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魔導の街クレト

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 他にもアホなことや遊〇王のことばっか喋ってます。

 窓から射す朝の日差しで、クロムは目を覚ました。

 昨日も見ているはずの朝日が妙に眩しく感じるのは、昨日ずっと洞窟にいたからだろうか。


 食事を取りに広間に向かい、宿の主人からキャベツのスープとパンを買ってから、適当な席に着いて食事を始めた。

 少しして「よう」という挨拶の後、隣の席に自分と同じような食事が置かれ、男が座った。癖のある茶髪の上には、見慣れた黒のつば付き帽はまだかぶられていない。

 「おはよ」とクロムは軽く挨拶を返して、そのまま食事を終えると少し散歩に出ると言って宿を出た。



(・・・魔導関係のお店が多いなあ)

 歩き回っている間に目につくのは魔導書や巻物、錬金素材といったものの店だ。

 ナケシの街に比べると店の数そのものは少ないが、その中で魔導に関係する店の比率が高いのがクロムにも分かった。

 少し不思議な雰囲気が漂うその通りを抜けると、広い通りに出た。通りの反対側には高い柵が左右に延び、それに沿うようにして道が分かれていた。


(屋敷・・・かな?)

 ざっと見ても普通の建物の何倍もありそうな長さに広がる柵の向こうは、木が多くてあまり良く見えない。

 すると、左の方で3、4人の少年たちが柵の角を曲がっていくのが見えた。さらに、その一団と同じぐらいの年格好のーークロムと殆ど同じぐらいのーー少年少女たちがぽつぽつと同じ道を辿っていく。


 少し気になって、同じように角を曲がり、歩き続けた。

 すぐに大きな門が見えてきた。門は大きく開けられ、中の様子は良く見えそうだった。

 少しだけ不思議な緊張感を感じながら、正面に立って、ゆっくりと見上げる。




 いくつもの大きな建物、それに続く道、広大な庭。

 頭一つ抜きでた高さの時計塔が、太陽の光を受けて輝いていた。



 門の看板には屋敷の名前が書いてあったのだろうが、クロムは大陸文字を知らなかったのを思い出して読むことを諦めた。

 少年たちはこの建物に用があるようで、続々と入っていく。


 クロムは、どこか屋敷とも城とも違うような雰囲気に思わず見入っていたが、

(とりあえず、一旦戻るか。見たいものはたくさんあるし)

 しばらくして我に返ると、元来た道を戻っていった。



 バルと合流して宿を出た後、先程見た建物のことを聞いてみたら、

「魔導の学校じゃねえかな。ま、俺たちには縁の無い所だ」

 と返しただけで、話を切ってしまった。

 その後は、道具屋で魔物の落とし物や洞窟の鉱石などを売ってから自由行動とした。





(魔導・・・魔導か・・・・・・

 これの使い方を聞く限り、やっぱり覚えるのって難しいのかな?)

 物の試しにと買ってみた“パワーアップ”の巻物を手に持って眺め回しながら、クロムは考えていた。


 魔導の巻物は、魔導の呪文を紙に書き込んで魔力を込め、紙を巻いて封をしたものであり、封を開けて巻物を開くことで魔導が発動するものだ。

 基本的には魔導を使えない人間、あるいは魔導士が補助として専門外のものを使う一回きりの消耗品であり、大体は安価なものである。


 しかし、魔導を学ぶための学校があり、こんなものが売られているということは、魔導は中々習得の難しいもののようだ。


「やっぱり難しいかー・・・?」

 ついつい声に出して呟いたその時、



「あっ、すみません、その子を・・・!」


 という声がしたかと思うと、小さな影が飛び出し、クロムのふところに飛び込んできた。


「おっ・・・と!?」

 突然のことに少し驚いたが、ひとまず人にぶつかってもがき続けるそれを捕まえて見る。

 兎に似た真っ白なその小動物の額には、宝石のようなものがくっついていた。


「は、はあ、はー・・・お、追い付いた。

 すみません、その子は学園で飼ってるカーバンクルで・・・」

 さっき聞こえた声の主が、すぐそばまで追い付いて来ていた。


「あ、ごめん。返すよ」

 学園の生徒のようだ。

 明るい少女の声に返事をして、顔を上げる。


(うわ、真っ白)

「・・・んー?」

 白いコートに白いズボンといった出で立ちの少女は、クロムの顔を見ると人当たりの良さそうな笑みを消し、何かに気づいたように首を傾げる。揺れる髪も見事な銀髪だ。

(・・・あれ、もしかしておれ変な顔してた?)

 少女の表情の変化に少し焦ったクロムだったが、


「あれ?君、中央学園の生徒?」

「いや、違うけど」

 杞憂だったようだ。


「あ、失礼しました。

 カーバンクルを捕まえてくれてありがとうございました、それでは」

 そう言うと、クロムから小動物を受けとった少女は、最初と同じ微笑みで小さく礼をして走り去っていった。


「ああ、うん・・・」

 クロムはぼんやりと少女を見送った。


 やがて自分も歩き始めたが、

(一瞬、態度変わったな・・・)

 言葉遣いが丁寧だった時は、どこかよそよそしいような感じがした。


(他人行儀ってやつかな)

