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ライトノベルの召巻術師  作者: 右町田みとむ
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 メタル系の女との戦闘を後にした道長とライアは、電車に乗って法律事務所へと向かっていた。

 ライアは初めて乗る電車が気になるのか目を輝かせていたが、そこは物語の中といえど一国の女王。湧き上がる好奇心を必死に抑えているようである。

 その姿がなんとも不格好で面白いのではあるが。

「しかし…………、」

 道長は前の戦闘を思い出す。

 昨日から今日にかけて、何度死を確信したことか。

 生きてる実感を確かめるようにして、右手を開いたり閉じたりしてみる。

 なにより、女の召巻能力を封じることには成功したが、結局はライアがいなければ死んでいた。ライアには感謝してもしきれない。

 だが、ライアが戦えたのなら、今日は初めからライアが戦ってくれればよかったのではないだろうか。

 その旨を道長はライアに伝えたが、彼女は否定の意を表すように首を横に振った。

「貴様にあの能力がどう目に映ったかは知らないが。我の能力は、『当時のヨーロッパ世界で貴族が魔法使いから習う、最低限の自己防衛手段』だ。実際に、『鏡の檻姫』には全く同じ文言が書かれているはずだぞ。所詮は子供だまし程度の力しかない」

「でも、最後に女を圧倒していたじゃないか」

「あれは一般人が相手だったからだ。召巻術師としての彼女とやり合えば確実に我は負ける。だから、召巻術師としての彼女を打ち破ったミチナガは実に素晴らしいと、我は心からそう思ったぞ」

 ライアは道長に嘘を言わない。今のライアの感想は、そっくりそのまま感じたことなのだろう。

 直に褒められたことが恥ずかしくなり、道長は思わず頭をかく。

「と、とにかく。ライアの能力が大したことなかったり、あの女の弱点が簡単につけてしまったり、、召巻術って意外と元の本に忠実で、融通が利かないものなんだな」

「然り。とどのつまり、一冊の本に込められた言霊なんぞ大したことはない。それを過信して、必要以上に大きな力を行使しようとすると必ず失敗する」

 あまりにライアが淡々と言ってしまうため、道長はつまらなさそうな顔をする。

 道長の前に現れた異能は、物語の世界のようにそう便利なものではないらしい。

 それを見兼ねたのか、ライアは道長の脇腹を軽くつねってきた。

「そう落胆するでない。だがミチナガよ、貴様はまだ召巻術知らないことばかりであろう。それを解明していくのもまた面白いぞ。何か気になることがあればなんでも聞くがいい。なんたって、我は召巻術に関しては相当に詳しいと自負しているからな」

 そう言って胸をはるライアの姿は小柄な姿であれど、とても頼もしく見える。

 一方で、道長にはある疑問が残った

「なあライア、お前はどうしてそんなに召巻術に詳しいんだ? ライアはあくまで召巻術によって《召巻》された存在で、召巻術に精通しているのは別の理由がありそうだが」

 それを聞いたライアは、ひどく驚いたような顔をしてみせた。

「それは我の世界にも召巻術が存在するからだが……、知らなかったのか?」

「いや、初耳だぞ、それ」

 道長の返答にライアは少し困ったようなそぶりをみせた、そして少し考えたあと、「もしかして、」と言って道長の顔を見つめた。

「貴様、『鏡の檻姫』を最後まで読んでないな」

「ああ、読んでないけど……」

「むー。それでは召巻術師失格だぞ」

 ライアは人差し指を立てて説明する。

「召巻術は元となる書物に忠実に現れる。よって、自分がその書物で何ができて、何ができないか。それを見極めるために召巻術師は自分の本を熟読するのは基本なのだよ」

「基本なのだよって言われてもな……」

 道長はライアと会った日に読んだ、『鏡の檻姫』の冒頭を思い出す。

「あの読みにくい文章を全部読めってのか!」

 道長は頭をかかえる。

「然り。召巻術師の第一歩として、精進したまえよ」

 ライアはニヤリと笑った。それにつられて、道長も笑う。

「じゃあ寮に戻ったら、徹夜覚悟で読んでやるよ!」

 そう言っているうちに、道長たちを乗せた電車は法律事務所の最寄駅に到着した。


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