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#1

今回の作品は『ふしがく』シリーズ(https://ncode.syosetu.com/s2604c/)より。


今回の登場人物

夏川(なつかわ) 紫苑(しおん)

桐山(きりやま) 崇史(たかし)

 サクッ、サクサクッ。

 ある教室から誰かが何かを食べている咀嚼(そしゃく)音が聞こえてくる。


 そこには女子生徒がいた。

 彼女の名前はこの高校の3年5組に属している夏川(なつかわ) 紫苑(しおん)


 紫苑は誰もいない静かな教室でポッキーを食べていた。

 学校祭まであと数日に迫ってきており、準備に追われているクラスがあれば、彼女のようにある程度の準備を終えているクラスもある。


「崇史、遅いなぁ……」


 当然のことながら紫苑の声が響いた。

 本来は学校祭の準備が落ち着いたら彼女の教室に同級生の桐山(きりやま) 崇史(たかし)が来る予定。

 しかし、紫苑は吹奏楽部所属のため、待っている時間に限度がある。

 壁時計を眺め、焦りを堪えつつ待ち続ける彼女。

 たったった……とリズミカルな足音が紫苑の耳に入ってくる。


「紫苑、ごめん。遅くなった。うわぁ!」


 崇史が息を切らせながら教室に姿を現した。

 彼女は早速、お仕置きなのか彼の頬を摘まみ、左右に引っ張ったりしている。


「ごめんじゃないよ! 私は部活もあるんだし、急がなきゃならないの!」

「そんなの分かってるよ! 痛いから離して、お願いだから!」


 崇史は紫苑の事情は分かっているが、自分のクラスの準備の合間を縫って駆けつけてきてくれているのだ。

 彼は彼女がどういう真意で呼び出したのかは分からない。


「ねえねえ、崇史。今日はなんの日か分かる?」

「11月11日だから……いいイヌの日(・・・・・・)か?」

「ざーんねーん。正解は()()()()()()()()()()()だよ」

「だから、紫苑はポッキーの袋を持っていたのか!」

「その通り!」


 崇史はようやく紫苑の手にポッキーの袋を持っていたことに気がついた。

 彼女が言った通り、本日はポッキーの日であり、プリッツの日でもある。


「ポッキーといえばあれだろう?」

「え? 何なに?」

「ポッキーゲーム。試しにやってみないか?」

「いいけど……待っている間にほとんど食べちゃったよ?」

「一本あれば十分! 俺は目を瞑って待ってるから、紫苑は同じように目を瞑ってどんどん近づいてほしい」

「わ、分かった」


 彼は袋からポッキーを取り出し、チョコレートがついた方に口をつけ、目を瞑った。

 紫苑も反対側に口をつけ、目を瞑る――


 無言の時が来た。

 ここからは彼女がサクサクとポッキーを食べつつ、崇史に近づいて行く。

 互いに今はどこの位置にいるか分からないが、距離が近づいているのは確実だ。


「……あっ……」


 紫苑は何かに触れたと思い、目を開けた。

 彼はその声に気づき、目を開く。


「口に触れたね?」

「う、うん……」

「紫苑、顔が赤いよ?」

「そ、そんなことはないよ! 多分……」


 彼女は両手で自分の頬を触った。

 紫苑の頬は熱を持っているかのように熱い。


「ははっ。俺の口に触れてたよ」

「私が目を開ける前に開いてたの!?」

「どんな顔をしてたか気になっちゃってさぁ。さて、罰ゲームをやってもらおうかな?」


 崇史の言葉に耳を疑っている彼女は首を左右に振る。

 そもそも彼はポッキーゲームをやってみないかと言ったが、罰ゲームの話は聞いていないことを思い出し、「そんな話は聞いてない!」と紫苑を怒らせた。


「言ってなかったっけ?」

「全く聞いていません!」

「もう一回やる?」

「結構です! いい加減に音楽室に行かないと福山先生に怒られそうだから! じゃあね!」


 すっとぼける崇史と数本残ったポッキーの袋を置いたまま、彼女は通学鞄を持ち、照れながら急いで音楽室に向かった。

2025/10/19 本投稿

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― 新着の感想 ―
ポッキーゲーム懐かしすぎる〜w 今でもあるんでしょうか? 今回は爽やかな感じでしたね(^^)色んなバージョンがありそうで楽しみにしてます。 なかなか普通のテンションでポッキーゲームをする時はないんで…
これは、ふしがくシリーズを読まないと……ですね。 (^~^;)ゞ のんびり更新とのことなので、ちょっとずつシリーズの方を読んでおきます〜。 (・∀・)
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