 バルが「縁の無い所だ」と言っていたのを思い出す。




「魔物が出るような所?この辺りにはちょっと無いかな。

 トンネルは崩れたって聞くし・・・強いて言えば、学園が魔力の溜まり場みたいなものだけど、あれは誰でも入れる訳じゃないしな」

 魔物を狩って先程のようにお金にできればと考え、道行く人に訪ねたが、そういった場所もないようだ。




「えっ、じゃあバルも収穫無し?」

「ああ・・・ま、こういうこともあるだろ」

 夜になって、宿屋に戻ったクロムはバルと予定の相談をしようと思ったが、向こうも特に変わった話は聞かなかったようだ。


「あ~・・・そうだ、丁度良いからお前ここで武器買っていけよ。今更だけど木刀ってお前」

「う・・・そうだった、そうするよ」


 最近は急ぎの行動が多かったのでつい忘れていたが、確かにクロムの今の装備品は、防具はまだしも武器は特に間に合わせもいいところだった。


「わかった、ありがとう。じゃあ明日探してくる」

「おう。・・・武器はよく考えて選べよ。自分に合ったのをな」


 バルの最後の言葉は、口調こそぶっきらぼうだが、普段の軽口とは違っていた。

 明日はよく気を付けて装備品を選ぶとしよう。そうクロムは決めた。




(防具は軽装で、武器は刀。これなら故郷にいたときから慣れているな・・・

 そういえば、魔導士の人はよく法衣みたいなの着てるけど、あれなんだろう)


 昼前の通りを歩きながら、クロムは自分の本格的な装備について考えていた。

 魔導関係のものが多いこの街では、武器や防具も魔導を補助、あるいは対抗できるものが多く、長大な武器や重厚な鎧といったものはあまり見かけなかった。



「なんだ、君は魔導を知らないのか?」

 武器屋に入り、防具を眺めていると、眼鏡をかけた痩身の店主が声をかけてきた。しかも、なぜかクロムが魔導をほとんど知らないことがわかるらしい。

 全くその通りなので素直に答えて事情を話すと、店主はふんふんと頷いて、


「それならうちに来て正解だったな。少し安くしてあげるから、これを着けなさい。これなら、いくらか魔導に耐性があるからな」

 と店主が勧めるまま、クロムは腰ほどまであるマントを着けた。確かに、これからの旅で魔導を使える相手と戦いになる場合もあるだろう。

 シンプルな外見も気に入ったので、そのままマントを買って礼をして店を出た。


 外に出て歩き出すと、少し風が吹く度に、マントが軽く風を受けて揺れて、それがなんだか快い。

 魔導への耐性もあるそうだし、良い買い物をしたと言えるだろう。



(~♪ ~~♪

 ~♪~・・・ん?)


 少し浮かれていて気づくのが遅れたが、通りが妙に騒がしい。

 突き当たりの方で何かあったらしく、逃げる人もいれば、魔導の道具らしいものを持って向かって行く人もいる。


(待てよ、突き当たり?えっと・・・)




(あ、学園!)


 クロムがそこまで気がついた時、人だかりの中から悲鳴がしたかと思うと、2、3匹の動物が飛び出してきた。


(動物・・・いや、魔物か!)

 魔物の一匹が、クロムを見つけて走ってきた。

 あちこちで騒ぎ声が聞こえる辺り、この他にも結構な数がいるのだろう。



「・・・しょうがない、やるか!」

 クロムは木刀を抜き放ち、魔物に対峙する。


 魔物は走り出したそのままの勢いで突っ込んでくる。速さはあったが、動きは単純だったので避けるのはそこまで難しくはなさそうだ。


 引き付けてから横に体を捌き、木刀を振るう。

 クロムの一撃は魔物の額の辺りを捉え、魔物は勢いのまま派手に倒れて気絶した。


(あんまり強くはないな。この騒ぎは数が多いからかな?)

 そう考えながら、クロムは学園の方へと走る。本当はもっと装備を整えたかったのが本音だが、この状況ではそうも言ってられない。




 人だかりをすり抜けると、思ったよりも学園はひどい状態になっていた。柵があちこち破壊されて、魔物が時々飛び出してくる。


(・・・いや、良い方に考えよう。入るのが楽になったんだ)

 木刀を構え、壊れた柵の隙間を抜け、走る。

 人だかりから、「あっ、君!」という声が聞こえたが、無視して木々の中に入らせてもらった。



 途中で2匹ほど魔物を撃破しながら、何とか木立を抜けた。広い庭のあちこちで、魔物と学生らしき魔導士が戦っているが、魔物が優勢のように見える。

 とりあえず近くの戦闘に割って入り、先手必勝とばかりに木刀で魔物を打つ。

 最初は驚かれたが、そのうち学生魔導士たちも魔導で援護してくれ、少し楽に魔物を倒せた。


「誰か知らないけど、ありがとう。だけど・・・」

「悪い、剣士くん、一人で突っ込んでいった子がいるんだ!

 僕らはいいから、その子を助けてあげてくれ!」

「えっ、どうして、どこに!?」

「校舎・・・建物の中だ!あいつら魔導に強いんだけど、光の魔導には弱いって分かったら、あの子自信あるからって一人で・・・」

「分かった、そっちも無理はしないで!」


 建物の中が特に大変なようだ。

 一旦外にいる魔物は無視して、建物の中に入る。



「どこだ!?」


 見渡すと、廊下の入り口で何かが光り、周りの魔物が逃げていくのが見えた。

 しかし、1度逃げた魔物も、光が消えるとまたすぐにそちらに戻る。


(そっちか!)

 クロムは魔物をかわしつつ、床を蹴って光った地点に飛び込んだ。


「大丈夫か?って、君は!」

「ひゃっ!?・・・あ、あなたは!」




 一人、無謀にも魔物の群れに飛び込んだ学生魔導士。


 それは、クロムが先日出会った白い少女であった。






(あ、昨日の兎抱いてる)

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