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ライトノベルの召巻術師  作者: 右町田みとむ
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 高校デビューなんてものが幻想であることを白河道長が知ったのは高校一年生の夏になってからだった。


 一年生の春。道長は実家から離れた高校に通うために学校の寮に入ることになったのだが、親元を離れるこの機会にそれまでの生活を一新しようと考えた道長は、運動経験もないのに運動部に入部。

 しかし、部活の練習がハードすぎるものだったためにたちまち全身の筋肉が悲鳴をあげて退部してしまった。

 新しく部活に入り直そうとするも、中途半端に元の部活を続けていたせいで部活の入部期間がすぎてしまい、帰宅部になるというオチ。

 そんな道長の様は高校デビュー失敗の典型的なパターンであろう。


 さて、部活に入らず、高一の間ずっと友達のいない生活を余儀なくされていた白河道長という男。彼の入学から一年が経った。

 依然として部活に入れず、友達も出来る様子さえない。もちろん彼女もできるはずはない。

 高校に入って二年目、つい一ヶ月前までは長袖でないと外を出歩けないほどに寒かったとは思えないほどに気温は上昇し、暖かい風が頬をなでる。そんな春先、白河道長は一年前と同じように放課後の帰り道を一人寂しく歩いている……つもりになっていた。

 つもりなのには理由がある。

 道長の隣で一つ下の学年の女子が歩いているのだから。


「なあ、なんで俺が後輩女子と放課後一緒に帰っているんだ? 夢か?」

「『なんで』とはなんですか! それともミッチー先輩、あたしと一緒に帰るのが嫌なんです?」

「違う、嫌じゃない。むしろ嬉しい、嬉しすぎる! 涙がでそうなぐらいだ。それと、俺の名前は道長でありミッチーではない!」


 そんなふうにして放課後の通学路で歩きながら話をしているのは白河道長と蒼衣紫苑だ。

 一見仲のいい先輩と後輩という関係に見えるがそんなことはない。高校デビュー失敗から一年、毎日授業が終わるとすぐに帰る道長の様子を見て、変な先輩だと思い紫苑が話しかけたのが知り合ったきっかけである。

 以来、二人は一緒に登校、下校する関係になったのだ。


「俺が嬉しいのは確かだ。しかし紫苑よ、おまえはどうだ? 入学して間もないこの時期、各々の部活が新入部員を集めようと新歓活動をしている。そして新入生もまた、部活に入部出来るこの時期にいろいろな部活の体験に参加するのが普通じゃないか? 充実した高校生活を送るには最初が肝心だぞ」

「大丈夫ですって。あたしはすでに充実した高校生活を送っていますから!」

「新入生用の体験部活に出ないで帰宅部の俺と話しているっていうこの状況が充実した高校生活とは思えんがなぁ。しかし紫苑。高校入って早々放課後人間観察とは一体どんな趣味だよ。相当な暇人か変人でなければそんなことはしないぞ」

「あたし、暇人で変人ですから!」

「認めるのかよ!」

「いやー、本当は小学校の頃から写真研究部に入りたいと思っていたんですけど今年で廃部になってしまって。仕方がなくミッチー先輩観察というわけです」

「そこで俺の観察をしてしまうのが変人というわけなんだが」

 そう言って呆れたような顔をする道長の隣で、頭一つ分身長が低い紫苑がニコニコと笑っている。


 夕日に映える赤髪は、ショートヘアになるようにカットされている。雪のように白い肌、人形のような容姿。すべての要素が彼女を引き立たせ、制服によく似合っている。この世界で制服が最も似合う女子は蒼衣紫苑なのであないか、そう思えるほどに。


「ミッチー先輩」

 ぼんやりと紫苑のことを見ていた道長に、紫苑が声をかけてきた。

「なんだ?」

「自分で変人だと理解している人は、変人とはいわないんですよ?」

「知るかよ!」


 はたから見ると、本当にくだらない会話をしているように見える二人だが、彼らは毎放課後こんなやりとりをしているのだからよく飽きないものである。


 こうしているうちに、二人は丁字路にやってきた。ここから右に曲がると男子寮があり、左へ進むと女子寮があるため、いつも二人はここで別れる。

「じゃあミッチー先輩、明日も朝八時にこの場所で」

「ああ、言われなくても」

 西の太陽が二人の顔を染める。

 二人は背を向け、互いの家へ向かうのであった。


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