記憶無くして転ずる
嗚呼ーーここは何処だ?真っ暗だ……
心地良い闇の中に揺蕩う私の意識ははっきりしない
【嗚呼、引っ張れた。ワタシの子に出来る。これでまたワタシの中が賑やかになる。嗚呼、ワタシの中に堕ちて来たのだから、お前も今からワタシの愛しい子。さぁ、空想街に何を望む?】
空想街ーー?
【どんな空想も現実に変える街さ。お前の元いた世界と理の違う世界さね。空想ーー謂わば願いを現実に変えるのさ。さぁ、ワタシの愛しい子。何を望むんだい?言ってご覧。ワタシが現実に変えてあげよう】
優しくて温かい闇に抱きしめられる。まるで、母親の様な……
ーーーーーー!!
そこで、忌まわしい記憶が脳裏から噴き出した
【可哀想に。お前はなんにも悪くないんだよ。悪いのはお前を裏切った奴らさね。大丈夫。これからはワタシが守ってあげるからねぃ。お前はなぁんにも心配しなくていいんだよ。お前はもう苦しまなくていい、悲しまなくていい、憎まなくていいんだよ。さぁ、お前の望みを聴かせてご覧?】
私……私の望みは…………
この忌まわしい記憶と名前を消してくれ。二度と思い出す事のないように。二度と名乗らなくていいように
【食べてあげようねぃ。お前の望む通りに。でも、もしもの時の為に、食べた記憶はワタシが持っておこうねぃ。でも、お前が望まない限り、お前が苦しむようなこの記憶を戻さないと約束しようねぃ。さぁ、いらない記憶は食べてしまおうねぇ】
瞬間、頭に中に何かが雪崩れ込んできた。頭を鷲掴みにされ、引っ掻き回される様な感覚
だが、不思議と心地良い。この何かに全てを委ねておけばいいんだ
食べられていく記憶。どんどん、記憶が無くなっていく
嗚呼ーーこんなに心が穏やかになれるのは初めてだ
最後に残った記憶が食べられていくのを感じながら、私の意識は闇に溶けてゆく




