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週末までの数日間、道長は前と同じように図書館やインターネットを利用して『鏡の檻姫』について調べたが、とりわけ手がかりとなる情報は得られなかった。
一方で、井崎が話していた法律事務所については詳細がわかり、駅前の「ルイズ法律事務所」がそれだと判明した。
そして、待ちに待った週末。
早速ルイズ法律事務所へ向かおうと支度をして玄関へ向かった道長。
「あの、王女様?」
玄関には、ライアが立ちふさがっていた。
「今日はまた、どのようなご用件で?」
苦笑いの道長に、ライアは真顔で返答する。
「我もついていく」
「……えー」
「我もその法律事務所へ行くというのだ。何か不都合があるというのか」
道長はライアの着ているドレスを指差す。
「その服で表でたらどうなるか考えてみろって。目立って仕方ないぜ」
「目立って何が悪いというのだ。我は王女、むしろ目立たなければ王女としての威厳に関わるだろう」
胸を張ってそう説明するライアの服装は初めてあったときと全く変わらないドレスのままだ。
「なあ、それ以外に服、持ってないのか?」
「うむ、持っていない、というよりは書いてないのだ。あの『鏡の檻姫』には我がこのドレス以外を着ているという描写が存在しない」
「だから我はこの服装しかない、ということか。なんだよ、じゃあ外には出せないぞ」
道長の言葉に、ライアは不服そうに頬を膨らませる。
そして、しばらく考えるように唸った後にライアはぽつりと呟いた。
「……買ってくればいい」
「は?」
「買ってくればいいではないか! 服を!」
「買うって、誰が買うんだよ?」
「それは貴様に決まっているであろう」
「俺かよ! 俺が女性モノの服飾店入って、俺がレジに女性モノの服持ってレジに並べってのか!」
「よくわからんが、そういうことだ。別に法を犯すようなことではないはずだが?」
「法とかそいういう問題じゃなくてだな……」
「とにかく、買ってくるのだ! 服に靴、そして下着もだ!」
「っちょ待て! 下着ってなんだよ————」
「行け! そして日没には戻り我に料理を振舞いたまえ!」
こうして、ライアに追い出されるように道長は寮を出た。




