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だが、状況は最悪であった。
ライアの攻撃は確かに破壊の邪神に命中しているはずなのに、邪神には傷一つつかない。
そればかりか、破壊の邪神の反撃で、ライアの身体に無慈悲にもダメージが蓄積されていった。
「これじゃ、最悪の結末を避けられない…………!」
道長は戦闘ができない分、突破口を見つけようと脳をフル回転させていた。自分の取り柄は機転、そう言ってくれた霧咲殺姫の言葉を信じて。
しかし、一向に解決策は浮かばない。
蒼衣十二郎の迷宮には答えが必ず存在していた。しかし、召巻術で無敵と定義されている破壊の邪神を倒す答えなど、存在するのであろうか。
「なんとしても、最悪の結末を回避しなくちゃいけないのに…………」
解決策が、浮かばない。
道長は諦めそうになる気持ちを抑えるのに必死だった。前ではライアが破壊の邪神と戦っている。ライアが諦めない限り、道長も絶対に諦めたくはない。
「そもそも、召巻術は弱い力なんだ。どんな力でも、必ず対抗策はある。なら増幅された今であっても、何か結末を変える方法があってくれ!」
道長の脳内で、最悪の結末という単語が鬱陶しく駆け巡る。
しかし、対策がなければそれは結末であり、終わりだ。
「……………………終わり?」
そのとき、道長にある考えがひらめいた。
最悪の結末を回避するためには、最悪の結末を回避すればいいんじゃないか?
召巻術が召巻書に忠実ならば、召巻書そのものを変えればいいのではないか?
「『鏡の檻姫』をバッドエンドからハッピーエンドに改変できれば、破壊の邪神を倒せるかもしれない!」
道長は机に向かって走り出した。そこには怪しげにきらめく『鏡の檻姫』が置いてある。
横で戦っているライアは限界が近いようだ。全身から血を流し、立っているのがやっとようにも見えた
だが、これが最後の賭けだ。
机に向かった道長は、ライアに向かって精一杯の声を出した。
「ライア! 俺が合図したら、破壊の邪神にお前の必殺技を叩き込むんだ!」
「なぜだ! 我は何度も必殺技を使っているが、破壊の邪神には聞いてないぞ!」
「説明してる暇は無いんだ、俺を信じてくれ!」
「……わかった、ミチナガのためだ。我はどこまでも信じよう!」
ライアはそう言って、最後の力を使うように強く地面を蹴った。
道長は『鏡の檻姫』の最終ページを開く。あとがきのないこの本は、最後にこう書かれていた。
————王女ライアの検討むなしく、彼女は破壊の邪神に勝つことはできなかった。敗北した彼女に居場所はない。もはや、人民が囚われる鏡の世界にさえ帰ることができなかった。 完
「この結末を、変えてみせる————————ッ!」
道長は机にあった万年筆を手に取った。
『完』の文字を塗りつぶし、横の余白に新しく文章を書く。
文字は乱雑でインクが紙に滲んでいる。これで効果があるのか確証はない。だが、今更ためらうことなどない。
「これでッ、どうだッ!」
————王女ライアの検討むなしく、彼女は破壊の邪神に勝つことはできなかった。敗北した彼女に居場所はない。もはや、人民が囚われる鏡の世界にさえ帰ることができなかった。 完
しかし、彼女は諦めなかった。ライアは居場所がなくても、決して一人ではなかったから。
その諦めない気持ちを力に、破壊の邪神と再戦、そして、勝利した。 完
「ライア、今だ!」
道長はライアに合図を送る。待っていたとばかりに、ライアはかすれた声で、されど強い意志のある声で、詠唱をはじめる。
「失われた正義、そして悪と戦う同胞たちの希望よ、今こそ蘇りその鏡で悪を滅却せよ! 貫け、鏡光の槍————————————ッ!」
その攻撃は、今までのどの攻撃よりも強力で、美しい。
まばゆい光に包まれた破壊の邪神は、声をあげる間もなく、消滅した。




