺すために男の首を絞めようと近づくと、美しい花嫁が行く手を阻んだ。
「私のお父様にも、夫にも、手出しはさせませんわ!!」
娘は何を言っているのだろうか。頭が痛い。魔力を使いすぎた。
「父は…夫は…私、だろう」
そうだ。私の娘。愛する妻。私のものだ。私のものなのだ。頭が痛い。魔力が欠乏しているせいだろうか。
「…いや、マカラは私の娘だよ。すまないね。彼女は私との子供を身籠っていた。お前達に夫婦の契りがなかったのは調査済みだ。私は…もっと彼女を信じるべきだった」
「違う!そんなのは違う!!」
私は叫んだ。違う!違うんだ!何かの間違い…いや、間男が勘違いしているだけだ!!妻は私の子を産んだんだ!!
「どちらにせよ、私は正当な法的手続きのもと、貴方の娘ではなくお父様の娘になりました。勘違いしているのは貴方。ようやく他人になれてせいせいしますわ」
他人?
私と、彼女が、他人になる?
「そんなことは許さない!お前は私のものだ!別の男のものになるなど、絶対に許さんぞ!!」
以前にも、こんな会話をした気がする。
『契約を違える気か!?兄の妻に…他の男のものになるなど、絶対に許さんぞ!!』
そして、彼女が反論した。在りし日の妻に、その姿が重なる。
「違いますわ。私は私のもの。誰のものでもないわ!!そして、母様みたいにお前に脅迫されようと屈しない!!」
『馬鹿な男ね。私は私のものよ。誰のものでもないわ。私はもう、お前に屈しない』
そして、妻は毒を飲んだ。眠るように、死んだ。
「あ、ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
頭を掻きむしる。嘘だ!嘘だ!!妻は私を愛していたんだ!!私が愛しているのだから、私を愛しているはずだ!!
何故そんな事を…そうだ、あの男だ!あいつが俺の妻を奪おうとしているんだ。兄と手を組んで、妻を奪おうとしているんだ!!
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!お前が、オマエガアアアアアア!!」
懐に入っていたナイフを振り上げて、あの男…根性がない豚を刺そうとした。
「させない!」
「させませんわ!」
体に衝撃が走り、私は床に叩きつけられた。
薄れ行く意識の中、雷撃を纏った愛する人と車椅子から巨大なハエタタキを生やした兄の姿を見た。




